(1)先週末、東京市場の引け後に欧米の株価が急落した。今回もユーロ安が震源地となったが、正確な震源地はECではなく、東欧のハンガリーである。ECはEC域内の財政問題に責任はあるが東欧の財政問題には責任の持ちようがないから、ユーロ安が深刻化するとは思えない。
(2)斜陽のヨーロッパの中でもギリシャやハンガリーは小国である。小国の財政不安が世界の株価の連鎖的暴落を誘発する状況は異常である。ひとたび視点を斜陽のヨーロッパから地球全体に移すと、圧倒的な経済の拡大成長が進行している。
(3)21世紀初頭のわずか10年間にアジアの人口超大国が次々に超高度成長期に突入した。中でも中国は日本を抜いて世界第2位の経済大国となり、インドやインドネシアが中国に追随している。その3カ国の人口を併せると30億人で、世界人口の半分を占める。
(4)今や高度成長の大波は中南米に及び、さらにアフリカに拡大している。地中海を挟んで斜陽のヨーロッパ大陸と向かい合う新興のアフリカ大陸では、先進国の資源開発投資が集中して活況にわいている。資源高で潤うオーストラリアとカナダは、インフレを警戒して金利を引き上げた。
(5)かくして経済的先進国である米欧日が金融不安にさらされている間に、世界経済は雄大な拡大成長期に突入した。アジア、中南米、アフリカ、オーストラリア、カナダ等、地球上の大半の地域と国家で景気と企業業績が好転し、雇用が拡大している。
(6)日本も国家の財政赤字は拡大しているが、大半の企業は潤沢なキャッシュを蓄積する一方在庫はカラカラで、空前の健全経営体制を確立した。アジアの一角を占める日本がいつまでもヨーロッパの衰退に振り回される理由はない。
(7)世界経済を地球規模で一望すれば、植民地を収奪して繁栄したヨーロッパの時代が終わり、植民地支配を脱出したアジア、中南米、アフリカが繁栄する時代が始まった。
(8)20世紀前半までは、アジア、中南米、アフリカ、中近東のすべての国がヨーロッパの植民地であった。アジアで植民地支配を免れたのは日本だけである。国家と人類はいま歴史的な盛衰が交錯する大きな分岐点を迎えた。投資家はヨーロッパの衰退におびえるよりも、地球上の面積と人口の大部分を占めるアジア、中南米、アフリカの台頭に目を向けるときである。
(9)大きなスケールで拡大発展する世界経済に比べれば、ギリシャやハンガリーの財政悪化は一片の影に過ぎない。