2009/7/13

  2009年7月13日(月)

(一)米国、日本、中国の株価と景気。

<NYダウ、日経平均、上海総合の週足>

(1)上海総合は、世界的な株価暴落に逆行して昨年10月31日に底入れし、現在までに80%以上急騰した。株価は年内GDP8%台乗せを見事に先見した。
(2)NYダウと日経平均は上海総合に5ヶ月遅れて3月6日に底入れした。今年後半の景気回復を先見している。日米のチャートは似ているが、景気と業績の回復力は日本の方が強い。今後の株価の上昇力に響くだろう。
(3)中国は世界最大の貿易黒字を蓄積した。財政は健全である。中国の銀行は欧米の銀行の不良債権と無縁である。
(4)米国は多くの経済指標がマイナス圏を脱していないが、失業率と消費を除けば、水面下ながら改善している。
(5)欧米では金融が産業構造の中核を占めている。昨年米国の金融機関は軒並みに破たんの危機に追い込まれた。一時は金融恐慌の様相を呈していたが、大型倒産はリーマン・ブラザーズ1社に止まった。多くの銀行が政府の資本注入を受けたが、早くも返済を完了した大手銀行が続出した。今週には大手銀行の4〜6月期の決算発表が始まる。営業利益は黒字だが、大型の償却で最終利益は赤字となる。
(6)しかしその結果、オバマ政権が銀行の不良債権買い上げに準備した100兆円が5兆円で済みそうだという。銀行が自己資本を充実した現在では、今売るよりも償還まで持続した方が断然有利だと判断したしたからである。銀行経営の安定は米国経済にとって最大の好材料である。

(二)日本企業の過小評価を正す。

(1)日本の銀行は金融派生商品の被害を殆ど受けていないが、保有株式の評価損で巨額の赤字を計上した。日本の税法は評価損の償却を認める一方、評価益の温存を認めている。4月以降の株価急反発で評価益が急増し、銀行は節税しながら評価益を積み上げる結果となった。さらに大型増資を断行して自己資本を充実したから、融資を積極化して利益の拡大を狙うだろう。
(2)製造業も好調なアジア経済に支えられて在庫整理は一巡し、操業率が上昇している。設備投資の復活に注目したい。
(3)前期に多くの企業が空前の赤字を計上したが、日本の企業は世界ダントツの利益剰余金を蓄積している。例えばトヨタは12兆円の利益剰余金の他、不動産や株式で巨額の含み益を蓄積しているから、1兆円の赤字が2期続いたくらいではびくともしない。ハイブリッド型電気自動車の開発に全力を集中し、6月にプリウスは全車種中トップの販売実績を残した。米国のビッグ3とは財務内容で天地の差がある。
(4)日本のマスコミの円高恐怖論にも私は異論がある。日本の高度成長時代に、円は1ドル360円から80円に大暴騰した。しかしその間にソニーやパナソニックやトヨタやホンダなど、国際優良企業が輩出した。今日では輸出企業が為替相場をヘッジする方法はいくらでもある。為替をヘッジしない任天堂はドル建て決算を念頭に置いている。企業と株主が多国籍化した時代に、円高恐怖論を振りまくマスコミは時代錯誤である。
(5)米国で1994年に財務長官に就任したルービンはドル高待望論を主張して早期の景気回復に成功し、以後歴代財務長官の基本政策となった。強いドルを求めて世界のマネーが集まれば、米国の金利が下がり、株価が回復する。金利低下と株高は設備投資と消費を刺激するから、景気が好転する。
(6)日経は株価が下がるとすかさず弱気論が紙面を占拠するが、結果論は先見性を競う投資家の参考にならない。株式市場では、「人の行く、裏に道あり、花の山」が不滅の格言である。
(7)ただし、個別の業種と企業で明暗が分かれるのは当然である。私は太陽光発電と電気自動車が時代を代表するテーマだと思う。中でも電気自動車用電池で日本は独走態勢を固めた。そのトップを走る三洋電機は買いの好機を迎えたと思う。

(三)AIGの株価急落をわびる。

(1)6月29日のクラブ9で、生損保部門を分離して上場し、政府の資本注入の返済に宛てるという経営判断を評価して、値上がりを予想した。
(2)しかし高収益部門を分離すれば、本体の資産が劣化するという批判を浴びて株価が急落した。不明をお詫びしたい。
(3)それでも私にはなお異論がある。チャートの通りAIGを窮地に追い込んだCDS(企業の債務不履行を保証)指数は3月の554を高値に沈静化しており、大型の企業倒産は激減しているからである。

CDS