2010/3/15

  2010年3月15日(月)

(一)オバマ大統領の金融改革挫折で反騰に転じた金融株。

シティグループ

(1)チャート1のシティグループを始めゴールドマン・サックスなど、米国の大銀行と投資銀行の株価が一斉に反騰に転じた。オバマ政権の金融改革案が挫折したからである。
(2)先に医療改革案の挫折が鮮明になるにつれて薬品株などが反騰に転じたが、今回も金融改革案の挫折が鮮明になるにつれて大手金融株が反騰に転じた。オバマ政権が中間選挙の人気挽回を狙って打ち出した目玉政策が相次いで破綻し、株式市場が破綻を歓迎する結果となった。最終的に両法案が成立するとしても、骨抜きされた妥協案だろう。
(3)貧しくても出世できる。黒人でも大統領になれる。建国以来、アメリカは自由な競争社会を作るために小さな政府を追求して来た。これに対して日本の民主党は子供手当や高校無料化や高速道路の無料化で政府を大きくし、財政を破綻させている。アメリカでは中間選挙を迎えても共和党と世論が大きな政府を拒否したが、参議院選挙を控えた日本では野党が大きな政府を批判しない。
(4)19世紀の初めに平等を掲げて誕生した社会主義国は例外なく独裁政権と貧困を生み出して崩壊した。北朝鮮やキューバの惨状を見るまでもなく、ヨーロッパではギリシャの共産主義政権がユーロの足を引っ張っている。民主党政権のポピュリズム(大衆迎合の政治)は社会主義国の失敗を再現する恐れがある。
(5)オバマ大統領は大銀行の巨額のボーナスに対してマスコミと議会の批判が沸騰したのを見て、巨額ボーナスの温床となっている証券業務から銀行を撤退させるための金融改革案を提出した。
(6)しかし現実を見れば、証券業務に進出した大銀行は今や投資銀行と並ぶ米国最大の高収益、多額納税企業となった。
(7)一昨年のリーマンショックを見て日本のエコノミストはみな金融資本主義は破綻したと論評したが、今や金融資本主義は不死鳥のようによみがえりつつある。金融機関といえども他のすべての産業と同様に日進月歩の技術革新を経営に取り込むのは当然だと私は思う。

(二)投資銀行へ、変身する野村證券。

(1)日本の3大銀行は銀行業務に閉じこもり、保有株式を売却しているが、米欧の大手銀行は投資銀行業務(証券業務)を拡大して保有株式を急速に増やしている。
(2)ユダヤ資本が支配するBIS(国際決済銀行)は2004年に自己資本規制の強化を打ち出した。日本の3大銀行は忠実に保有株式を圧縮し、連続増資によって自己資本の増強を図っているが、欧米の大銀行は逆に証券業務を強化し、今ではBIS規制の実施時期を無期限に延長すると公言している。ユダヤ資本はBIS基準を自らの競争力強化に利用しているのである。
(3)リーマンショックを無傷で凌いだ日本の3大銀行の中でも、三菱銀行はモルガン・スタンレーの筆頭株主に躍り出たにもかかわらず、投資銀行業務に進出する好機をむざむざと見逃している。私はユダヤ資本を批判しているわけではない。それどころか経営者が進歩発展を追求するのは当然で、技術革新に背を向けた日本の銀行を批判しているである。もっともモルガン・スタンレーは投資銀行の中で唯一非ユダヤ系である点を補足しておきたい。
(4)3大銀行に対して、破綻したリーマン・ブラザーズの人材を吸収した野村證券が日本の金融機関として唯一投資銀行業務のリスクに挑戦している。
(5)私は、3大銀行は利回りで買う成熟株に過ぎないが、世界を見据えた野村證券はきわめて有望な成長株だと思う。

(三)ユーロ高と円安。

(1)ユーロ売りの仕掛け人はジョージ・ソロスと見る情報がある。ソロスはかつて英国のポンド売りでイングランド銀行との死闘に勝利し、一躍ヘッジファンドの名声を高めた実績を持っている。
(2)最近では投資銀行傘下のヘッジファンドが巨大化し、ソロスのような独立系のヘッジファンドは目立たなくなった。
(3)私はソロスのデビュー当時から独自の投資手法に注目してきたが、ウォーレン・バフェットの超長期投資と対象的に3ヶ月程度の超短期投資で強さを発揮する。それゆえソロスがもしユーロ売りに介入しているとすれば、矛を収める頃だろう。
(4)ギリシャはECの最小国、最貧国で、唯一の共産主義国である。ギリシャの財政破綻を捕らえてEC全体の通貨であるユーロを売り過ぎるとリスクも高くなる。ユーロ安は最終段階に入ったと私は思う。
(5)これに対して日銀の金融緩和は腰が入ってきた。先に短期金利0.1%を目標に10兆円の過剰流動性を供給したが、さらに10兆円を供給して超低金利の定着を計る構えである。世界中が金融緩和の出口を求めて金利を引き上げているから、日銀の新たな金融緩和は内外の金利差を拡大し、円安を招く効果がある。
(6)円安が日本経済に与える効果は大きい。第1に、輸入物価が上がり国内のデフレを終息させる。第2に、輸出産業の競争力を強化し、収益力を高める。第3に、業績好転と過剰流動性が株価を押し上げる。第4に、景気を好転させる。
(7)私はユーロ高と円安が進む可能性が高いと思う。

(四)富士フイルム。

富士フイルム

(1)チャート2の通り株価の上放れが鮮明となった。ただし、現状では日経平均との連動性が高い。
(2)鳥インフルエンザの特効薬 T-705 の製造が認可されれば相場のスケールが一気に拡大するだろう。
(3)富士フイルム自身は情報を開示していないが、傘下の富山化学の地元では、すでに T-705 の生産に入っているという情報がある。
(4)さらに富士フイルムは海外で独自に医薬品の販売網を構築している。第2、第3の新薬開発が順調に進んでいるからだろう。
(5)材料の出方に注目したい。