2010/4/19

  2010年4月19日(月)

(一)オバマ政権がゴールドマンを訴追。

(1)オバマ政権は先週末、突如投資銀行世界1のゴールドマン・サックスをデリバティブ取引に不正があったとして訴追した。これを受けて投資銀行株が全面安となった。
(2)オバマ政権は先に「投資銀行を証券と銀行に分離し、両市場にまたがる投資銀行の存在を許さない」という金融改革法案を議会に提出していた。
(3)しかし「自由競争」と「小さな政府」は米国の建国以来の政治の本流である。その原則を重視する共和党や金融界の反撃を受けて法案は廃案の気配を強めていた。
(4)金融改革法案は、国民皆保険法案と共に支持率低下に悩むオバマ政権が中間選挙を乗り切るために人気挽回を狙って打ち出した政治色の強い法案であった。
(5)国民皆健康保険法案は廃案必至と見られていたが、大統領自ら議員一人一人を説得し,わずか1票差で逆転,成立した。
(6)今回もオバマ政権は金融改革法案成立へ、大逆転を狙ってゴールドマン訴追というウルトラCを繰り出したのである。
(7)世界1の収益力を誇るゴールドマンにも、弱みがある。第1に、リーマンショックに直面して一時的ながら政府の金融支援を受けた。第2に、開発、販売したデリバティブ(金融派生)商品に信用度が低いサブプライムローンを組み込んでいた。そのデリバティブ商品が暴落してリーマンショックが発生したが、ゴールドマンは真っ先に危機を乗り切ると即座に超高額ボーナスを復活した。無神経で傍若無人の経営手法が世論の猛反発を招いたから、オバマ政権は世論をバックに金融改革法案を議会に提出したのである。
(8)訴追によってゴールドマンの不正が証明された場合は金融改革法案が成立する可能性があり、その場合は金融市場に激震が走るだろう。
(9)しかし私は、大多数のアメリカ人が株価や地価の急落を招く金融改革法案を喜ぶとは思わない。「銀行業務と証券業務の分離」は1930年代の大恐慌時代に遡る時代錯誤の悪法である。
(10)今や資本主義は技術革新を折り込んで金融資本主義の時代に突入し、金融はアメリカ最大の利益を生み出す超巨大産業となった。銀行と証券の分離は現実的でないばかりか、アメリカの国際競争力を阻害する。
(11)今日では株式市場にETFが次々に上場されて、世界中の投資家は金や石油や為替や様々な金融商品を銀行や証券の窓口で、或いはインターネットで自由に売買することができる。金融市場と株式市場と商品市場の間にはもはや垣根が存在しない。そんな時代に銀行と証券を分離せよという時代錯誤の金融改革法案が成立しても実行は不可能だろう。次項で金融市場の現実を検証したい。

(二)シティバンクとAIGが政府債務完済へ。

チャート1・VIX指数とCDS指数の週足
VIX指数とCDS指数

チャート2・シティバンクとAIGの日足(東京市場)
シティバンクとAIG

(1)チャート1の通り、VIX(恐怖)指数は、株価の長期上昇にもかかわらず、記録的な低水準に下落している。投資家心理は冷静で相場の過熱感が認められない。
(2)企業倒産のリスクを売買するCDS指数も急落した。チャート2の通り、リーマンショック時に550まで高騰した指数が現在は100を割り込んでいる。
(3)世界1の保険会社であるAIGはCDSを一手に買い向かい、リーマンショックで巨額の評価損を計上して米政府の救済を仰いだが、今やその評価損が激減したのだから、AIG株は本格反騰が見込める。
(4)ゴールドマンが欠陥を隠して売りつけた問題のデリバティブ商品も、ここへきて相場が急回復しており、1〜3月の決算では評価損が大きかった投資銀行ほど大幅な評価益を計上するだろう。
(5)最も打撃が大きかったシティバンクは、政府が出資した株式を市場売却によって利食いするだろう。
(6)政府は大手金融機関の救済に投入した巨額の融資や出資をプレミアム付きで回収し、リーマンショックの後遺症は名実共に消滅する。
(7)オバマ政権の政治的思惑と金融市場の現実を混同してはいけない。今週発表予定の投資銀行の1〜3月決算は予想外の増益となるだろう。
(8)世界の株式市場を取り巻く環境は着実に好転している。

(三)住友金属鉱山(別子)は全部門増額修正へ。

(1)電子機能材は質量とも急回復に転じた。
(2)主力の金、ニッケル、銅の国際価格が全面的に高い。中でもリーマンショック後の安値から、ニッケルが3倍、銅が2.8倍に暴騰した。決算の大幅な増額修正は必至だろう。
(3)別子は自山鉱の比率が高いから、市況好転につれて含み益が激増する。
(4)プラチナ、金、ニッケル、銅、リチウム、石油、鉄鉱石、石炭等,主要な資源が軒並みに暴騰する中で、日本唯一の資源株である別子が安値圏に放置されている。
(5)中国は国家戦略として国内のレアメタルを囲い込む一方、世界の鉱山に投資を拡大している。別子が外国資本に買収される可能性はきわめて高い。

(四)野村マイクロの今期予想に注目。

(1)先週、前3月期決算予想をわずかながら減額修正した。プラント工事の一部が今期にずれ込んだからである。
(2)しかし株価はジリ高をたどった。今期業績の大幅好転を期待しているからだろう。
(3)主力取引先であるサムソンは半導体と液晶で世界のトップシェアを確立しており、受給逼迫を受けて大型の設備投資に踏み切るだろう。
(4)今期の決算予想に注目したい。

(五)日本ケミカルの材料。

(1)日本ケミカルが開発した大型の後発医薬品アルファJCRの薬価収載は今週発表と予想される。発表後、2ヶ月以内に販売開始となる。
(2)販売を担当するキッセイ薬品の株価は先に高値を更新した。日本ケミカルの株価に注目したい。