2009/8/31

  2009年8月31日(月)

(一)続・三洋電機、シティ、AIGの日足。

<チャート1。三洋電機、シティ、AIGの日足。>
sanyo_city_aig

注1-- 三洋電機は2週間前に大きな窓を開けて急騰し、その後も高値を維持している。

注2-- シティグループは2週間で30%急騰した。

注3-- AIGは2週間で2倍以上に暴騰した。

注4-- 米国株の暴落、暴騰の背景には、売買仕法の違いがある。第1に、米国には値幅制限がない。第2に、欧米では借り株ができるから、大規模な売り崩しと踏み上げが起こりやすい。
(二)シティとAIGは金融不況克服の指標。

(1)この項は先週のクラブ9の続編である。
(2)私は過去一年間、シティとAIGを倒産の瀬戸際に追いつめた「証券化商品」と「CDS」の相場を追跡してきた。NYダウと証券化商品とCDSの連動性はきわめて高いから、NYダウの急回復に連れてシティとAIGの業績は大幅に好転し、政府出資金の返済は時間の問題だと思ったからである。
(3)そんな時に、AIGとは反対にCDSの「買い手」である三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大銀行が4〜6月期決算でCDSがらみの評価損を計上した。前3月期決算では評価益を計上していたから、4月以降にCDS相場が反騰に転じた結果である。
(4)即座に私は、世界最大のCDSの「売り手」であるAIGは4月以降に大幅な評価益を計上するに違いないと確信し、推奨銘柄に上げた。
(5)7月にはAIGが米政府出資金を返済するという情報が浮上したが、その内容は高収益の保険部門を分離上場し、その上場プレミアムを政府出資金の返済に充てるとするものであった。これを見たシティのアナリストが「保険部門を分離すればAIGの優良資産がなくなる」と主張して売り推奨し、株価が一時急落した。(チャートの赤マル参照)。
(6)しかし私は、CDS相場が反騰に転じたから業績は急回復するという主張を変えなかった。間もなくAIGが条件なしで政府出資金を返済すると表明し、チャートの通り株価が暴騰したのである。発行株式数の20%以上の借り株を用いてAIGを売り崩していたヘッジファンドが踏み上げを迫られたという情報も流れた。
(7)シティバンクが大量に保有する「サブプライムローンを含む証券化商品」もまた昨秋に80%も大暴落したが、現在は買い手不在から売り手不在に一変し、相場が急回復している。シティは保有証券を売らずに償還まで持続すると表明しているから、シティの政府出資金返済も時間の問題だろう。
(8)私が銀行世界1のシティと保険世界1のAIGを追跡し続けたのは、2社が政府出資金を返済した時、歴史的な金融不況は終息すると思ったからである。
(9)私は今後もシティとAIGの業績好転が続くと思うが、NYダウは一直線で上げ続けるわけではない。吹き値は利食いも一策だろう。

(三)三洋電機TOBあるか、それはいつか。

(1)表1。証券7社の目標株価。

表1

日 付
証券会社名
目標株価(円)
7月29日
 クレディ・スイス
220 
7月29日
 三菱UFJ
(173) 
7月30日
 みずほ
(173) 
7月31日
 ドイツ
100 
7月31日
 モルガン・スタンレー
131 
8月10日
 野村
130  
8月11日
 日興シティ
100  

注1-- 表1は大手証券7社が発行した三洋電機レポートの日付と目標株価である。

注2-- 日付は7月29日から8月11日に集中している。(チャートのピンク色部分参照。)

注3-- 三菱UFJとみずほはレーティング4と表示している。レーティング4は5段階評価の4番目で、売り推奨だから、私が目標株価を試算した。

注4-- ゴールドマン・サックスと大和証券は三洋電機の大株主だから、レーティングを避けている。

(2)強弱感の対立は相場の常であるが、今回の三洋電機のレポートは7社が弱気で一致していた。しかし1ヶ月後に三洋電機の株価はレポートの平均目標株価の2倍以上に急騰した。前後してGSユアサ、田中化研、戸田工業等の電池関連株が5〜6倍に大化けした。
(3)私は、7社のレポートは財務分析に偏りすぎて、公平ではないと思う。財務データは「過去の事実」に過ぎないが、投資家は金銭を賭けて「先見性」を競っている。これではレポートの目標株価は投資家の役に立たない。
(4)一旦レーティングを開始した証券会社は、継続性を要求される。次回のレポートで7社が目標株価をどのように修正するのか、興味を持って注目したい。
(5)さて、アナリストや投資家の見解がどんなに対立しても、正式にTOBがかかればその時形成された株価が唯一絶対の正解となる。そうなると、TOBが本当に行われるのか、行われるとすればいつになるのか、が問題となる。
(6)私は三洋電機佐野社長のコメントを重視している。佐野社長は1ヶ月前の決算発表の席で「独禁法問題は第4コーナーを回ったところ」と発言された。競馬場で第4コーナーを回れば直線コースで、正面にゴールが見える。そこからもう1週走るということはあり得ないから、私はTOBは近いと思う。