(1)昨年12月18日に英国製薬大手グラクソ・スミスクライン(以下GSK)が医薬品の生産、開発、販売に関して日本ケミカルリサーチ(以下JCR)と包括的契約を締結し、株式350万株(12.6%)を1株800円で取得した。
(2)売上高2.8兆円、世界第2位の巨大製薬会社が売上高わずか130億円のJCRの大株主に浮上したばかりか包括的契約を締結したのは、JCRが開発した腎性貧血治療薬「ヒトエリスロポエチン(以下本製品)」の販売権を取得するためである。JCRはGSKから契約金、マイルストン収入、ロイヤリティーを取得する。
(3)本製品は遺伝子組み換えのバイオ技術を用いて完全無血清培地を作成し、工業的に製剤する医薬品である。牛の血清を使わないから血清を除去する行程が不要で、安全でコストが安い。
(4)本製品は「透析施行中の腎性貧血」、「未熟児貧血」等に効能、効果がある。腎性貧血は慢性透析患者の合併症で、国内の透析患者数は28万人。毎年1万人が増加している。
(5)最大の注目点は国内1,000億円、海外1兆円の巨大市場にある。国内は中外製薬とキリンビールの寡占市場で、前期には中外製薬のエポジンが614億円、キリンのエスポーとネスポーが437億円の売上高を計上している。
(6)本製品は1月20日付けで厚労省から製造認可が下りた。生産体制はすでに整っており、4月の薬価収載を待って発売する。海外へはバルクで輸出し、GSKが現地で製剤化する。
(7)本製品はJCRと、JCRの筆頭大株主であるキッセイ薬品との共同開発で、JCRが生産を、キッセイ薬品が販売を担当する。
(8)薬価は未定であるが、一般に後発薬品は30%安となる。そうなれば、本製品は品質、安全性、価格のすべてで強い競争力が見込まれるだけに、売上高が100億円単位で激増する可能性がある。
(9)しかし世界第2位のGSKが販売権を取得した海外市場のインパクトは桁違いに大きい。世界の製薬業界は今、主力薬品の特許期限切れが集中する2010年問題に直面している。GSKは1兆円市場に参入して1,000億円単位で市場を獲得する可能性がある。
(10)年間売上高130億円のJCRにとって国内1,000億円、海外1兆円の市場規模はあまりにも巨大である。しかし特に海外市場を担当するのは年間売上高2.8兆円、世界第2位のGSKである。
(11)JCR自身は本製品の売上高を織り込んだ来期以降の業績予想をまだ開示していないが、私は今年の4月以降に日本の上場企業がこれまでに経験したことがないほど長足の飛躍を実現すると思う。