2009/11/2

  2009年11月2日(月)
  I. TOBで三洋電機はどう変わるか。
  II. 富士フイルム。

 I. TOBで三洋電機はどう変わるか。
(一)三洋電機の日足。

<チャート1>

(1)TOB開始の情報を受けて先週、下げ過程で開けた232円の窓を埋めた。チャート上は戻り売りから押し目買いに逆転した。

(二)ヘッジファンドのカラ売り(借り株)。
表1. ヘッジファンドのカラ売り(借り株)
証券会社名
カラ売り株数
開示の日付
シティグループ
1131 万株
10/ 2
モルガン・スタンレー
881 万株
10/27
ドイツ銀ロンドン
952 万株
10/27
VICIS
950 万株
10/ 2
注1。名義は証券会社であるが、実際のカラ売りはヘッジファンド
注2。直近の大口売りを集計すると約4,000万株

(1)投資信託にカラ売りはないが、ヘッジファンドはカラ売りによってヘッジする特殊な投資信託である。
(2)しかしヘッジファンドは現物株を借りて現物株で売るから、信用取引に姿を見せないカラ売りである。
(3)情報の不公平を修正するために、東証は発行株式の0.25%を超える大口のカラ売りのみを窓口の外資系証券ごとに開示している。
(4)表の約4,000万株は東証が開示したヘッジファンドのカラ売り(借り株)で、これが三洋電機急落の仕掛け人である。
(5)しかし借り株もまた契約の期日までに買い戻さなくてはならない。買い戻しが進めば、日証金の取り組みが改善する。

(三)大手証券の格付け。
表2. 大手証券の格付け
証券会社名
QUICK換算値
目標株価
更新日
 ドイツ証券
−2
100円
7/31
 野村
−2
130円
8/10
 モルガン・スタンレー
−1
131円
9/28
 シティグループ
−2
100円
10/06
 東海東京
−1
10/23
 みずほ
−2
131円
10/26
 三菱UFJ
−1
10/26
 バークレイズ・キャピタル
−1
170円
10/29
 JPモルガン
+1
270円
10/29
注1。JPモルガン以外は、すべて売り推奨である。

(1)8月以降、大手証券8社が次々に目標値を100〜130円とする売り推奨レポートを出した。
(2)これに呼応するようにヘッジファンドのカラ売り(借り株)が急増した。
(3)その間に、三洋電機以外の大多数の電池関連株が急騰したから、私は作為が見えると指摘したことがある。
(4)10月29日付でJPモルガンが目標値を270円とする買い推奨レポートを出した。JPモルガンは他の外資系証券のカラ売り(借り株)に同調していない。
(5)証券会社は格付けの連続性を要求される。異常な弱気論を合唱したアナリストが今後どのように目標株価を修正するかに注目したい。

(四)フィデリティ関連4銘柄の株価。
表3. フィデリティ関連4銘柄の株価
会社名
保有割合
高値 (日付)
安値 (日付)
10/30終値
戸田工業
5.88%
972(10/23)
224(1/05)
878円
田中化研
6.55%
3420(09/11)
610(2/23)
2945円
関東電化
6.31%
807(10/27)
242(3/12)
752円
ステラケミファ
5.32%
5290(10/26)
1310(1/15)
5050円

(1)フィデリティは世界1の投資信託で、成長株投資に定評がある。
(2)フィデリティ投信が組み入れた4銘柄はリチウムイオン電池の正極材、負極材等を生産しており、そろって大型の設備投資に踏み切った。4社の主要な納入先は三洋電機と見られる。

(五)電池3社の株価。
表4. 電池3社の株価
会社名
高値 (日付)
安値 (日付)
10/30終値
 三洋
279(06/17)
132(3/12)
228円
 GSユアサ
1228(06/18)
363(2/23)
792円
 新神戸電
1247(06/18)
392(2/24)
1135円

(1)自動車用電池でダントツのシェアを持つ三洋電機の割安が鮮明である。

(六)私の意見。

(1)パナソニックと三洋電機はニッケル水素電池の市場シェアが80%を超えていたために、独禁法の事前審査で大幅な譲歩を余儀なくされた。
(2)しかしリチウムイオン電池は無傷で残った。
(3)三洋電機は10年後に自動車電池の市場シェア40%を目指すと宣言したが、現状はもっと先行している。すなわちホンダ、トヨタ、フォルクスワーゲン、フォードに次いで仏プジョーが戦列に加わり、独走態勢を固めつつある。
(4)パナソニックによる三洋電機TOBは131円で成立し、三洋電機がパナソニックの傘下に入ることが確実となった。
(5)大手証券8社が設定した100〜130円の売り目標は、今や非現実的な株価となった。ヘッジファンドは早晩4,000万株の借り株を買い戻さざるを得なくなるだろう。
(6)三洋電機は電気自動車革命をけん引する先端企業にふさわしい株価水準を模索し始めるだろう。

 II. 富士フイルムと T-705。
(1)富士フイルムは、富山化学の鳥インフルエンザ特効薬 T-705 がフェーズ3に入ったと発表した。
(2)T-705 は来年製造認可を予定しており、富山工場で1,000万人分の備蓄のための設備投資に着手した。
(3)T-705 は昨年フェーズ2をクリアした後も追加臨床を重ねており、豚インフルに対する有効性も証明している。
(4)臨床試験は米国で同時に進行しており、ECでも臨床試験入りが近い。
(5)T-705 は抗生物質ではないから、耐性菌が発生しないという傑出した特徴を備えている。
(6)T-705 の臨床試験を担当した富山大学の白木教授は小児感染症学会で鳥インフルエンザはもちろん、B型肝炎、C型肝炎、エイズ等広範囲の感染症に有効であると発表している。
(7)T-705 は富士フイルムの業態を変える超大型新薬に発展する可能性が高い。
(8)富山化学が開発中のアルツハイマー治療薬とリウマチ治療薬も フェーズ2をクリアしている。富士フイルムは富山化学を新薬開発の拠点に据えると表明している。