2009/6/29

  2009年6月29日(月)
  I  米VIX(恐怖)指数が沈静化。
  II AIGが政府の資本注入を返済。
  III 三洋電機は大相場の条件が成熟。

 I 米VIX(恐怖)指数が沈静化。

VIX

(1)VIX(恐怖)指数は米国の市場人気を占う上で、信頼度が高い指標である。
(2)チャートの通り、恐怖指数はリーマンブラザーズの倒産直後に80まで暴騰したが、先週末にはその後の最安値、25.9ポイントに急落した。
(3)ニューヨークダウは調整局面を迎えているが、投資家心理は強気に傾いており、上昇基調に不安はない。

 II AIGが政府の資本注入を返済。

(1)AIGは生保と損保部門を分離し、株式を新規に上場する。その上場プレミアムの一部を政府の資本注入の返済に充てる。
(2)子会社上場の情報を確認するために東京市場では7月2日まで取引を停止した。
(3)倒産株価の1ドル台脱出は近いだろう。

 III 三洋電機は大相場の条件が成熟。
(一)TOBの最終日程が固まる。

(1)毎日新聞ほか数紙は先週、パナソニックによる三洋電機買収の最終計画を次のように報じた。
(2)独禁法問題は難航していた米国との交渉が妥結した。
(3)TOBは遅くとも8月に実施する。20日間株式市場でTOB情報を開示した後、ゴールドマン・サックス、三井住友銀行、大和証券が保有する優先株を株式に転換し、パナソニックが1株131円で取得する。
(4)発行株式数は増えるが、株式市場の需給関係は不変である。
(5)TOB終了後に三洋電機はパナソニックの連結対象子会社となるが、上場は現状のまま維持する。
(6)先週の株主総会で大株主3社が派遣していた3副社長が退任した。三洋電機はTOB終了後に臨時株主総会を開催し、パナソニックから2人の取締役を受け入れる。
(7)独禁法問題の解決に目途をつけて、三洋電機本間副社長は26日の株主総会でも大胆に近況を述べた。TOB終了後は、独禁法問題から解放された両社から詳細な開発情報が続々と開示されるだろう。

(二)自動車用電池で独走態勢。

(1)三洋電機の本間副社長は、日本電池工業会会長である。先週の株主総会で、ハイブリッドカーを含む電気自動車の流通台数を60万台、10年後の2020年の流通台数を600〜840万台と予測した上で、そのとき三洋電機の自動車用電池の世界シェアが40%に達すると述べた。
(2)5月にはニッケル水素電池を搭載したハイブリッドカーの国内販売台数は新車販売の10%に達した。ニッケル水素の電池メーカーは三洋電機とパナソニックのみだから、両者合計の市場シェア100%となる。本間副社長はニッケル水素電池の今期の生産能力を従来計画の2.5倍から3.5倍に引き上げると述べた。ホンダの他トヨタ向け等が新しい販売先に加わる。
(3)7月には三菱自動車がリチウムイオン電池を搭載した電気自動車を発売する。日産自動車も来年電気自動車で追随する。しかし1.電池の価格が250〜300万円と高く、2.充電時間が10時間以上必要、3.充電設備の普及が困難、など制約が多く、三菱自動車は初年度1,500台。3年後3万台の予想に止めている。NECから電池の供給を受ける日産は電池をレンタルにして高コストを回避するというが、ユーザーのコスト高は解消できず、2010年に米国で10万台を販売するという予想には疑問が多い。
(4)一方、トヨタは年内にリチウムイオン電池のハイブリッドカーを発売する。ホンダ、フォルクスワーゲンもハイブリッドカーで追随する。ハイブリッドカーはガソリンエンジンを併用するから走行しながら充電できる。利便性の高さから、ハイブリッド陣営は販売実績で電気自動車陣営を圧倒するだろう。
(5)JPモルガン証券は2020年のハイブリッドカーの販売台数を1,128万台と予想。世界の新車販売に占めるハイブリッドカーの比率は13.3%に達し、少なくとも2020年まではハイブリッドカー中心になると予想している。(6月28日、日経)。本間副社長とJPモルガンの10年後の予想販売台数には開きがあるが、本間副社長は日本電池工業会会長として保守的な予想を立てたと推定される。
(6)三洋電機は全方位で大半の自動車メーカーに電池を供給するから、リチウムイオン電池でも圧倒的な市場シェアを取得するだろう。現在の生産台数はすでに年産12万台で独走態勢に入っているが、本間副社長は需要に不安は全くない、いつ第3の工場建設に着手するかを検討中だと語っている。市場シェアが高くなればなるほど生産コストは急低下するから、三洋電機の競争力は時間の経過と共に強化される。
(7)設備投資予想も三洋電機の独走態勢を裏付けている。佐野社長は2011年3月までに自動車用電池と太陽光発電に2,900億円を投資すると述べている。突出した投資計画はパナソニックとの共同事業と見れば、過大な負担とならない。

(三)三洋電機とGSユアサ。

(1)かねてから私は、自動車用電池の関連銘柄は玉石混淆で、銘柄選定に注意が必要だと述べてきた。これまでは理想買いであったから人気が先行したのは当然であるが、今や10年後の市場規模と市場シェアがほぼ鮮明となった。市場人気は理想買いから業績買いへ、大転換すると考えておくべきだろう。
(2)例えば、三洋電機とGSユアサでは、生産実績ですでに大差があり、その差は今後拡大一途をたどるだろう。
 第1に、自社開発、自社生産で全方位販売の三洋に対してGSは合弁生産である。将来の価格決定権、販売先の選択権、技術開発力で大きな格差が生じるだろう。
 第2に、三洋電機とパナソニックは、例えばケータイ電話用リチウムイオン電池で早くから圧倒的な競争力を確立した。鉛電池に発した自動車用電池メーカーに比べて技術蓄積の歴史に大差がある。
 第3に、三洋電機とパナソニックはニッケル水素電池で独走態勢を固めた。リチウムイオン電池でも三洋電機と連携するハイブリッド陣営は電気自動車陣営に販売力で大差を付けるだろう。市場シェアと販売量はコスト競争力に直結する。
(3)三洋電機こそ21世紀を代表する成長株の最右翼だという私の確信は調べれば調べるほど強くなる。
(4)唯一の懸念は収益力である。圧倒的な市場シェアを追い風に独自の価格政策を貫徹すれば三洋電機は必ず高収益企業に変身する。しかし三洋電機の経営には伝統的にファミリー経営の甘さがあり、経営不振に陥る原因となった。この点では、パナソニックの傘下に入る効果が大きい。パナソニック流の厳しい合理化と価格政策の洗礼を受けて早期に高収益体質を確立することを期待したい。