2010/3/8

  2010年3月8日(月)

(一)日銀の金融緩和のインパクト。

(1)世界の中央銀行はジャブジャブ金融の出口を探り始めた。景気と企業業績の回復状況をにらみながら株式相場は需給相場から業績相場へ、転換期を迎える。需給相場に比べて、業績相場は息が長い。
(2)しかし日銀が世界の大勢に逆行して金融緩和政策を表明したから、日本は需給相場と業績相場が重なって海外よりも株価の浮揚力が強くなるだろう。
(3)日銀の金融緩和の決断を受けて、金融市場では即日短期金利が下がり、円が独歩安となり、株価が急騰した。
(4)金利差の拡大を受けて円安が定着すれば、輸入物価が上昇し、日本経済はデフレを脱却する。
(5)円安は同時に企業の輸出競争力を支援し、収益力を強化する。
(6)予想外の金融緩和は日本の景気と株価にとって追い風となるだろう。

(二)日本ケミカルの株価。

(1)日本ケミカルの株価が急騰した。あえて年足を用いたのは、年足でないと現在の相場の位置や目標株価が見えないからである。
(2)4月発売予定の後発薬「ヒトエリスロポエチン・アルファJCR」が人気の焦点である。アルファJCRは人工透析の合併症である腎性貧血治療薬で、市場規模がきわめて大きい。
(3)国内では1,100億円市場を中外製薬とキリンが二分している。海外では1兆円市場を中外の提携先・ロシュとキリンの提携先・アムジェンが2分している。
(4)当社は国内、海外の両市場で同時に発売するから、1.1兆円の超巨大市場が対象で、売上高の変化率も超大型となる。
(5)グラクソはこれまで血液製剤市場と無縁であったが、血小板関連の新薬開発を契機に「アルファJCR」の販売権を取得し、同時発売による相乗効果を狙ったと見られる。
(6)グラクソが当社株350万株を取得して第2位の大株主となった点を見ても新薬にかける意気込みが伝わる。またグラクソの株式取得によって浮動株が一掃されたことも株価急騰のもう一つの要因となっている。
(7)最大の注目点は来年3月期の売上高の変化率である。仮に初年度に国内、海外でそれぞれ10%のシェアを取れば1,100億円となる。当社の出荷ベースの価格を半分と見れば、今期売上高142億円の3倍を超える。売上高に関する予想はピンとキリで大きく異なるが、どんなに控えめに見ても、来期の売上高は上場会社として記録的な変化率を達成するだろう。
(8)日経は先週、武田薬品と米メルクがヒトエリスロポエチンの後発薬を開発中と報じた。当社に続くバイオ系後発薬で、順調に進めば2年後の発売となる。私は市場の巨大さから見てさらなる新規参入もあると思う。それでも当社の事業規模から見た業績の変化率はきわめて大きくなるだろう。
(9)今後の相場のスケールを決めるのは一にも二にも業績である。9月中間決算の予想が具体化するまでは増収幅を巡る思惑で波乱が続くだろう。

(三)野村マイクロは意外高も。

(1)チャートの通り、当社は新規上場の07年に3,150円の高値を記録した後、09年の安値283円まで一直線に暴落した。先週ようやく690円に小反発し、チャートの節目である移動平均線を上回ったところである。
(2)暴落の原因はプラントメーカーにありがちな業績の激変である。当社は韓国サムスンを筆頭に、中国、台湾の半導体デバイスや液晶パネル向けに超純水製造装置を納入している。利益は上場した07年3月期の10.7億円をピークに急降下し、今3月期は5.4億円の赤字に転落する。
(3)しかし直近の情報開示で、今3月期の第3四半期(昨年10〜12月)に受注高が57.8億円と、前年同期比で2倍以上に急増した。
(4)電話で問い合わせたところ、第3四半期の受注は液晶関連が中心であったが、現在は半導体が加わって受注環境がさらに好転し、来期の黒字転換は確実だという。
(5)私が特に注目したいのは株式の需給関係である。上場時に大株主が高値で持ち株を放出したが、暴落後に野村一族と見られる株主が自社株買いを含めて買い続けた結果、浮動株が激減し、チャート下段の出来高が極端に薄くなっている。
(6)株式の需給関係が好転しただけに,来期の業績いかんで株価は予想外の急回復を演じる可能性がある。