2009/10/5

  2009年10月5日(月)
  三洋電機。
  ニューヨーク市場と東京市場。
  銘柄情報。

 I. 三洋電機。
(一)TOBの条件整う。

(1)優先株を普通株に転換した後の全発行株式数は61億6千万株となる。
(2)このうち、優先株を普通株に転換した株式の行方は次の通りに最終決定した。パナソニックはTOBによって連結子会社にするために必要な50%超を確保する。
   パナソニック     :30億8千万株。
   ゴールドマン・サックス: 8億2千万株。
   大和証券       : 4億2千万株。
(3)三洋電機は先週、TOBの事前交渉にかかわる資料作成と弁護士の費用50億円を営業外費用に計上した。
(4)これをもってTOBの事務処理は終了した。米国と中国については、2週間前に中核的事業に関する審査は終わったと報じていたから、TOBに入る条件はほぼ整ったと思われる。

(二)温暖化ガス25%削減の政策。

(1)鳩山新首相は国際会議で温暖化ガス25%削減を宣言して喝采を集めたが、実現を疑問視する論評もある。政府は日本が政策目標を実現するための具体的な方策と予算措置を早急に開示する必要がある。
(2)予想される主要な政策は、1.電気自動車、2.太陽光発電、3.原子力発電、だろう。
(3)三洋電機はこのうち、蓄電池と太陽光発電に経営資源を集中している。
(4)パナソニックが三洋電機買収に執念を燃やしたのは、三洋電機の主力業務にパナソニック自身の将来の展開力を賭けたからだろう。
(5)三洋電機の企業価値は過去を見るか、未来を見るかで全く変わる。本間副社長は10年後の2020年に世界の自動車電池シェア40%を目指すと述べているが、パナソニックのシェアを合わせれば、50%を大幅に超えるだろう。現在、蓄電池の世界シェアは1位三洋電機、2位パナソニックである。
(6)現状の自動車用蓄電池のコストは、ニッケル水素100万円、リチウムイオン250万円である。10年後に電気自動車時代を実現するためには電池のコストを半減する必要があるが、その場合でも両社が目標通りのシェアを確保すれば、蓄電池の売上高は優に大手自動車メーカーを凌ぐだろう。

(三)三洋電機の株価。

(1)株価は私の予想をはるかに下回って急落し、読者に迷惑をかけた。不明を恥じたい。
(2)急落の背景には外資系証券の借り株による売り崩しがある。東証が開示している「カラ売り残高に関する報告」等から、外資系証券の借り株を用いた実弾売りは3〜5,000万株と推定される。
(3)借り株による売り崩しは銀行株でも急増している。
(4)借り株によるカラ売りは現物株売りで信用取引のウリに現れないから、売れば売るほど売り残が減るという奇怪な現象が起こる。
(5)麻生内閣は誕生直後に借り株を禁止したが、2ヶ月後に解禁した。その時姿が見えない借り株によるカラ売りは不公平だとする批判があり、東証が実体を開示するようになった。しかし日証金が毎日、自己融資が1週間ごとにウリ・カイを開示しているのに比べると、東証の開示は不定期、不透明で実体は憶測するほかない。
(6)とはいえ、借りた株は早晩返済しなくてはならないから、将来のカイとなる。外資系証券が買い戻しに入った時には信用取引の取り組みが好転し、株価が急回復する。
(7)ゴールドマン・サックスはTOBの株価が安過ぎると強く抵抗した経緯があり、最終的に8億株を手元に残した。大和証券の4億株と合わせて市場で売却できる株数を超えているから、TOB終了後には安定化工作等の動きを始めるだろう。
(8)借り株を用いて三洋電機や銀行株をカラ売りした外資系証券も早晩買い戻しに転じるだろう。

 II. ニューヨーク市場と東京市場。

(1)世界の主要国のジャブジャブ金融は最短でも来年の半ばまで続くだろう。産業界の資金需要が伸びないから、空前の過剰流動性が金融市場に積み上がり、不景気の株高を出現させた。
(2)株高の経済効果は鮮明である。信用不安が後退し、景気と業績の悪化を食い止め、株主の財産と担保力を増やし、年金は危機的運用状況を脱出した。現在はまだ増資による設備投資までは行かないが、TOBによる競争力の強化が活発になってきた。TOBは株価を刺激し、株式市場の資金量を増やす効果がある。
(3)ニューヨーク市場はマネーの流れがわかりやすい。株式を売った資金は国債市場に退避するが、株価の調整が終わったと見ればすかさず株式市場に回帰する。債券市場には3.5兆ドル(320兆円)のMMFも待機している。上昇ピッチが急であったから、調整が多少長びくとしても、上昇基調に変化はないだろう。
(4)NY市場に比べると、東京市場はわかりにくい。特に政権を取った民主党首脳の発言が産業界の困惑を招き、外国人売りを誘発している。
(5)資本主義社会の資本とは株式である。株価は資本主義社会の未来を決する最も重要な指標である。民主党首脳に株価重視の政策を期待したい。

 III. 銘柄情報。
(一)シティグループとAIG。

(1)資産担保証券の評価損は金融市場の環境好転を受けて急減している。資産担保証券の世界最大の保有者であるシティグループの経営環境が好転した。
(2)これを受けて、米政府が資本注入によって筆頭大株主となったシティグループ株を売り出すと表明した。
(3)AIGを窮地に追い込んだCDS相場も急回復した。AIGは評価損の縮小を背景に政府保有株を自力で買い戻すと表明している。
(4)金融機関に対する政府出資金は大幅な利食いとなる。私が再三予想したとおり、評価損から評価益への大逆転が現実となった。
(5)両社の株価は急騰の後、利食い売りをこなし、現在2段上げを伺う位置にある。

(二)富士フイルムの T-705。

(1)富山化学は富士フイルムに買収されたが、開発中の新薬の臨床試験はそろって順調である。
(2)中でも、鳥インフルエンザの特効薬 T-705 は昨年フェーズIIを終了後、追加臨床を行っていたが、10月中にもフェーズIIIに入る。
(3)現在の新型インフルエンザはタミフルで凌げるが、鳥インフルエンザが大発生すれば、T-705 が不可欠の特効薬となる。
(4)さらに T-705 は、学会でB型肝炎、C型肝炎、エイズ等、広範囲の感染症に有効と報告されており、大型新薬に発展する可能性が高い。