2009/9/14

  2009年9月14日(月)
  I. 相場観
  II. 三洋電機

 I. 相場観。「価格は需要と供給の接点で決まる」。

(1)エコノミストは「景気が悪いのに」「業績が悪いのに」株価が上がるはずがないと批判する。彼らは古典経済学が確立した「価格(株価)は需要と供給の接点で決まる」という経済学のイロハを忘れたらしい。
(2)景気が悪ければ悪いほど、政府は財政投融資を増やし、中央銀行は金融をジャブジャブに緩和する。しかしマネーはまだ産業界に届かず、金融市場に滞留して国債、株式、商品の相場を循環的に押し上げている。株式を売った資金は国債に逃避するが、株価が短期的な調整を終えたと見るやすかさず株式市場に環流する。株式市場の資金量が減らないのだから、株価は下がらない。
(3)株式投資の実践的戦略を指揮する証券会社のストラテジストが、エコノミストと気取りで相場観を述べるのも不可解である。外国証券は先物市場でしのぎを削り、個人投資家は日証金の取り組みを見て投資する。すべての投資家が需給関係を重視している時に、プロ中のプロであるストラテジストが需給関係を軽視している。
(4)1920年代の大恐慌後にケインズが登場した時から、ケインズの財政理論は経済政策のバイブルとなり、人類は世界恐慌を克服することに成功した。今回、100年に1度の金融危機を回避できたのもケインズ理論の成果である。
(5)ケインズ以後、景気が悪化すると政府は必ず金融緩和政策を推進するから、「不景気の株高」現象が起こる。私は、3月以降の世界的な株高は典型的な「不景気の株高」であり、「需給相場」、「金融相場」、「過剰流動性相場」の色彩が鮮明だと思う。
(6)私は「不景気の株高」を大前提として押し目買いを主張して来た。私は現在も強気であるが、「不景気の株高」がいつまで続くかに注目している。景気と業績が好転すれば「金融相場」は「業績相場」に発展し、エコノミストは強気論を大合唱すると思うが、株価は逆に反落するリスクが生じる。景気回復の追い風を受けてマネーは金融市場から産業界に流出し、株式市場の資金量が減るからである。そのタイミングは半年以上先になると思うが、各国政府はぼつぼつジャブジャブ金融を打ち止めする時期を探り始めている。

 II. 三洋電機。
(一)TOBの認可は時間の問題。

(1)先週、独禁法の審査を行ってきた日本の公正取引委員会がパナソニックによる三洋電機TOBを正式に承認した。
(2)残ったのは11ヶ国中、米国、EC、中国の3ヶ国であるが、その3ヶ国も電池等の中核事業の審査を終了しており、認可は時間の問題となった。
(3)しかし11日付け日経は、パナソニックがECに非中核事業で2件の追加資料を提出したために、審査の終了が9月28日にずれ込む可能性があると報じた。
(4)真偽をパナソニックに問い合わせたところ、回答は次の通りであった。
 1. 日経報道はパナソニックからの情報ではない。出所は不明である。
 2. 認可に多少の遅れはあっても、3ヶ国の認可が降り次第、TOBに踏み切る。
 3. TOB価格はすでに発表したとおり131円である。
(5)TOBの告知期間は通常20日間だから、成立は10月になるだろう。
(6)一般株主へのTOB告知期間終了後に、パナソニックは三井住友銀行、大和証券、ゴールドマン・サックス3社との合意に基づいて、131円で売買を執行する。
(7)独禁法審査は9ヶ月に及んだが、主要な問題点はすでに解決し、TOBは時間の問題となった。

(二)大本命企業の実力と展開力。

(1)パナソニックによる三洋電機買収に対して、11ヶ国・地域が独占禁止法の見地から待ったをかけた。9ヶ月に及ぶ審査をクリアすることによって、両社は将来の市場支配力に「お墨付き」をもらった結果となる。
(2)日本電池工業会会長である三洋電機本間副社長は、電気自動車時代が本格的に到来すると予想される2020年に、自動車用電池市場の世界シェアで40%を目指すと表明している。
(3)世界の乾電池市場シェアで、三洋電機は1位、パナソニックは2位である。1位2位連合が成立すれば、技術力、資本力、実績から推定して、将来の自動車用電池の市場シェアで過半を制する可能性がある。
(4)電気自動車と並ぶ有望市場である太陽光発電で、三洋電機は電力転換効率世界1の記録を、連続して更新している。これまで太陽光発電を持たなかったパナソニックが今後その販売を全面的に支援する。
(5)パナソニックは三洋電機を傘下に収めるために推定で5,600億円を投入する。しかしパナソニックが社運を賭してクリーンエネルギー市場に本格的に参入するのは今からである。
(6)三洋電機は2011年3月までに2,900億円の設備投資を行うと表明しており、それだけでも競合他社の投資計画を桁違いに上回っている。パナソニックの後ろ盾を得て資金調達力も万全となる。
(7)独禁法の壁を突破して後顧の憂いを断った三洋電機は、クリーンエネルギー時代を代表する大本命企業となる条件を備えた。その圧倒的な競争力と雄大な展開力は世界の投資家を魅了せずにはおかないだろう。