2009/10/13

  2009年10月13日(月)

(一)総弱気の裏目が出る。

<チャート・NYダウ、日経平均、上海総合の週足>
NY日経上海週足

(1)チャートを見れば日経平均の割安、出遅れは一目瞭然である。
(2)日本唯一の経済紙である日経の紙面(TV、CATVを含む)を弱気論が支配し、世界的な株価上昇と無縁の悲観論を形成している。私はもし日本に日経が無ければ、平均株価は1,000円上がると思う。
(3)米国でも3月の暴落局面では異常な弱気論がマスコミを支配していた。千載一遇の好機と見て底値を買い向かったウォーレン・バフェット氏は、テレビで株価を見る時に音声を切って弱気論を遮断した。いま日経ヴェリタスがバフェット氏の伝記を連載しているが、バフェット氏のマスコミ不信を正しく伝えているだろうか。
(4)米国のマスコミは、現在は弱気論と強気論を公平に伝えているが、日経は現在も弱気論に偏している。
(5)資本主義の「資本」は株式」と同義であり、資本主義社会は株式会社の集合体である。それゆえ株価の暴落を放置すれば資本主義社会は必ず崩壊する。第1に、企業は設備投資に臆病となる。第2に、個人は財布のひもを締める。第3に、失業率が拡大する。第4に、政府の税収入が減る。第5に、国民の老後を保障する年金が破たんする。第6に、日経は倒産する。
(6)だからこそ、不況が深刻化すればするほど世界中の政府と中央銀行は結束して財政投融資を拡大し、金融をジャブジャブにゆるめて、株価のてこ入れを図るのである。
(7)日経のように独占度の高い経済専門紙は弱気論と強気論を公平に報道する責任がある、と私は思う。
(8)東京市場は日経の異常な弱気論の裏目が出るだろう。

(二)三洋電機TOBの直近情報。

(1)TOBの事前折衝は11ヶ国のうち、9ヶ国で終了し、未解決は米国、中国の2ヶ国のみとなった。
(2)私はTOBが1年近くも遅れている理由をパナソニック、三洋電機両社に問い合わせた。以下は発言の要約である。
 第1に、新たな情報は個別の投資家に開示しない。
 第2に、TOBが不可能になるとは思っていない。
 第3に、米国と中国も、詰めの段階にある。
(3)独禁法の事前申請に踏み切ったパナソニックと三洋電機の市場支配力は次の如くである。
 第1に、ケータイやパソコンを含む蓄電池の世界シェアは、1位三洋電機、2位パナソニックである。
 第2に、自動車用ニッケル水素電池で、両社のシェアは80%を超えている。
 第3に、開発途上の燃料電池ではパナソニックが先行している。
 第4に、しかし電気自動車の本命と目されるリチウムイオン電池車は、生産台数が1万台未満で、両社の生産実績はまだゼロである。
(4)電気自動車の生産はまだ始まったばかりだから、両社の潜在的競争力が高いという理由で、TOBの事前申請を拒否するには無理がある。
(5)パナソニックは、これまでに取得株式数や非中核的事業の売却等で譲歩した形跡がうかがえるが、両社は1年にわたる粘り強い交渉を経て9ヶ国の認可を取得した。もはや米国と中国だけが拒否する理由は乏しい。
(6)私は、認可は時間の問題と思うが、株式市場のTOBが完了するまで、両社は独禁法交渉に配慮して電気自動車の開発情報を開示しないだろう。

(三)ヘッジファンドの借り株(カラ売り)。

(1)東証が開示した情報をたどると、三洋電機に対する主要な外資系証券の(借り株による)空売りは次の如くである。東証は発行株式数の0.25%以上の移動があった場合にのみ開示する。日付は東証の開示日である。

モルガン・スタンレー 908(万株)
10/6
メリルリンチ 1053
10/1
ドイツ銀行(ロンドン) 610
10/1
VICIS CAPITAL 850 
10/1

(2)10月7日付でモルガン・スタンレーのカラ売りが616万株に急減した。ヘッジファンドの一部が買い戻しに転じた可能性がある。
(3)カラ売りの名義人は外資系証券であるが、実際の売り手はヘッジファンドである。普通のファンド(投資信託)はカラ売りを行わないが、ヘッジファンドは売り買いを同時に行い、ヘッジによって短期のさや取りを狙うからヘッジファンドと呼ばれる。
(4)三洋電機以外でも、銀行や証券の金融株等にカラ売りが多いと推定される。彼らが買い戻しに転じれば反騰に転じる銘柄が増えるだろう。
(5)借り株は約束した期日までに返済しなくてはならないのだから、信用取引と同じレベルの情報開示が必要だと私は思う。

(四)金融庁は日本の投資家の利益を守れ。

(1)欧米では、ヘッジファンドの借り株に関する正規の情報公開はないが、歴史が永いから投資家は誰でも借り株の存在を知っている。
(2)例えば私がこれまでに取り上げたシティバンクやAIGは、株価のボトムでカラ売りが発行株式数の半分に達している、という情報が流れていた。
(3)これに対して、日経は日証金の残高を毎日掲載し、自己融資の残高を毎週1回掲載しているが、外国証券の借り株(カラ売り)情報は全く掲載していない。
(4)ヘッジファンドは信用取引のカラ売り制度がない新興市場銘柄でも、自由に借り株を用いて株価を売り崩している。これでは日本の投資家は闇夜に鉄砲でねらい打ちされているも同然で、著しい不利益を被っている。
(5)麻生内閣は誕生直後に外資系証券の借り株を禁止したが、2ヶ月後に東証が借り株情報を開示することを条件に解禁した。しかし東証の情報開示が不十分なために、一般の投資家には借り株の実体が全く見えない。
(6)日本証券業協会、東証、日経は、投資家保護のために、亀井金融担当大臣に不公平な情報開示の改善を求めるべきではないだろうか。