2009/7/21

  2009年7月21日(火)

(一)NYダウ、日経平均、上海総合の株価比較。

<NYダウ、日経平均、上海総合の日足。>
NY nikkei syannhai

(1)前回は主要3市場を週足で比較したが、今回は日足で比較したい。
(2)チャートを見れば一目瞭然、わずか7日間でNYダウは700ドルも急騰し、引け値では高値を大きく更新した。英、独、仏もそろって急騰した。
(3)上海に至っては、調整なんてどこ吹く風と、一直線に高値を更新し続けている。その結果、上海市場の時価総額は東京市場を追い抜いて世界第2位に躍進した。
(4)私は先週のクラブ9で、弱気論一色の日経を批判し、世界中で景気は水面下ながら着実に好転しており、株式は買いの好機だと述べた。
(5)米国の大手銀行は大型の引当金を積んだ上で大幅増益となった。米国の住宅も新規着工件数が伸びたから回復は本物だろう。米国では金融が国家の中枢を占める巨大産業であり、住宅は国民の最大の財産である。金融と住宅の復調は景気回復の最も重要な指標である。
(6)日本株は先週も低迷を脱しなかったが、製造業の復調と金融の安定は米欧を上回っている。今週は海外市場を急追して高値更新を狙うだろう。
(7)しかし三洋電機が予想外の深押しで読者にご心配、ご迷惑をかけた。(三)で私見を述べたい。

(二)自虐的弱気論者の杞憂(きゆう)を笑う。

(1)いつものことながら、エコノミストと日経は株価が反落するとたちまち弱気論が盛り返す。特に日本のエコノミストとマスコミは自虐的弱気論に汚染されている。
(2)自虐的弱気論者には一流大学出身の優等生が多い。彼らは統計データを精緻に分析して、GDPや失業率など、大半の景気指標が水面下に沈んでいる時に株価が上がるはずがないと確信しているから、株価が下がると「それ見たことか」とばかり拍手喝采し、安心するのである。
(3)自虐的弱気論者は日本ばかりか中国の猛烈な株高を見ると危なくて見ていられないから、「バブルだ」、「今にこける」と陰口をたたく。
(4)優等生の理論構成の最大の欠陥は統計データを重視して、統計データに表れないマネーの需給関係を軽視する点にある。
(5)確かに世界景気は100年に1度の大不況に直面し、恐慌必至の統計データが噴出した。しかしだからこそ世界の政府は結束して100年に1度の財政投融資を断行し、金融をジャブジャブに緩和した。
(6)それでも弱気論者は、いくら金融を緩和してもマネーは中小企業に届いていないと批判するが、だからこそ行き場を失った巨大なマネーが過剰流動性となって金融市場に滞留し、株式市場にあふれ出す。現在は典型的な「不景気の株高」である。
(7)世界的な「不景気の株高」をもたらした過剰流動性を4兆ドル(400兆円)と見る試算がある。400兆円といえば、GDP世界第2位の日本株を全部買い占めてもなお100兆円のおつりが残るほど巨大な資金である。
(8)「不景気の株高」は景気好転の重要な先行指標である。株価の上昇は産業界に設備投資の資金を供給し、国民の消費を刺激して、景気回復を支援する。
(9)弱気論者は「米国の大規模な国債増発がドルの暴落をもたらす」、「日本の大規模な増資が株式市場の需給関係を破壊する」などと批判するが、私は自虐的弱気論者の杞憂に過ぎないと思う。ちなみに「杞憂」とは古代中国の杞の人が、天が落ちて来る、地面が割れる、と思い悩んで眠れなかったという故事に由来している。

(三)三洋電気。

(1)三洋電機の株価に懸念が残るとすれば、4,000万株の増資新株がGSユアサの株価を圧迫し、電池関連株人気の水を差す場合だろう。
(2)しかし私はGSユアサの増資を高く評価している。資金需要の裏付けを持たない大型増資が横行する中で、GSユアサはリチウムイオン電池の設備に投資すると資金使途を明快に宣言した。日立やNECも大型の設備投資を表明しており、電池市場が突出した成長分野であることを証明している。
(3)もちろん三洋電機を電気自動車関連の本命と見る私の主張は変わらない。
 第1に、GSユアサが設備投資のために調達する資金が250億円であるのに対して、2011年3月までに三洋電機が予定している投資額は、太陽光発電を含めて2,900億円の巨額に達する。大手銀行からすでに2,000億円のコミットメントライン(いつでも使用可能な融資枠)を取得しており、パナソニックやトヨタの後ろ盾もある。
 第2に、日産、マツダ、三菱自動車等も電気自動車の普及に時間がかかると見てハイブリッド型への参入を表明している。ハイブリッド型電気自動車はトヨタとホンダが独占し、両社の年間生産台数は50万台ペースに急拡大している。両社ともニッケル水素電池とガソリンエンジンの併用で、電池は三洋電機とパナソニックが独占供給している。
 第3に、他の電池メーカーの設備投資はリチウムイオン電池に集中しているが、価格がニッケル水素に比べて2倍以上の250万円と高価な上、充電に10時間以上が必要である等、実用化までの障害が多い。トヨタもリチウムイオン電池車を2年後に発売すると発表したが、ガソリンエンジン併用のハイブリッド型で、生産台数は年間2万台と少量である。そのリチウムイオン電池でも三洋電気はダントツである。徳島工場の年産2万台に続いて、兵庫県で10万台の工場を建設中で、第3、第4工場の建設も検討中である。
(4)しかし弱点もある。
 第1に、営業利益は今期250億円、来期800〜1,000億円で、利益の絶対水準が低い。しかし三洋電機は事業を太陽光発電と電池の成長分野に絞り込んでようやく黒字転換に目途をつけた所である。今後の業績の変化率、成長力は抜群に高い。
 第2に、優先株の株式転換で発行株式数が18億株から60億株へ3倍に増える。しかし増加株式の大半をパナソニックが取得するから、需給関係は悪化しない。
(5)私は、パナソニックが巨額の資金を投じて三洋電機買収に乗り出したという事実を重視したい。世界には三洋電機を買収したい企業はいくらでもある。
(6)株価の絶対水準が低い点にも注目したい。GSユアサや古河電池等の電池関連株は1年で100円台から1,000円台に大化けした。
(7)三洋電気の本間副社長は日本電池工業会の会長である。電池市場はケータイ、パソコン、電気自動車向け等の新市場急拡大している。その素材もアルカリ、マンガン、ニッケルマンガン、リチウム、ニッケルカドミウム、ニカド、ニッケル水素、リチウムイオン、水銀、等様々で、形態と用途も多彩である。それらの多様な電池市場で三洋電機の技術力と市場シェアは傑出している。
(8)三洋電機は太陽光発電でも、世界最高の発電効率を連続して更新し、技術水準は世界1である。本間副社長は2020年に自動車用電池シェアで40%を目指すと述べているが、日本電池工業会会長の発言だけに重みがある。
(9)電気自動車市場は21世紀前半を通して確実に世界最大の成長分野となる。中でも技術開発の中核を占める電池で、三洋電機はトップシェアを確立し、10年後の世界シェアを40%と予想している。