2009/11/16

  2009年11月16日(月)
  続・三洋電機、驚愕の舞台裏を推理する。

(一)急落の主役は大和証券とGS(ゴールドマン・サックス)。

<表1・大和証券とGSが売却した株式>

 
5日
6日
9日
大 和
4062万株
2694万株
383万株
7139万株
G  S
2480万株
800万株
3280万株
合 計
6542万株
2694万株
1183万株
10419万株

(1)金融庁は先週末、三洋電機大株主2社の売却株式数を表1の通り開示した。
(2)前回に私は売り崩しの主役をGSと推定したが、事実は大和証券とGSとの共同作業であることが判明した。
(3)下落幅が最も大きかった5日には両社合計で6,542万株を売却した。開示された3日間の合計売却株式数は1億株を超えた。
(4)この間に、大和証券とGSが株価下落によって被った損失は、600億円を超えている。
(5)一体何のために両社は600億円の資産をドブに捨てたのだろうか。これが私の推理の出発点である。
(6)私は特定の企業に特定の株価で株式を譲渡する約束があり、両社がその約束を履行するために株価を下げた、と推理した。
(7)2社自身による売り崩しが5日に始まった点も重要である。パナソニックがTOBを公式に開始した5日は、大株主であるGSと大和証券はインサイダー取引の制約から解放された日でもある。

(二)今後の注目点。

(1)5〜9日にGSと大和証券が市場外バイカイによって特定企業に株式を売却したとすれば、金融庁が今週にもその内容を開示するだろう。
(2)株式譲渡を実行すれば下値の必要性はなくなる。株価は反騰に転じるだろう。
(3)しか金融庁はまだ売買を裏付ける情報を開示していない。
(4)以下にこれまでの経過と今後の予測を整理しておきたい。
 第1に、パナソニックによる三洋電機TOBの独禁法審査が難航していた9月に、パナソニックが取得する株式数が3分の2から50%超に削減された。しかしパナソニックは三洋電機を子会社化するために必要な50%超を死守した。
 第2に、その結果、はみ出した12億株をGSと大和証券が取得することになった。
 第3に、この時、パナソニックは2社に対して、12億株の全部又は一部の売却先と売却株価について合意を求めた。
 第4に、電池関連株が軒並みに急騰した9月以降に、大本命と見られた三洋電機だけが下落を始めた。
 第5に、同時期に大手証券各社から目標株価を100〜120円とする不可解な弱気レポートが出た。
 第6に、レポートと平行して外資系証券が借り株を用いてカラ売りを急増させた。先週までにメリルリンチが買い戻しを終了したが、11月6日現在、モルガンスタンレー、ドイツ銀行、ドイツ信託、VICIS、シティグループが合計4,500万株のカラ売りを残している。名義人は外資系証券であるが、実際の売り手はヘッジファンドである。
 第7に、11月4日まではヘッジファンドが売り崩しを代行したが、5日以降は大和証券とGSが1億株を売却した。
(5)今後は次の2点に注目したい。
 第1に、GSと大和証券が株式譲渡を終了したか、或いはこれから実行するかを、金融庁が開示する情報で確認する。
 第2に、すでに終了した場合は、ヘッジファンドが借り株の買い戻しを急ぐだろう。この点は東証が開示する情報で確認する。

(三)三洋電機の「独占的」競争力。

(1)21世紀は「電池を制する企業が世界を制する」時代である。
(2)私は、経営資源を太陽電池と自動車電池に集約した三洋電機が、パナソニックの支援を得て21世紀を代表する成長企業に発展すると思う。
(3)三洋電機が世界市場を独占する条件を備えていることを、世界の主要11ヶ国・地域が証明した。パナソニックによる三洋電機TOBの事前審査が延々1年の永きに及び、一部事業の売却を要求したのは独禁法に抵触したからである。

(四)三洋電機の株価。

(1)三洋電機の発行株式数は優先株の普通株転換によって22億株から61億株に激増するが、増加した株式を全部パナソニックが買収すれば、株式市場の需給関係は変わらない。
(2)しかしパナソニックの支配株式数が独禁法審査で50%超に削減された結果、GSが8億株、大和証券が4億株を取得した。
(3)もし両社が12億株を全部株式市場で売却すれば、需給関係が悪化して株価の短期的な下落は避けられない。
(4)しかし12億株の一部又は全部を安定株主が取得したことがわかれば、株価は反騰に転じる。
(5)12億株の一部が2社の手元に残った場合にも、2社は虎の子の保有株をテコとして三洋電機の実力にふさわしい株価を実現するだろう。
(6)私は、三洋電機の実力にふさわしい株価を「下限は300円、上限は見えない」と思う。

(五)560キロ連続走行の世界記録に挑戦。

 三洋電機は自社電池を搭載した電気自動車で、明17日、東京大阪間560キロ、連続走行の世界記録樹立を目指す。NHKニュース等に注目されたい。