2009/12/7

  2009年12月7日(月)
  I. 疾風怒濤(シップウドトウ)の1週間。
  II. どうなる?三洋電機。

 I. 疾風怒濤(シップウドトウ)の1週間。
(一)ドバイショックが民主党政権を直撃。

(1)ドバイショックは、無為無策の民主党政権を揺るがす大型台風となった。
(2)11月27日金曜日。ドバイは5兆円の債務繰り延べ表明し、一夜にして円ドル為替は84円台に暴騰、日経平均は9,000円割れ寸前に追い込まれた。
(3)鳩山政権はあわてて、デフレ対策、株価対策、為替対策に乗り出した。
(4)日銀総裁は、10兆円の資金放出を決断した。
(5)財務大臣は、ドル買い円売りの為替介入を辞さずと表明した。

(二)ドバイショックが日本の神風に。

(1)しかし先週に入ると、政府が行動を起こすまでもなく、大型台風は神風に一変した。
(2)円は90円台に暴落した。日経平均は1週間で1,000円も大暴騰し、1万円大台を回復した。
(3)商品市場でも暴騰していた金相場は4日、一夜で50ドルの暴落を演じた。
(4)ドバイショックはデフレ日本を救済する神風となった。一体何がそうさせたかはわからないが、一つの明快な事実がある。ヘッジファンドが日本のポートフォリオの組み替えを迫られたという事実である。日本株ウリ、円カイで稼いでいたヘッジファンドが一転して日本株買い、円売りに転じた。
(5)まれに見る相場の大逆転現象は日本だけで顕著に起こった。それゆえ鳩山内閣誕生以来、独歩安を続けていた日経平均が急速にニューヨークダウにサヤ寄せし、独歩高を続けていた円が独歩安に転じた。
(6)しかし日本にとっての神風はヘッジファンドにとっての疫病神となった。私は、ヘッジファンドの投機が行き過ぎて、国際的な相場の上昇トレンドからかい離し過ぎたために、自壊作用を起こした、と思う。
(7)東京市場におけるヘッジファンドの支配力が大きかっただけに、彼らのポートフォリオの組み替えは個別銘柄にさまざまな逆転現象をもたらすだろう。

 II. どうなる?三洋電機。
(一)電池関連株の評価に大差。

(1)J・P・モルガンが電池関連3銘柄(三洋電機、GSユアサ、新神戸電機)の格付けを開始した。パナソニックとのシナジー効果が期待できる三洋電気の目標株価を強気の270円とし、GSユアサと新神戸電機を中立とした。
(2)しかし私が常識的だと思う格付けはJ・P・モルガンのみで、三洋電機カラ売りの大手であるドイツ銀行とシティグループは目標株価を100円とした。パナソニックが131円で無制限に買うと宣言しているのだから100円はあり得ない。ありえない目標株価を持ち出すところに彼らの意図が透けて見える。
(3)外国証券による三洋電機のカラウリ残高は依然として増勢をたどり、5,000万株を超えている。
(4)モルガンスタンレーは三洋電機880万株をカラ売りする一方、GSユアサを2,100万株取得した。
(5)このようにウリとカイを同時に行い、ヘッジによって株価のサヤを取る手法がヘッジファンドの特徴である。しかし普通の大部分の投資信託は長期投資が基本で、カラウリは存在しない。

(二)爆発した電池関連株人気。

(1)世界1のフィデリティ投信が関東電化、田中化研、戸田工業、ステラケミファの大株主に急浮上し、株価がそろって急騰した。4銘柄は何れもパナソニックや三洋電機にリチウムイオン電池の素材を納入する有力企業である。
(2)GSユアサや新神戸電機は年初来5倍以上に暴騰し、高値から下押したとはいえ、現在も3〜5倍の株価を維持している。
(3)しかし日本の電池株の高騰は穏健で、海外では超高株価現象が発生した。J・P・モルガンはあまりの暴騰をPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)では説明できないから、超人気株の尺度に用いるPSR(年間売上高に対する株価の倍率)を持ち出した。
(4)PSRでは、GSユアサ1倍に対し、中国BYDは5.6倍。米国A123に至っては20.8倍に達している。つまりユアサは時価総額と売上高がどちらも同じ2,400億円であるが、A123は時価総額が売上高の実に21倍に達しており、理屈では到底説明できない超人気現象の典型となった。
(5)このような超人気現象は2000年のITバブルで出現した。当時ヤフーは1株1億6千万円に大暴騰し、私はこの時初めてPSRという投資尺度を知った。
(6)ITバブルは短期間で崩壊したが、IT革命は10年後の現在、人類のライフスタイルに一大革命をもたらしている。私たちは今、ケータイを必需品とする情報の海の中で暮らしている。

(三)電池の海で暮らす時代が近い。

(1)ヤフーの大暴騰がIT革命の到来を予言したように、BYDやA123の大暴騰は電池革命の到来を予言していると私は思う。
(2)パナソニックと三洋電機は日本でマイクログリッドによる「電池丸ごと」社会の構築に乗り出した。
(3)家やマンションや工場が太陽発電で創造した電力を、高性能の電池に蓄電し、電気自動車に充電し、余剰電力を相互に貸し借りして、無公害社会を実現する。
(4)米国でグーグルがスマートグリッド構想を推進し、電力会社を排除した無公害社会のネットワークを構築しようとするのに対して、パナソニックと三洋電機は最先端の太陽電池や蓄電池を活用して米国よりも効率的な無公害社会の構築を目指している。
(5)過去10年間にケータイやパソコンが普及して情報化社会を実現したように、スマートグリッドやマイクログリッドは電池を用いた無公害社会を実現する可能性が高い。

(四)三洋電機の可能性。

(1)三洋電機は2012年3月までに2,900億円の設備投資を行うと発表したが、不況下でも太陽電池と自動車電池に積極果敢な投資を断行している。世界各地の太陽電池工場はみなフル操業で、自動車電池工場も繁忙をきわめている。
(2)パナソニックの三洋電機TOBが完了する今週の12月9日にはインサイダー情報の制約がなくなるから、両社は新規事業の現状と目標を積極的に開示するだろう。
(3)素材や下請け企業の経営者はみな三洋電機と取引しなければ最先端の技術革新について行けないと語っている。
(4)その三洋電機が、世界的な電池株高騰の中で150円にたたき売られている。
(5)私は電池に勝る成長市場、三洋電機に勝る成長企業があるとは思わない。三洋電機が電池関連株の先行指標であることは事実を見れば歴然としている。株価が異常な安値圏を脱出するのは時間の問題だろう。