2009/7/27

  2009年6月22日(月)
  三洋電機の研究。

(一)本間副社長発言の衝撃。

(1)三洋電機の本間副社長はロイター通信浜田記者のインタビューを受けて、電気自動車と太陽光発電に関する最新情報を一挙に開示した。インタビューの詳細は次項を参照されたい。
(2)16日午後10時にロイターの記事がインターネットで配信されると、翌17日に三洋電機は急騰して高値を更新した。
(3)インタビューは、私がクラブ9で連載中の三洋電機に関するレポートを裏付けているばかりか、同業他社の追随を許さないほどの圧倒的な独走態勢を固めていることが明かとなった。
(4)先週末にはGSユアサを始め、暴騰していた一群の電気自動車関連銘柄が一斉に反落、急落した。根拠の乏しい材料をはやして異常な人気相場を演じていただけに、今週以降も急落の後遺症を免れることができないだろう。
(5)先週の急落を契機として、電気自動車関連株は理想買いの熱狂が終わり、玉石を選別した正常な業績相場に転じるだろう。
(6)クラブ9推奨の三洋電機、川重、パナソニックは今週も、波乱を乗り越えて実力通り、主役となるだろう。
(7)次項で三洋電機本間副社長の発言を要約した。そのエキサイティングな内容こそ三洋電機自身が開示した正確な直近情報である。

(二)本間副社長発言の要旨。

(1)<2次電池の直近の需要>。3月末からケータイ、パソコン、カメラ等に搭載する製品が世界的に底打ちした。生産調整が終わり、在庫水準も正常化した。需要は3月末から急速に回復し、4、5月は対前年比80%に達した。2次電池部門の10年3月期売上高はプラスになる可能性がある。
(2)<ハイブリッド車向けのニッケル水素電池>。 生産は拡大一途で、2014〜2015年まで増勢が続く。
(3)<リチウムイオン電池の経営方針>。合弁によって特定自動車メーカーとの関係を強化すると、技術の進化が停止する恐れがある。当社は自力開発。自力投資で中立、全方位販売を目指す。世界の全自動車メーカーから受注することによって、ノウハウと販売量を底上げできるから、現在の経営方針がベストと確信している。
(4)<リチウムイオン電池の課題>。1. 出力密度(パワー)、2. エネルギー密度(容量)、3. 低温性能、4. 耐久性、5. 安全性、6. コスト、の6つの課題を同時にしっかり抑える必要がある。当社は独自の材料を加えて6つのバランスが保てる電池を開発した。自動車各社にサンプル出荷し、高い評価を受けている。
(5)<リチウムイオン電池の生産見通し>。保守的に見て、2015年には、新車に占めるハイブリッドカーの比率は5%に達する。そうなれば量産効果で償却負担が低下し、コストダウンが一気に進む。徳島と兵庫のハイブリッド車用リチウムイオン電池(現在年産12万台)の設備増強を急ぐ。
(6)<リチウムイオン電池の供給先>。トヨタ、フォルクスワーゲンを始め、米国系、欧州系、日系の自動車メーカーと共同で仕事を進めている。需要急増で、第3の工場をいつ建設するかが緊急の課題である。
(7)<ハイブリッドカーを含む次世代電気自動車世界シェアの目標>。2015年で25〜26%。2020年で40%が目標。世界需要は2015年に400万台。20年に600〜840万台を予想。すなわち2020年には年産330万台に激増する。
(8)<太陽電池の需要>。売上高が上ブレする可能性がある。

(三)独走態勢築いた三洋電機。

(1)6月8日付クラブ9で、私は次世代自動車用電池の競争力を、1に三洋電機、2にパナソニック、3、4がなくて、5にGSユアサ、と述べた。
(2)三洋電気は現在の独走態勢に加えて、2011年3月までに太陽光発電を含めて2,900億円の整備投資を断行する。GSユアサ以下の電池メーカーは単独で生き残ることが困難になるだろう。
(3)18日付産経ニュースは、トヨタがハイブリッドカーの需要急増を受けて、ニッケル水素電池の調達先に三洋電機を加えてパナソニック、三洋電機の2社に拡大すると報じている。
(4)トヨタとホンダのハイブリッドカーはすでに月間生産台数でそれぞれ2万〜3万台に達したと推定される。
(5)さらにトヨタはリチウムイオン電池搭載のハイブリッドカーを年内に発売すると表明している。電池は三洋電機が供給するだろう。フォルクスワーゲンとホンダも三洋電機からリチウムイオン電池を調達し、ハイブリッドカーでトヨタを追撃するだろう。
(6)どう転んでも三洋電機の市場シェアは拡大一途となる。本間副社長の2020年における市場シェア40%はきわめて保守的な予想だと私は思う。
(7)マイクロソフトとインテルがコンピューターの心臓部品で寡占状態を築き、コンピューター業界を支配する超高収益企業に発展したように、三洋電機は自動車用電池で寡占体制を築き、自動車メーカーを逆支配する可能性がある。

(四)パナソニックのTOBは7月か。

(1)19日付け産経新聞は、パナソニックが三洋電機のTOB後に実施される臨時株主総会で、取締役2名を送り込む方針を固めたと報じた。
(2)三洋電機の本間副社長は独禁法問題を解決したからこそ、ロイターに直近情報を一挙に開示したと思われる。
(3)私はパナソニックの三洋電機TOBを7月か、遅くとも8月と予想する。
(4)その時、1株132円でTOBに応じるのは当初の計画通り三井住友銀行、大和証券、ゴールドマンサックスの3社のみで、一般株主はTOBと無関係に売買を継続し、TOB終了後も三洋電機は上場を維持するという方向が改めて確認される。
(5)最近になって野村證券と三菱UFJ証券が相次いで三洋電機の弱気リポートを出すなど、不可解な情報が流れた。情報の混乱は独禁法問題に直面したパナソニックと三洋電機が株価を刺激する情報を極端に抑え込んでいたために発生したと思われる。独禁法問題の解決に目途が立てば、情報開示は正常化し、パナソニックも積極的に直近情報を開示するだろう。
(6)三洋電機、川重、パナソニックを注目銘柄に推すクラブ9の方針は不変である。