2010/2/22

  2010年2月22日(月)

(一)1回目の公定歩合引き上げは買い。

(1)米国が公定歩合を引き上げた。しかし経験則によれば、「1回目、2回目の公定歩合引き上げは買い」である。
(2)日本はインフレ懸念どころかデフレが進行中で、財務大臣が日銀に一段の金融緩和を求めているほどだから、ゼロ金利からの脱出は先進国で最後になるだろう。
(3)しかし米国やECは、景気底入れのめどが立てばゼロ金利を脱出したいという議論が始まっている。その時期は半年先という意見が大勢である。
(4)現在、世界の株式市場はジャブジャブ金融によって形成された「不景気の株高」局面にあるが、中央銀行がジャブジャブの過剰流動性を回収し始める頃には、株式市場は「不景気の株高」から「業績相場」に発展する。現在は「業績相場」の入り口にさしかかったあたりで、まだ公定歩合と政策金利が連動して上昇する段階には至っていない。
(5)それゆえ「1回目の公定歩合の引き上げは買い」という経験則が今回も生きるのではないか、と私は思う。

(二)3大銀行の株式売却が続く。

(1)20日付日経は、3大銀行の株式売却が昨年は4,000億円に達したと報じた。3大銀行は、BIS(国際決済銀行)が2004年に強化した自己資本規定に準じて持ち株の売却を始めたから、売却傾向は今年も続くだろう。
(2)しかしBIS(国際決済銀行)は米英のユダヤ系資本が支配しており、彼らはきわめて恣意的に運用基準を決めて来た。2004年に自己資本規定を厳格化する方針を決めたが、現実には、投資銀行部門を強化して株式を大量に保有し、投資銀行もまた銀行分野に攻め込んでいる。2004年のBIS基準は有名無実となり、彼らは現在ではBIS基準の実施時期は未定だと語っている。
(3)欧米系に対して日本とドイツは歴史的に銀行が取引先企業の株を持ち、ドイツの銀行は監査役を派遣している場合もある。
(4)しかし日本の銀行は1980年代に企業と一体で欧米市場に攻め込み、世界の銀行ランキングの上位を独占した時期があった。このときユダヤ資本はBISの融資基準を自己資本比率8%以上に引き上げて日本の銀行を国際市場から閉め出した。当時の苦い経験から、日本の3大銀行は持ち株を売却する一方、連続増資によって自己資本を拡大しているのである。
(5)現実にBIS基準の規制を受けるのは国際業務を行う3大銀行だけだから、3大銀行と緊密な関係にある企業の株価は要注意である。
(6)たとえば住友金属鉱山は金、銅、ニッケルの自山鉱で巨大な含み益を蓄積し、高水準の利益を維持しているにもかかわらず、信用取引の買い残が増勢一途をたどり、株価が低迷している。原因はメーンバンクである三井住友銀行の売りだろう。
(7)この様な状況下で無難に投資銘柄を選ぶとすれば公益性の高い高利回り株となるが、私はむしろ新たな投資チャンスが生まれると思う。

(三)日本株投資の視点が変化する。

(1)第1に、株式投資ではリスクのないところに利益はない、と割り切る投資家は利回りよりも企業の成長力を重視するだろう。
(2)第2に、市場が成熟し、成長機会を失った企業は銀行系列を超えて、M&A(合併・買収)を断行し、合理化と国際競争力を強化するだろう。日本は世界でM&Aが最も少ない国であるが、安定株主が減ればTOBが成立しやすくなる。M&Aは新たな投資のチャンスを生み出すだろう。
(3)たとえば、キリンとサントリーの合併は破談となったが、本格的なM&A時代の到来を予感させた。両社はすでに新たなM&Aを模索しているだろう。
(4)たとえば、世界第2位の製薬大手グラクソ・スミスクラインが大証2部の日本ケミカルの大株主に浮上した。革新的な技術が生まれた場合には、予想外の株主移動が起こる。
(5)たとえば、三洋電機を電気自動車時代の大本命とみたパナソニックが50%強の株式を取得した。パナソニックの決断が正しければ、近い将来に世界の機関投資家が争って三洋電機株を買うだろう。

(四)日本ケミカル、武田薬品と市場規模。

(1)2月19日付日経は、武田薬品が米アフィマックス社から腎性貧血治療薬の日本における販売権を取得し、フェーズ3に入ったと報じた。当社の「ヒトエリスロポエチン」と同じバイオ系の後発薬で、順調に進めば2〜3年後の発売となる。
(2)武田薬品が遅ればせながら後々発となる医薬品の販売権を取得したのは、市場規模が1,100億円と大きい上に拡大傾向をたどっているからである。市場規模が大きければ大きいほど当然新薬開発も活発となる。
(3)現在、国内では中外製薬とキリンが1,100億円の市場を2分しているが、海外でも両社の提携先であるスイスのロシュと米国のアムジェンが1兆円の巨大市場を2分している。
(4)日本ケミカルは4月の薬価収載を待って内外の寡占市場に参入する。初のバイオ系医薬品で競争力がある。
(5)国内では当社が生産し、共同開発のキッセイ薬品が販売を担当する。海外では当社が世界第2位の製薬大手、グラクソ・スミスクラインにバルクを供給する。
(6)初年度の市場シェアを10%と見れば、新薬の売上高は1,000億円に達する。出荷ベースの売上高は不明であるが、年間売上高142億円の当社は来期以降の業績が急変するだろう。
(7)武田薬品の狙いも市場規模の大きさにある。