2010/5/10

  2010年5月10日(月)

(一)ギリシャ問題・私の見方。

パナソニックの経営革命。(1)ギリシャの財政は破綻しており、自力修復は不可能である。投機筋のユーロ売りが熱を帯びている。私は、それでもギリシャ問題は最悪期を過ぎたと思う。理由は以下の通りである。
(2)第1に、ECとIMF(国際通貨基金)が破綻を回避するために13兆円の緊急融資を決めた。
(3)第2に、ギリシャ政府は15兆円を返済するために年金カットと消費税の引き上げを決定した。公務員の定年が48歳で、給与の80%の年金が支給されるという組合迎合の社会主義政策が破綻したのは当然である。
(4)第3に、しかしギリシャ市民はストライキと過激なデモで、政府の緊縮政策に反対している。暴動前夜を思わせるテレビ報道を見た世界の株式市場が暴落の連鎖に陥った。
(5)第4に、ECは金融不安がギリシャ以外に連鎖するのを防ぐために、新たに8兆円の基金を設定した。
(6)以上が現在までの経過である。
(7)ギリシャの市民がいくら抵抗してもギリシャ政府には緊縮政策を断行する以外の選択肢がない。市民も生活水準の切り下げはやむを得ないとわかっているが、一度はやりたい放題の暴動でうっぷん晴らしをしなければ気持ちが収まらないところだろう。
(8)日銀は先週末、急遽2兆円の過剰流動性を供給した。各国の金融支援も本格化して来た。当面、金融市場の過剰流動性は増加しても縮小する懸念はない。
(9)投機筋の売り圧力とこれに備えた政府筋の資金力は逆転しつつある。ここからの波乱は買いの好機だと私は思う。

(二)パナソニックの経営革命。

(1)日本でパナソニックほど果敢な経営革命を断行した大企業は存在しない。
(2)中村前社長は、社長に就任するや 1.グループ企業を大合併して 2.業態の選択と集中を進め、3.独立色の強かった松下電工をも傘下に入れた。4.松下家の持ち株会社である松下興産を清算し、5.ビクターを売却し、6.「松下」の社名を捨てて「パナソニック」に変えた。
(3)後任の大坪社長もまた、1.クリーンエネルギー時代の到来を見据えて 2.三洋電機を買収し、3.太陽発電と自動車電池を成長戦略の中核に据えた。4.買収直後に,太陽発電とリチウムイオン電池を核としたスマートグリッドの構想を具体化した。
(4)パナソニックの革新的な構想を見て電機業界は我も我もとスマートグリッド参入に名乗りを上げたが、構想ばかりで経営改革で血を流さず、大規模な設備投資を断行したわけでもない。
(5)これに対してパナソニックは昨年三洋電機買収に6,000億円を投入し、三洋電機は前期にすでに太陽発電と自動車電池に1,000億円を投入した。経営革命と設備投資の迫力を比較すれば、パナソニックと同業各社の優劣が鮮明になるのは単に時間の問題である。

(三)三洋電機の経営革命。

(1)7月に加西工場が竣工すると、徳島工場と併せた三洋電機の自動車用リチウムイオン電池の年間生産量は電気自動車換算で20万台に達する。三菱とGS湯浅や日産とNECの合弁企業が年産1,000台未満に過ぎない現実を見れば、三洋電機の独走態勢入りは鮮明である。
(2)電気自動車が本格的に普及すると見られる2020年に市場シェア40%を目指すという壮大な目標を達成すれば、三洋電機は世界屈指の優良企業に変身する。
(3)自動車は世界ダントツの産業である。10年後には自動車の中核部品はガソリンエンジンから電池モーターに変わり、自動車産業の主役は自動車メーカーから電池メーカーに移っている。パナソニックの全面支援を得た三洋電機が自動車産業の主役に躍り出る可能性は十二分にある。
(4)不採算部門の清算に伴う後ろ向きの赤字は前期でピークを過ぎた。
(5)三洋電機が生産を担当する太陽電池は近い将来パナソニックの主力事業に急成長するだろう。
(6)私は三洋電機ほど壮大な夢をはらんだ成長企業を日本の株式市場で発見することができない。

(四)パナソニックと三洋電機の株価。

(1)

三洋電機とパナソニックの週足

(1)両社の前期決算と今期の決算予想の詳細はマスコミ各紙の報道をごらんいただきたい。
(2)私は、両社が共に業態の選択と集中を断行し、21世紀を見据えた成長戦略を鮮明にしたと思う。
(3)大手証券各社のアナリストは最近まで三洋電機の目標株価を倒産企業並みの100円〜120円とする奇怪な弱気レポートを競い合っていた。証券会社は一旦着手した企業レポートの継続性、連続性に責任がある。三洋電機の業態と収益構造の変化を折り込んだ改訂レポートを出さないのは無責任である。
(4)過去2週間の株価暴落で、株式市場にはひびが入ったといわざるを得ない。しかしパナソニックと三洋電機はこれまで人気の圏外にあったから、かえって出直りが早いと思う。

(五)日本ケミカルの株価。

日本ケミカルの週足

(1)日本ケミカルの腎性貧血治療薬アルファJCRの薬価は先行2社の78%と決定した。これを受けて、日本ケミカルは前期決算の発表時に新薬の売り上げ予想を折り込んだ今期予想を出すと表明している。
(2)国内販売を担当するキッセイ薬品はアルファJCRを5月27日発売開始と発表した。
(3)日本ケミカルの決算発表に注目したい。