2010/6/28

  2010年6月28日(月)

 I 日本ケミカル株主総会(6月25日)の社長発言から。
(一)後発医薬品・エポエチンアルファについて。

(1)エポエチンアルファの粗利は国内、海外とも、30%以上を見込んでいる。
(2)厚生省の薬価収載では先発2社の20%安(通常は30%安)という高い評価を受けたが、実際の販売価格はさらに高く、10%安となっている。
(3)市場規模1,100億円の国内市場では、キッセイ薬品が5月27日に販売を開始した。注射薬の生産量に制約があり、当面は販売量を抑制しているが、神戸工場の新しい生産ラインが稼働する12月以降には本格的販売に入る。
(4)新設備の生産能力は年産1,000万本であるが、最大3,000万本まで増産可能で、販売量が急増しても十分対応できる。
(5)キッセイ薬品は来期以降、市場シェア20%以上を目指すだろう。
(6)市場規模1兆円の海外の海外販売を担当するグラクソは大半の国で新規申請が必要となるから、本格的販売は2年後となる。
(7)中国は来年にも国民皆保険が実現し、人工透析患者の急拡大が予想されるが、現状では具体的な情報を把握していない。

(二)グラクソの持ち株比率について。

(1)グラクソの持ち株は25%に急増したが、両社間には2014年までは最大で3分の1までという合意がある。それ以後は改めて協議する。
(2)それでもグラクソはなお8%の買い余力を残している。
(3)これまでにキッセイ薬品が13%、グラクソが25%を取得したが、その課程で自己株や転換社債等の潜在的浮動株は一掃された。

(三)グラクソとの全面的包括提携について。

(1)今回グラクソから取締役会に迎えたデュノワイエ会長と杉本取締役は2名とも技術系出身で、芦田社長も技術系出身である。それゆえ新薬開発の手法に共通点が多いことを両社は十二分に認識した上で、包括提携契約を結んだ。
(2)今後は当社の開発力と開発スピードが加速するだろう。
(3)グラクソはM&Aによって世界第3位の巨大製薬会社に急成長したが、今年1月に会長に就任したデュノワイエ氏は意外にも技術系出身であった。
(4)両社の企業規模には天地の差があるが、提携関係は親密裡に機能するだろう。

(四)私見。株主総会に出席して。

(1)グラクソ・スミスクラインと日本ケミカルの急接近が、デュノワイエ会長と芦田会長の技術者としての信頼感に基づいて進行したことを、私は株主総会に出席して始めて知った。
(2)日本ケミカルは最適のパートナーに恵まれたと思う。
(3)3年という射程で見れば、エリスロポエチンは20%以上の市場シェアを獲得する可能性がある。
(4)市場規模が巨大で、拡大傾向は変わらないから、今後3年間に売上高は空前の変化率を実現するだろう。
(5)設備投資がピークを過ぎる一方で30%以上の粗利を確保すれば、利益の変化率は売上高の変化率を大幅に上回るだろう。
(6)日本の株式市場では金融機関と企業の株式持ち合い解消が進行しているが、当社株式の需給関係はむしろ逼迫傾向をたどるだろう。
(7)成長期待の大きさに比べて、マイナス要因が見いだしにくいが、1〜2年は助走期間と見ておくべきだろう。
(8)日本ケミカルは政治的、経済的、社会的波乱とは無縁の企業である。株安を懸念する投資家にとっては他に例を見ないヘッジを兼ねた成長株投資となる。

 II 相場観。世界的株安の行方。

(1)チャート。ユーロ/円とドイツDAXの日足。
ユーロ/円とドイツDAX
(2)5月初めにギリシャの財政破綻が表面化し、チャートのユーロ/円(赤)とドイツDAX(青)が同時に急落した。
(3)ユーロ安につれてギリシャ、スペイン、ポルトガルの国債が急落した。
(4)ユーロ安は世界の株価の急落を誘発した。EU16ヶ国の盟主であるドイツの株価(DAX)も急落した。
(5)しかし5月末にEU16ヶ国のECB中央銀行が90兆円の資金を投入してユーロ建て国債の防戦買いに入り、ようやくユーロが底入れした。
(6)とはいうもののユーロ/円相場(赤)の戻りは鈍く、安値圏に低迷している。
(7)しかしドイツの株価は(青)世界でもっとも早く底入れし、すでに年初来高値に迫っている。
(8)世界の株式市場はユーロ安再燃の不安におびえているが、私はユーロ圏の盟主であるドイツの株価が世界の株価の底入れを先見していると思う。