(1)三洋電機の株価に懸念が残るとすれば、4,000万株の増資新株がGSユアサの株価を圧迫し、電池関連株人気の水を差す場合だろう。
(2)しかし私はGSユアサの増資を高く評価している。資金需要の裏付けを持たない大型増資が横行する中で、GSユアサはリチウムイオン電池の設備に投資すると資金使途を明快に宣言した。日立やNECも大型の設備投資を表明しており、電池市場が突出した成長分野であることを証明している。
(3)もちろん三洋電機を電気自動車関連の本命と見る私の主張は変わらない。
第1に、GSユアサが設備投資のために調達する資金が250億円であるのに対して、2011年3月までに三洋電機が予定している投資額は、太陽光発電を含めて2,900億円の巨額に達する。大手銀行からすでに2,000億円のコミットメントライン(いつでも使用可能な融資枠)を取得しており、パナソニックやトヨタの後ろ盾もある。
第2に、日産、マツダ、三菱自動車等も電気自動車の普及に時間がかかると見てハイブリッド型への参入を表明している。ハイブリッド型電気自動車はトヨタとホンダが独占し、両社の年間生産台数は50万台ペースに急拡大している。両社ともニッケル水素電池とガソリンエンジンの併用で、電池は三洋電機とパナソニックが独占供給している。
第3に、他の電池メーカーの設備投資はリチウムイオン電池に集中しているが、価格がニッケル水素に比べて2倍以上の250万円と高価な上、充電に10時間以上が必要である等、実用化までの障害が多い。トヨタもリチウムイオン電池車を2年後に発売すると発表したが、ガソリンエンジン併用のハイブリッド型で、生産台数は年間2万台と少量である。そのリチウムイオン電池でも三洋電気はダントツである。徳島工場の年産2万台に続いて、兵庫県で10万台の工場を建設中で、第3、第4工場の建設も検討中である。
(4)しかし弱点もある。
第1に、営業利益は今期250億円、来期800〜1,000億円で、利益の絶対水準が低い。しかし三洋電機は事業を太陽光発電と電池の成長分野に絞り込んでようやく黒字転換に目途をつけた所である。今後の業績の変化率、成長力は抜群に高い。
第2に、優先株の株式転換で発行株式数が18億株から60億株へ3倍に増える。しかし増加株式の大半をパナソニックが取得するから、需給関係は悪化しない。
(5)私は、パナソニックが巨額の資金を投じて三洋電機買収に乗り出したという事実を重視したい。世界には三洋電機を買収したい企業はいくらでもある。
(6)株価の絶対水準が低い点にも注目したい。GSユアサや古河電池等の電池関連株は1年で100円台から1,000円台に大化けした。
(7)三洋電気の本間副社長は日本電池工業会の会長である。電池市場はケータイ、パソコン、電気自動車向け等の新市場急拡大している。その素材もアルカリ、マンガン、ニッケルマンガン、リチウム、ニッケルカドミウム、ニカド、ニッケル水素、リチウムイオン、水銀、等様々で、形態と用途も多彩である。それらの多様な電池市場で三洋電機の技術力と市場シェアは傑出している。
(8)三洋電機は太陽光発電でも、世界最高の発電効率を連続して更新し、技術水準は世界1である。本間副社長は2020年に自動車用電池シェアで40%を目指すと述べているが、日本電池工業会会長の発言だけに重みがある。
(9)電気自動車市場は21世紀前半を通して確実に世界最大の成長分野となる。中でも技術開発の中核を占める電池で、三洋電機はトップシェアを確立し、10年後の世界シェアを40%と予想している。
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