2009/8/17

  2009年8月17日(月)
  I. 相場観。10〜11月に調整も。
  II. 銘柄観。三洋電機。

 I. 相場観。10〜11月に調整も。
(一)不景気の株高(金融相場)について。

(1)私は終始一貫、現在の上昇相場は「不景気の株高(或いは金融相場)」だと主張して来た。不景気ゆえの株高(金融相場)と業績を買う業績相場は根本的に違う。
(2)特に今回のように100年に1度の金融危機が発生すると、政府は財政投融資を極限まで拡大し、中央銀行はゼロ金利とジャブジャブ金融を断行する。
(3)しかし政府がいくら金融を緩和しても、失業者が増えて消費が回復しないから、産業界は設備投資に慎重で、銀行も金を貸さない。
(4)そのため、ジャブジャブのマネーは金融市場に積み上がり、先ず株式市場に、次いで商品市場、不動産市場に流入する。ここまでの経過は私が予想した通りで、100年に1度の不況にもかかわらず、3月から現在までに世界の主要な株価は40%も急騰した。これこそまさしく典型的な「不景気の株高」、或いは「金融相場」である。
(5)しかるにエコノミストは、政府の統計や民間の調査データを精緻に分析して、景気と業績が極端に悪化している時に株価が上がるのは間違いだと、弱気論を大合唱した。
(6)しかしいくらエコノミストが批判しても株式や商品や住宅が値上がりするので、「景気と業績は水面下に沈んでいるが、赤字の幅が縮小している」という理由で渋々ながら強気論に転換した。
(7)8月に入ると弱気論を代表していたクルーグマン教授やグリーンスパン前FRB議長が、相次いで景気底入れ論を発表し、株高を容認した。かくしてエコノミストが一斉に強気論に転換した時、株価はすでに40%も高騰していたのである。
(8)エコノミストと日経は政府が発表する統計データを根拠に景気と株価を予測するから、紙面は常に弱気一色で、結果として投資家をミスリードした。統計データそのものが過去の事実だから、彼らの相場観は説得力はあるが結果論に過ぎない。未来は過去の延長ではなく、常に意外性に満ちている、と私は思う。
(9)投資家は先見性を競い、相場観を金銭によって決済するが、エコノミストは理論の正当性を競い、相場観に責任を持たない。ウォーレンバフェット氏のように経験豊富な投資家は、今回もエコノミストの批判と冷笑を無視して株価の底値を黙々と、断固として買い向かった。私は、ノーベル賞を受賞したクルーグマン教授よりもバフェット氏を目標にコラムを形成している。

(二)業績相場が始まれば、株価は下がる。

(1)ここへ来て景気と業績が好転する兆候が点滅し始めた。株価は半年先の景気を先見するという経験則からみても、株高は景気と業績の底入れを先見している。しかし私は、それゆえに株価は10〜11月に調整期を迎える可能性があると思う。
(2)企業業績を買う業績相場が始まれば、マネーの一部は株式市場から企業の在庫投資や設備投資に向かい、株式市場の資金量が減るからである。
(3)米FRBもジャブジャブ金融の出口(転換点)を探り始めた。FRBは先週、銀行が保有する国債を買い上げてマネーを金融市場に放出する政策を10月に終了すると発表した。現実には金融政策の転換は来年以降と思われるが、出口政策が議論に上ること自体が弱気の材料となる。
(4)政府もまた際限なく財政赤字を拡大するわけにはいかない。
(5)エコノミストが一斉に強気転換した点も大いに気になる。強気論が多数意見になると株価は過熱し、反落、調整のリスクが高まる。

(三)金融相場から業績相場へ。

(1)私は10〜11月に調整期が来ると思う。
(2)もっとも、相場が上昇ピッチを速めれば調整期は早くなり、適度に押し目を入れるようであれば調整は軽微で済む。
(3)私は弱気論に転換したわけでも、弱気を主張しているわけでもないが、金融相場から業績相場に発展するためには乗り越えなくてはならない壁があると思う。

 II. 銘柄観。三洋電機。

(1)三洋電機の前田副社長が決算発表時に表明した通りに独禁法問題が解決すれば、8月中にもパナソニックが三洋電機のTOBに踏み切る可能性がある。
(2)パナソニックが三洋電機を子会社とするために投入する資金量は5,600億円の巨額である。
(3)三洋電機は11年3月までに2,900億円に及ぶ大型の設備投資計画を発表しているが、パナソニックとの合意が背景にあると推定される。
(4)TOBが終了すれば電池業界1位と2位の大連合が成立し、三洋電機が2020年の自動車用電池市場における世界シェアを40%とした目標に信頼感が高まる。
(5)パナソニックは発電効率世界1の三洋電機の太陽光発電部門をテコとして、新規分野で大攻勢をかけるだろう。
(6)TOBが成立すれば、両社が水面下で進めている大型プロジェクトが次々に表面化するだろう。
(7)万一、パナソニックのTOBが不成立となれば、新たな三洋電機争奪戦が始まるだろう。21世紀には電池を制する者が電気自動車革命を制する企業となるからである。