2009/9/7

  2009年9月7日(月)

(一)相場観1. 「不景気の株高」が続く。

(1)相場の基調は依然として「不景気の株高」、或いは「金融相場」 である。誰も指摘しないが、「不景気だから株価が上がる」と認識しておかないと、景気が悪いのになぜ株価が上がるかが理解できず、エコノミストの弱気論に振り回される。
(2)各国の政府は100年に1度の不況を克服するために、目一杯に財政投融資を断行し、中央銀行はゼロ金利とジャブジャブ金融を続けている。しかし産業界の資金需要が乏しく、銀行の貸し出しは増えない。
(3)そこでジャブジャブのマネーは金融市場に積み上がり、株式市場と国債市場の間を往き来している。それゆえ、株価が上がれば国債が売られ、株価が下がれば国債が買われるのである。
(4)不景気でも、マネーをジャブジャブに放出すれば株式の需給関係が好転して、株価は上がる。これが「不景気の株高」、或いは「金融相場」である。「不景気の株高は」過去の歴史的な景気悪化局面でも常に経験した現象である。
(5)しかしエコノミストは株価を景気や企業業績で説明しようとするから、常に株価は高すぎると批判する。そして株価が少しでも反落すると「それ見たことか」とばかり弱気論が盛り返す。
(6)私は、3月以降の株価上昇は「不景気の株高」だから、今回も株価の下落は短的な調整で終わると思う。株式を売った資金は国債に移っただけで、金融市場から出て行かない。マネーはまた国債から株式に戻るだろう。
(7)上海市場も予想通り、短期的なガス抜きを終えて上昇軌道に復帰したと思う。

(二)相場観2. 「金融相場」と「業績相場」。

(1)財政投融資とジャブジャブ金融が実を結べば、景気と業績が好転する。その時「不景気の株高」が終わり、「金融相場」は「業績相場」に発展する。
(2)変化の徴候は次の形で現れるだろう。
  第1に、銀行貸し出しが増加する。企業が業績回復に自信を持てば銀行から借金して在庫投資や設備投資に踏み切るからである。
  第2に、金利が上昇する。産業界の資金需要が膨らめば、ゼロ金利時代は終わる。
  第3に、これが最も重要であるが、中央銀行は過剰流動性の回収を、政府は財政投融資の打ち止めを検討する。すなわち財政政策と金融政策を転換するための出口を探り始めるのである。
(3)これらの徴候が点滅する時は、景気と企業業績が本格的に回復する時だから、株式相場の基調は「金融相場」から「業績相場」に移る。
(4)この時、エコノミストの論調は強気一色となるが、株価は逆に反落する。景気は良くなるが、株式市場の資金量が減るからである。もちろん短期的な調整が終われば、株価は雄大な業績相場に発展する。
(5)しかし現実には、各国の政府と中央銀行はまだ「出口を探る時期ではない」、「ジャブジャブ金融を継続する」、と明言している。
(6)私は、金融政策の転換は早くても1年先で、それまでは「不景気の株高」が続くと思う。

(三)三洋電機のTOBが近い。

(1)8月31日に、パナソニックは三洋電機のTOBについて次のコメントを出した。
  第1に、独禁法をめぐる事前交渉は11ヶ国のうち7ヶ国で解決した。
  第2に、次回のコメント発表予定は10月31日であるが、残り4ヶ国の事前交渉が決着した時点で,即座にTOBに踏み切る。
(2)TOBが不可能になるという懸念は消滅した。今後の焦点はいつTOBが始まるかに絞られている。
(3)日経等の報道によれば、1. TOBは9月中に始まる。2. しかし関係会社の会計処理は下半期(10月以降)にずれ込む可能性がある。
(4)私はこれらの情報から、来週までにTOBが始まる可能性が高いと思う。
(5)TOBが完了すれば、パナソニックと三洋電機両社から、水面下で進行している共同プロジェクトに関する情報が一挙に開示されるだろう。
(6)独禁法の事前交渉が難航したのは、自動車用電池における両社の市場シェアがあまりにも高くなりすぎるからである。すなわち三洋電機の傑出した有望性が主要11ヶ国の政府によって証明されたと思う。

(四)シティとAIGは吹き値売りも。

(1)先週1週間の間にAIGが急騰、急落、急騰と乱高下した。
(2)AIGを窮地に追い込んだCDS(企業倒産をヘッジする指数)指数はピークの4分の1に下落した水準で落ち着いているにもかかわらず、米国で「AIGには10ドルの価値もない」というレポートが出たと言う。シティとAIGにはヘッジファンドの巨大なカラ売りが取り残されたという情報がある。奇怪な弱気レポートの背後にはヘッジファンドの焦りが見え隠れしている。
(3)シティグループを窮地に追い込んだ「住宅ローン担保証券」は、中古住宅市場の改善が鮮明になり、これまでに計上した評価損が評価益に逆転し始めた。
(4)私は両社の業績好転が続くと思うが、株価は投機筋の介入で乱高下している。吹き値は利食いも一策だろう。