2010/2/15

  2010年2月15日(月)

(一)オバマ大統領の金融改革。近況と行方。

NYダウ

(1)チャートを見れば一目瞭然、1月21日にオバマ大統領が金融改革案を発表した日からNYダウが急落した。
(2)世界の株価はNYに連鎖して急落し、株価の急落は商品、債券、為替、不動産とそれらの先物相場に波及した。
(3)先週、余震はヨーロッパを揺さぶった。ギリシャの財政悪化が報じられると、欧州各国の株式とユーロが急落し、急落の連鎖は即日世界を一巡して日本の株価が急落し、円が急騰した。
(4)これらの事実は、世界の株式と債券、商品、為替、不動産等の相場が一つのマネーの流れの上に形成されていることを証明している。オバマ大統領の金融改革は現実には実行することが困難であることが明らかとなった。米国内では共和党や金融関係者から反対論が噴出している。

(二)暴落の連鎖は最終局面か。

(1)オバマ大統領は選挙公約に掲げた健康保険改革が頓挫し、急落した人気を挽回するために金融改革論を打ち出した。
(2)わずか1年前に倒産の瀬戸際からFRBによって救済された投資銀行が早くも高額ボーナスを競い合って議会とマスコミの強い批判を受けていたから、大統領は「銀行と証券を分離して、証券(投資銀行)を二度と救済しない」という懲罰的な規制が国民から支持されると見た。
(3)しかし金融改革案をまとめたボルカー元FRB議長は83歳の高齢で、80年も昔の大恐慌時代のグラス・スティーガル法の復活を頑固に主張してきた。市場関係者から即座に反対論が出たのは、ボルカー時代にアメリカの金融市場が沈滞し、グリーンスパンに代わって爆発的に発展した事実を知っているからである。
(4)即座に私は、時代錯誤の金融改革は成立しないだろうと述べた。巨大化し、情報化し、多国籍化した現在の金融市場では証券業務と銀行業務を区別することさえ不可能に近い。暴落の連鎖は世界の金融市場が示した拒絶反応である。

(三)相場は急反騰も。

(1)オバマ大統領の金融改革が実現困難となれば、株式相場の下落もまた最終局面に入る。強気転換を示す指標も点滅している。
(2)第1に、チャートがほぼ相場の底値圏に達した。
(3)第2に、各国の政府と中央銀行が放出した過剰流動性はそのまま温存されているから、急反騰もありうる。
(4)第3に、企業業績は回復過程をたどっている。
(5)第4に、雇用は最悪期を脱しつつある。

(四)三洋電機の需給関係。

(1)2月8日付で,モルガン・スタンレーの空売りが908万株から561万株に減少した。ヘッジファンドはなお4,000万株の空売りを残しているが、他社も買い戻しに転じる可能性が高い。
(2)私が買い戻すと思う理由は、第1に130円の売り目標に近づいた。第2に市場の関心が今3月期の赤字決算から来期以降の成長力評価に移る。
(3)しかし大和証券が取得した4億株のうち1億株を市場で売却して需給関係を悪化させた状況は改善していない。
(4)今後の注目点は8億株を取得したゴールドマン・サックス(GS)の出方である。GSはパナソニックが三洋電機買収を表明したとき、TOB価格270円を強硬に主張した。その後の1年間に三洋電機の電池事業は急拡大している。
(5)7月には世界初の自動車用リチウムイオン電池量産工場(年産20万台)が完成し、全方位販売を宣言した三洋電機の競争力が証明される。GSは取得した8億株を種玉として一相場を演出するだろう。GSは株価100円の上下で800億円の利益が上下するだけに、好機を見逃さないだろう。

(五)日本ケミカル。野中の一本杉。

日本ケミカル

(1)チャートの通り、諸株急落の中で独歩高を演じ、野中の一本杉となった。
(2)バイオ新薬「腎性貧血治療薬・ヒトエリスロポエチン」が人気要因である。1月に厚労省の製造認可が降りた。生産体制も整った。4月の薬価収載を待って発売する。
(3)第1の注目点は、国内1,000億円、海外1兆円の巨大な市場規模である。年間売上高140億円の当社から見れば、革命的な業績変化が期待できる。
(4)第2の注目点は、海外の販売権を取得した英グラスコ・スミスクラインの販売力である。売上高2.8兆円、世界第2位の製薬大手が、当社株350万株を取得して第2位の大株主となった。
(5)当社自身は、来3月期の業績はまだ予測できないと慎重であるが、新薬の市場スケールからみた変化率の高さは容易に予想できる。長期の投資家に勧めたい。
(6)前回と前々回のクラブ9を参照されたい。