2010/9/21

  2010年9月21日(火)
  日本政府は為替介入で成功する。

(一)私が為替介入は成功すると予想した理由。

(1)為替介入で日本政府が成功するという私の予想は緒戦で的中した。2弾、3弾の介入で、ドル/円は90円台に下落するだろう。
(2)エコノミストやマスコミでは介入失敗説が優勢であった。介入反対論者は、為替先物の取り組みが空前の規模に膨張しているから、ちょっとやそっとの介入では効果がないと主張していた。
(3)しかし私は、為替先物の取り組みの内容が円の反落が近いことを示していると主張していた。
(4)すなわち、投機筋の建て玉はシカゴ市場でも東京市場でも84%が円買いで、円売りは16%に過ぎない。投機筋は必ず反対売買によって決済するから、将来は円売り要因が84%と圧倒的に大きく、円買い要因は14%に過ぎない。この様な需給関係の下で日本政府が円売り・ドル買いに出れば、投機筋の84%が窮地に追い込まれる。
(5)果たして先週、日本政府が1.8兆円の円売りドル買いを断行すると円相場は即座に3円も急落した。介入後の反発力の鈍さは投機筋がいかに大きな打撃を受けたかを示している。
(6)FXと称する為替先物取引は「担保の50倍」の相場が張れる極端に投機的な丁半ばくちである。FXで担保の50倍まで円を買っていた投資家は3円の円安で150円の大暴落に直面したから、大半の投資家は担保が飛んで強制的決済に追い込まれた。
(7)投機筋の再起は困難で、FXの取り組みは大幅に縮小するだろう。

(二)ミセス・ワタナベが直面したFXの恐怖。

(1)欧米では日本のFX投資家をミセス・ワタナベと呼んでいる。ミセス・ワタナベとは普通の家庭のカミさんを指す代名詞で、日本の普通の主婦が大挙して投機性が高いFX取引にのめり込んだ状況を、欧米の識者は危ういと見ていたのである。
(2)やくざが開帳する丁半ばくちでも、掛け金以上に相場は張れないが、FX取引では担保の50倍の相場が張れる。ミセス・ワタナベの中からFXで連戦連勝し、大もうけした主婦が続出したから、FX成金の噂が広がって主婦の間で一大ブームを形成したのである。
(3)欧米ではミセス・ワタナベの為替投機を心配していたが、日本ではエコノミストを名乗る東大教授がミセス・ワタナベの為替投機を「空前の市場の圧力」と高く評価していた。
(4)今日では為替先物取引の主役は輸出企業でも輸入企業でもなく、ヘッジファンドとミセス・ワタナベである。中でも怖いモノ知らずのミセス・ワタナベは利益を次々に再投資して、為替先物市場を大膨張させた。
(5)先週には管内閣の代表選挙勝利を受けて投機筋の円買いが最高潮に達していた。政府日銀が円買いに打って出たタイミングも絶妙となった。
(6)FX取引の恐怖を初めて体験したミセス・ワタナベの多くはFX市場に復帰できないだろう。復帰しても大きな勢力とはならないだろう。
(7)一方、円買いと日本株売りのアルゴリズムで連戦連勝していたヘッジファンドも為替と株でダブルパンチの大損害を受けた。円相場の反落と同時に世界で独歩安を演じていた日本株も急反騰に転じた。ヘッジファンドが厳しい踏み上げに直面した証拠である。
(8)エコノミストとマスコミは現在も為替介入は成功しないと主張しているが、私は政府の介入で円相場はさらに下落すると思う。

(三)政府は国益を賭けて投機筋と対決せよ。

(1)5月の始めにギリシャの財政破綻が報じられて、ギリシャ、スペインの国債、株式とユーロが大暴落した。しかし1ヶ月後には、ECB中央銀行が90兆円を準備して買い向かい、一気に全値戻りを達成した。
(2)日本の政府日銀がECB中央銀行に習って投機筋の円買いと対決したのは当然で、ユーロ16ヶ国には日本の為替介入を批判する権利も資格もない。
(3)韓国とスイスは常時為替市場に介入ており、ウォンはリーマンショック以後、円に対して46%も暴落した。韓国政府と韓国企業は新幹線や原子力発電の國際入札、家電製品の販売等で日本勢を圧倒しているが、官民一体の為替介入が競争力を支えていることは明白である。
(4)中国は国家が為替を管理して元高を阻止している。
(5)米国はドル安を積極的に容認することによって口先で為替市場に介入している。
(6)ドイツのメルケル首相は5月のヘッジファンドの売り崩しに腹の虫が治まらず、株式や国債を借りて相場を売り崩すヘッジファンド固有の空売り手法を法律によって禁止した。
(7)しかるに日本のエコノミストとマスコミは自国の為替介入を批判して他国の介入を批判しない。彼らには日本の国益を守るという感性が欠落している。

(四)究極の円高対策は政府による鉱物資源の備蓄。

(1)前回のクラブ9で、私は『「円売り・ドル買い」によって取得したドルを鉱物資源の政府備蓄に投入せよ』という小沢一郎案を実行するべきだと述べた。
(2)人口超大国の高度成長期入りを受けて世界の鉱物資源の需給関係は逼迫傾向を強めており、商品相場の上昇傾向が止まらない。
(3)資源を待たない日本の製造業が國際市場で競争力を維持するためには鉱物資源の国家備蓄が最強の支援策となる。
(4)安値で取得したドルで鉱物資源を買う効果は次の通り絶大である。
(5)第1に、ドル資産の目減りを心配する必要がなくなり、備蓄した鉱物資源の将来の値上がり益を期待することができる。
(6)第2に、中南米、アフリカ、カナダ、オーストラリア等の資源国が日本の資源備蓄を歓迎し、将来の友好関係の強化に繋がる。
(7)第3に、イギリスはオーストラリア、カナダ、南ア等、世界の巨大資源会社の大株主である。アメリカはアメリカ自身が資源超大国である。中国はすでに鉱物資源の戦略的備蓄政策を推進している。これらの大国は日本政府のドル買い、資源買いに反対できなくなる。
(8)かくして日本政府の「ドル買い、鉱物資源買い」は究極の為替対策となる。

(五)ナポレオン皇帝とミセス・ワタナベ。

(1)1812年、フランス皇帝ナポレオンは691,500人のフランス軍を率いてロシアに遠征した。
(2)トルストイは、ロシアから見たナポレオンの侵略を大著「戦争と平和」で活写している。
(3)ナポレオンは広大なロシア平野を一瀉千里で制覇し、長躯して首都モスクワを陥落させた。
(4)迎え撃つロシアのクトウゾフ将軍は連戦連敗して首都モスクワを明け渡す。そしてひたすら冬の季節、雪の到来を待つ。
(5)モスクワが雪に閉ざされるのを待ってクトウゾフはモスクワに火を放つ。ナポレオンは大火を逃れてモスクワから撤退する。
(6)この時クトウゾフは初めてナポレオン軍を追尾する。雪の荒野で補給を断たれたフランス軍は崩壊し、敗走する。
(7)ナポレオンと共にパリに帰り着いたフランス軍は2%に満たなかった。
(8)ナポレオン皇帝とミセス・ワタナベには共通点がある。両者は共に連戦連勝したが最後の一敗で先陣の功を一気に欠いた。