2010/4/26

  2010年4月26日(月)

(一)相場観。

(1)先々週に,米政府がゴールドマン・サックスを告発するというショッキングな情報が飛び出して、金融株が大きく売り込まれた。
(2)しかしVICS指数やCDSなど、一時は金融市場を恐怖に陥れた業績悪化の指標が完全に沈静化していたから、私は金融機関の業績は好調だと見て最大手のシティバンクとAIGは買いの好機だと述べた。詳細は次項を参照されたい。
(3)ニューヨークダウは短期的な波乱を経て先週には上昇軌道を回復した。ジャブジャブ金融と景気回復と好調な企業業績が下支えしているから、経済的要因から崩れる懸念は乏しい。
(4)問題はオバマ政権が執拗に成立を狙っている金融改革法案である。ここへ来て、最大の高収益企業であるゴールドマン・サックスを標的に過去の不正を次々に摘発しており、トヨタバッシングを再現する可能性が濃厚となった。
(5)トヨタバッシングとゴールドマンバッシングには人気低迷に悩むオバマ政権の中間選挙対策が潜在している。しかしゴールドマンが米議会の公聴会で糾弾されるとしても、ニューヨークダウの上昇トレンドを覆すほどの悪材料にはならないだろう。
(6)日本では日経やエコノミストの弱気論が盛んであるが、万年弱気の評論家に対して外国人投資家は日本株投資を積極化している。外国人買いが集中した銘柄は信用取引が次々に株不足となり、弱気筋を窮地に追い込んでいる。
(7)特に新興市場がさま変わりの急騰局面を迎えた。外国人の大型株買いに対して個人投資家のマネーが新興市場に流入し、真空地帯を急落していた株価が真空地帯を急騰している。騰勢は収まりそうにない。
(8)ギリシャ問題も峠を越えた。ギリシャはECの一員とはいえ、異端の社会主義の小国に過ぎない。EC各国の株価とユーロは反騰に転じるだろう。
(9)日本の政治は不安定であるが、日銀は過剰流動性の供給とゼロ金利政策で金融市場を支えている。元の切り上げとユーロの反騰は将来の円安要因となる。
(10)内外の景気と業績と資金量から見て、日本株が下落する要因は乏しい。前3月期の決算発表が集中する連休明けの相場を楽しみとしたい。

(二)急騰したAIGとシティ。

<チャート1・AIGとシティバンクの日足>
AIGとシティ

(1)先週、私は政治的思惑と現実の企業業績を混同してはいけないと述べた上で、オバマ政権が再度金融規制案を提示し、ゴールドマン批判を強めているが、それでもシティバンクとAIGは急騰すると予想した。果たして月曜日の急落が絶好の買い場となり、チャートの通り両銘柄は急騰した。
(2)しかしオバマ政権はリーマンショックの再発を防ぐためには銀行と証券を分離する新たな金融規制が必要だと主張し、金融改革法案を議会に提出している。
(3)ところが今や銀行と証券が入り乱れて債券、株式、不動産、商品、為替等を組み込んだ多彩な金融商品を開発し、相互に販売する時代になった。銀行と証券ばかりか、かつては異業種であった不動産や商品も業務の垣根が消えてしまったのだから、もはや分割は不可能である。
(4)それでもオバマ政権は中間選挙を控えて、急落した人気を挽回するために改めて金融改革の必要性を訴えている。さらに金儲けのためなら何でもやるユダヤ資本に対する社会的反感を利用してゴールドマンの訴追に踏み切った。
(5)しかしゴールドマンは先週90%の大幅増益決算を発表し、株価が急騰した。「憎まれっ子世にはばかる」のもまた現実である。私は現実を重視したい。

(三)日本ケミカルとキッセイ薬品。

<チャート2・日本ケミカルとキッセイ薬品の日足>
日本ケミカルとキッセイ薬品

(1)先週末に厚生省は日本ケミカルの後発医薬品「アルファJCR」の薬価を開示した。薬価は先発2社よりも23%安となったから、十分な競争力が期待できる。
(2)国内の販売権を持つキッセイ薬品は5月27日発売と発表した。海外の販売権を持つグラクソ・スミスクラインの発売日と薬価は不明である。
(3)薬価に基づいて日本ケミカルとキッセイ薬品は今期の業績を試算し、前期決算と同時に今期予想を5月に発表する。
(4)先週、日本ケミカルは前期決算の増額修正と同時に下期配当を5円から10円に増配し、今期以降の増益に大きな自信を示した。
(5)腎性貧血治療薬は国内1,100億円、海外1兆円の巨大市場で、現在は内外とも2社寡占である。日本ケミカルの年間売上高は150億円だから、新薬が獲得する市場シェアをどんなに控えめに予想しても、増収、増益幅は日本の株式市場空前の倍率となるだろう。