2010/7/12

  2010年7月12日(月)

(一)ユーロの底入れ、反騰は株高の先行指標。

ユーロ/ドル ギリシャ スペイン

(1)ユーロ/ドルと、ギリシャ株式と、スペイン株式は、チャートの通り暴落と、大底と、反騰の経過が一致している。
(2)それゆえ私はユーロの指標性を重視したが、予想通り、ユーロの暴落と反騰がニューヨークダウを初めとする世界の株価の先行指標となっている。
(3)ただし、ユーロは6月10日に大底を入れたが、世界の株価はまだ下落を続け、先週ようやく反騰に転じた。世界の株価は売られ過ぎた反動が加わって、先週の反発力が大幅となった。
(4)私は、需給関係から、今週以降も株式相場の反発力は強いと思う。
(5)特に、ヘッジファンドがスペイン国債を狙い撃ちして売り崩しに出たところをECB中央銀行が90兆円の実弾で買い向かったから、大量の空売りが安値で取り残された。チャートの通りスペインの株式(と国債)は6月10日を境に急騰し、ユーロ高を牽引した。
(6)スペインの国債と株式、及びユーロの空売りが踏み上げを迫られる状況はまだ続くだろう。

(二)ヘッジファンド包囲網、強化へ。

(1)5月以降のユーロとユーロ建て国債の暴落はヘッジファンドの大規模で集中的な空売りなくしては起こりえなかったと私は思う。
(2)ドイツのメルケル首相はヘッジファンドの暴力的な空売りに対して、強硬に規制論を主張し、フランスのサルコジ大統領が同調した。ユーロ16ヶ国は現在、規制案のとりまとめを進めている。
(3)この場合の「空売り」はヘッジファンドが投資銀行経由で国債や株式を借り出し、或いは借りたと称して売り崩す行為を指す。
(4)日本の株式市場でもヘッジファンドが借り株を用いて株価をやりたい放題に売り崩しているが、借り株は日証金の貸借に現れないから、一般の投資家は「闇夜に鉄砲」を撃たれたも同然で、なぜ暴落したかがわからない。
(5)一方、米国のオバマ政権もリーマンショックの再発を防ぐために、投資銀行とヘッジファンドの結託を規制する金融改革法案のとりまとめに入った。
(6)米政府が銀行業務と証券業務の分離を決定すれば、例えばゴールドマン・サックスが傘下のヘッジファンドに大量の資金と借り株を融通して相場を売り崩す手法が使えなくなる。
(7)二つの法案が成立すれば、世界の株式市場の異常な株価形成は正常化するだろう。借り株を用いたヘッジファンドの傍若無人の売り崩しに対する包囲網は狭まりつつある。

(三)パナソニック・三洋電機とサムスンが対決する日。

panasonic

(1)チャートのパナソニックは、ようやく2番底を形成したように見える。
(2)今や日経にパナソニックの名前が出ない日がないほど、同社の新規事業の立ち上げが活発である。
(3)同業他社に先駆けてパナソニックはグループ内の選択と集中を進め、新規の成長分野を電池事業に絞り込んだ。
(4)そのために5,000億円を投入して三洋電機を傘下に入れた。
(5)パナソニックは三洋電機の中核事業である太陽電池と自動車電池を足場に、家丸ごと電池、工場丸ごと電池、スマート・グリッドの推進等、新規事業に対する設備投資を積極化している。
(6)これを見て、電機関連の大手が一斉にパナソニックに追随しているが、前提となる選択と集中が中途半端で、設備投資も及び腰だから、対抗勢力とはなり得ないだろう。
(7)しかしサムスンが虎視眈々、電池事業に集中投資する機会をうかがっている。半導体、液晶で巨額の設備投資を断行し、日本企業をごぼう抜きにしたサムスンが、覇権を賭けてパナソニックの電池関連事業に挑戦する日が近づいている。
(8)三洋電機の本間副社長は、ボイス8月号の伊藤元重氏との対談で、サムスンの追撃を強く意識した上でトップシェアの維持に強い自信を示し、「電池は世界1でなければだめです。ナンバー2では絶対に儲からないし、グローバル競争で勝ち残っていけません」と明言している。
(9)ついでながら、パナソニックが三洋電機を買収する課程で独禁法問題が浮上し、買収株式数を3分の2から2分の1に縮小した。その結果、浮動株が急増して株価を圧迫している。将来に禍根を残さないために、三洋電機に早期の株式安定工作を促したい。