2009/10/26

  2009年10月26日(月)
  独禁法決着で表面化した三洋電機の圧倒的競争力。

(一)世界シェア40%へ。

(1)トヨタと三洋電機は先週、これまで沈黙を守っていた自動車電池について相次いで重要な情報を開示した。
 第1に、トヨタは、年内発売のプラグインハイブリッド車に搭載するリチウムイオン電池を三洋電機から調達する。
 第2に、三洋電機は、パナソニックの傘下で全方位販売を断行し、2020年には世界シェア40%取得を目指す。
 第3に、三洋電機は世界最大の販売量をベースに強力なコスト競争力を確立する。
(2)同時に三洋電機の本間副社長は、ハイブリッド用リチウムイオン電池の中期の生産計画を発表した。2010年8月に月産110万個、2011年に月産140万〜150万個、2015年に月産1,000万個を目指す。
(3)2020年にシェア40%を目指す生産計画は2ヶ月前にクラブ9で報じたが、今回は短期、中期、長期の生産計画を開示した。生産計画が具体化し、達成に自信を深めた結果が見て取れる。
(4)トヨタと三洋電機の積極的な情報開示は、パナソニックが独禁法の事前審査に目途をつけたことを示している。TOBの開始は目前だろう。
(5)10月25付け日経ヴェリタスは「世界制覇狙うパナソニック・三洋」「住宅、エコカー、パソコン等囲い込み」で両社の構想と収益力を分析している。参照されたい。

(二)一斉に動意付いた電池関連株。

(1)私は先週、電池関連株に新たな動意が見られるとして、次の変化を指摘した。
 第1に、電池の素材メーカーが一斉に大型の設備投資に踏み切った。
 第2に、フィデリティ投信がいち早く田中化研、戸田工業、関東電化等の株式を大量取得した。
 第3に、大型の設備投資に踏み切った素材メーカーの製品の最大の納入先は三洋電機だろう。独禁法問題に目途が立てば、三洋電機自身が情報を開示するだろう。
(2)これらの私の予想は先週一挙に現実となった。
(3)三洋電機株も底入れが鮮明となったが、まだ安値圏を脱していない。しかしTOBが始まれば異常で不可解な弱気論が一掃されるだろう。
(4)TOB後の株価は、8億株を取得したゴールドマン・サックスの出方次第と思われるので、次項で私見を述べたい。

(三)ゴールドマン・サックス(GS)の3つの選択肢。

(1)パナソニックは当初、GS、大和証券、三井住友銀行が保有するすべての優先株をTOBによって取得すると発表した。
(2)しかし独禁法の事前審査の過程で取得株式を50%超に縮小した結果、GSが8億株を、大和証券が4億株を取得することで最終的に決着した。
(3)12億株の行方について両社は沈黙を守っているが、TOBが終了すれば新たな動きが表面化するだろう。特に131円のTOB株価が安すぎると強く反対したGSの動向が焦点となる。
(4)GSの第1の選択肢は市場売却である。しかし8億株をそのまま市場で売却すれば株価の急落は必至である。世界1の相場巧者であるGSがようやく手に入れた金の卵を叩き売るような愚策を選択するとは思えない。
(5)第2の選択肢は、内外の投資家に売却するケースである。25日放送のNHKスペシャル「自動車革命2」は国際的なリチウムイオン電池の激しい開発競争と争奪戦を紹介していた。今や三洋電機8億株は金の卵である。
(6)第3の選択肢は、GSと大和証券が保有する12億株をそっくりトヨタに売却するケースである。誰も予想しない選択肢と思われるので、次項で詳述したい。

(四)世界最強のトライアングル。

(1)10月18日のNHKスペシャル「自動車革命・トヨタ新時代への苦闘」で、トヨタの副社長が「電気自動車の主導権を将来にわって維持するためには、電池生産で主導権を握る必要がある」と述べていた。今や高性能で安価な電池を開発した企業が電気自動車時代を主導することは誰の目にも明らかである。
(2)一方、三洋電機は本格的な電気自動車時代が到来すると予想される2020年に電池の世界シェア40%を獲得すると宣言し、大規模な設備投資に着手した。
(3)ニッケル水素電池をパナソニックから、リチウムイオン電池を三洋電機から調達するトヨタは、すでにパナソニックと提携関係にあるが、同時に三洋電機との提携関係を強化する必要に迫られている。
(4)トヨタがもし三洋電機の大株主となれば、三洋電機の親会社であるパナソニックにも発言権を行使できるから、トヨタ、パナソニック、三洋電機の3社を結ぶ世界最強のトライアングルが成立する。
(5)12億株の買収には2,500億円の資金が必要であるが、11.5兆円の巨大な利益剰余金を蓄積したトヨタとしては安価で、不可欠な投資だろう。
(6)私は第3の選択肢の可能性が最も高いと思う。