2010/3/29

  2010年3月29日(月)

 I 世界制覇に踏み出したパナソニック。
(一)太陽電池で世界1を狙う。

(1)パナソニックは先週、大阪住之江工場で1,000億円を投入したリチウムイオン電池の第1期工事が竣工したと発表した。来秋に第2期工事が竣工すると世界最大の月産5,000万個体制を確立する。
(2)新工場の主たる目標はノートパソコンやケータイ等の事務機よりも、スマートグリット用の蓄電池だろう。
(3)昨年来、パナソニックの傘下に入った三洋電機が内外で太陽電池5工場を次々に建設した。しかし現在の太陽電池は昼間に集めた余剰電力を電力会社に売り、消費量が多い夜間電力を電力会社から買うという無駄の多いシステムで、効率が悪い。もし昼間に集めた電力をリチウムイオン電池で蓄電し、消費量が多い夜間に使用すれば投資効率が大幅に上がる。
(4)さらに地域ぐるみで各家庭が蓄電した余剰電力を相互に貸し借りするシステムを構築すれば、新しい形の電力会社が誕生する。これがスマートグリットと呼ばれるシステムである。スマートグリットのシステムを構築すれば、夜間に自宅のコンセントで電気自動車に充電することも可能となり、普及に弾みがつくだろう。
(5)パナソニックは、傘下の三洋電機、パナソニック電工、パナホーム等の製品、部品、機能を動員してスマートグリットのすべてを自力で完結するシステムを目指している。
(6)パソコンやケータイに搭載するリチウムイオン電池の世界シェアは、これまでも1位三洋電機、2位パナソニックであったから、三洋電機のTOBを機に、パナソニックはリチウムイオン電池を大増産してダントツのシェアを確立した。
(7)太陽電池とリチウムイオン電池の同時大増産は、パナソニックが安価でクリーンな電力を創造するスマートグリットのシステムのシステムを実現するための重要な布石である。

(二)自動車電池でもトップシェア確立へ。

(1)昨年末にパナソニックは、三洋電機TOBに成功したが、一時は独禁法に阻まれて世界12カ国との交渉が難航し、取得株式数の削減や一部工場の売却など、多くの譲歩を強いられた。両社が合併するとハイブリッドカー向けニッケル水素電池の市場シェアが100%に達したからである。
(2)しかしTOBが成立するや、パナソニックは次世代の自動車用リチウムイオン電池でも三洋電機の大増産を支援し、早くも世界ダントツのシェアを固めた。
(3)すなわち三洋電機が兵庫県加西で建設中の新工場が今年7月に完成すると、徳島工場と併せた生産規模は電気自動車に換算して年産20万台となり、ライバル各社の生産量に桁違いの大差をつける。
(4)これは三洋電機が特定自動車メーカーと合弁せず、あえて自力生産、全方位販売のリスクに挑戦した戦略が奏功した結果である。現状では難航する電気自動車陣営を尻目に、ハイブリッドカー陣営が大量生産時代に入った。トヨタ、ホンダに次いで、フォルクスワーゲン、フォード等が三洋電機のリチウムイオン電池を用いてハイブリッドカーに進出する。
(5)三洋電機はパナソニックの支援を受けて大量生産によるコストダウンで先行し、自動車電池で40%を目指すという大目標の実現に踏み出した。

(三)パナソニックは21世紀を代表する成長株。

panasonic

(1)チャートを見れば一目瞭然。これまで上値の壁となってきた1,500円台を突破すれば大相場に突入する。
(2)前項で述べたように昨年巨費を投じて三洋電機を買収したパナソニックの賭けは早くも大きな果実を結びつつある。21世紀最大の成長市場と目される電気自動車と太陽電池の両市場に不可欠のリチウムイオン電池の生産で、パナソニックが独走態勢を固めたからである。
(3)パナソニックの成長企業への大変身を評価すれば、パナソニックの1,500円台突破は時間の問題となる。
(4)当然、三洋電機の株価もパナソニックと連動するだろう。

 II 英グラクソが日本ケミカルの筆頭株主に。

(1)日本ケミカルは26日引け後にグラクソ・スミスクラインがキッセイ薬品を抜いて筆頭株主になったと発表した。平成20年3月に発行した新株予約権を行使した結果である。
(2)グラクソは製薬業界で世界2位の巨大企業で、大証2部の日本ケミカルとは月とスッポンの大差がある。昨年、腎性貧血治療薬アルファJCRの販売権を取得した際に第2位の大株主となったが、2年前にすでに新株予約権を取得して販売権獲得に乗り出していたのだから、新薬にかける意気込みが感じられる。
(3)日本ケミカルは40%以上の従業員が研究開発に従事する開発型企業だから、キッセイ薬品と同様に全面的な提携関係に進む可能性がある。
(4)前回のコラムで、私はグラクソの販売シェアを控えめに初年度10%、2年目20%と予想したが、その程度では収まりそうにない。