2010/6/7

  2010年6月7日(月)

(一)相場観。植民地を収奪して繁栄したヨーロッパの時代が終わり、
       植民地支配を脱して急成長期を迎えたアジア、中南米、
       アフリカの時代が来た。

(1)先週末、東京市場の引け後に欧米の株価が急落した。今回もユーロ安が震源地となったが、正確な震源地はECではなく、東欧のハンガリーである。ECはEC域内の財政問題に責任はあるが東欧の財政問題には責任の持ちようがないから、ユーロ安が深刻化するとは思えない。
(2)斜陽のヨーロッパの中でもギリシャやハンガリーは小国である。小国の財政不安が世界の株価の連鎖的暴落を誘発する状況は異常である。ひとたび視点を斜陽のヨーロッパから地球全体に移すと、圧倒的な経済の拡大成長が進行している。
(3)21世紀初頭のわずか10年間にアジアの人口超大国が次々に超高度成長期に突入した。中でも中国は日本を抜いて世界第2位の経済大国となり、インドやインドネシアが中国に追随している。その3カ国の人口を併せると30億人で、世界人口の半分を占める。
(4)今や高度成長の大波は中南米に及び、さらにアフリカに拡大している。地中海を挟んで斜陽のヨーロッパ大陸と向かい合う新興のアフリカ大陸では、先進国の資源開発投資が集中して活況にわいている。資源高で潤うオーストラリアとカナダは、インフレを警戒して金利を引き上げた。
(5)かくして経済的先進国である米欧日が金融不安にさらされている間に、世界経済は雄大な拡大成長期に突入した。アジア、中南米、アフリカ、オーストラリア、カナダ等、地球上の大半の地域と国家で景気と企業業績が好転し、雇用が拡大している。
(6)日本も国家の財政赤字は拡大しているが、大半の企業は潤沢なキャッシュを蓄積する一方在庫はカラカラで、空前の健全経営体制を確立した。アジアの一角を占める日本がいつまでもヨーロッパの衰退に振り回される理由はない。
(7)世界経済を地球規模で一望すれば、植民地を収奪して繁栄したヨーロッパの時代が終わり、植民地支配を脱出したアジア、中南米、アフリカが繁栄する時代が始まった。
(8)20世紀前半までは、アジア、中南米、アフリカ、中近東のすべての国がヨーロッパの植民地であった。アジアで植民地支配を免れたのは日本だけである。国家と人類はいま歴史的な盛衰が交錯する大きな分岐点を迎えた。投資家はヨーロッパの衰退におびえるよりも、地球上の面積と人口の大部分を占めるアジア、中南米、アフリカの台頭に目を向けるときである。
(9)大きなスケールで拡大発展する世界経済に比べれば、ギリシャやハンガリーの財政悪化は一片の影に過ぎない。

(二)パナソニックと三洋電機。

(1)パナソニックの株価が底値圏を脱出したように見える。
(2)三洋電機を傘下に入れたパナソニックの成長戦略が迫力を帯びてきた。例えば15万店の販売点を拠点に、2年後に太陽電池で国内シェア35%、日本1を目指すと宣言した。同業他社も同じような経営目標を掲げているが、経営改革の実績と設備投資の内容に大差がある。
(3)サムスンが三洋電機の技術者をスカウトするために大型の資金を準備したという情報がある。三洋電機は歴史的に乾電池市場で世界1を独走してきた。最先端のリチウムイオン電池でも、名乗りを上げたライバル企業は多いが、現実には質量とも三洋電機が断然先行している。
(4)三洋電機は技術の社外流出を防ぐためにリチウムイオン電池の生産設備と技術者を5行程に分割し、5行程の情報が一挙に流出するリスクを防いでいる。
(5)サムスンが巨額の投資を半導体と液晶に集中してコスト競争力で圧倒的優位を構築したように、三洋電機がリチウムイオン電池の大量生産で先行し、コスト競争力で早期に圧倒的優位を構築できるかに注目したい。

(三)日本ケミカルとキッセイ薬品。

(1)沢井薬品、日医工等、後発医薬品メーカーの業績が好調で株価が急騰している。各社とも厚労省の支援が追い風になっていると述べている。
(2)日本ケミカルの後発医薬品アルファJCRは5月27日に発売を開始した。キリン協和と中外製薬が2分する1,100億円市場に参入したキッセイ薬品の6月の販売実績に注目したい。
(3)海外市場については、6月の株主総会で日本ケミカルの取締役に就任するグラクソ・スミスクラインのデュノワイエ会長のコメントに注目したい。