2009/6/8

  2009年6月8日(月)
  自動車用電池4社の実力と株価を大胆予測。

電池4社チャート
(一)自動車用電池の生産状況。

(1)ハイブリッドカー用のニッケル水素電池はパナソニックがトヨタに、三洋電機がホンダに供給しており、GSユアサと古河電池は生産していない。
(2)リチウムイオン電池搭載の電気自動車は、7月発売の三菱自動車に次いでトヨタが年内発売を表明した。三菱はGSユアサとの合弁で、トヨタは三洋電気から調達する。三洋電機は年産2万台の徳島工場に続いて、兵庫県で10万台の工場建設に踏み切った。ホンダの福井社長は電気自動車に否定的であるが、GSユアサと合弁でリチウムイオン電池の工場建設に踏み切っており、三洋電機からの調達パイプも維持するだろう。
(3)電気自動車は電池のみで走行する。三菱自動車のアイミーブは最大走行距離160キロで価格が495万円。前人気は高いが、価格がハイブリッドカー並みに低下し、プラグインスタンドが普及するまで販売台数は1,000台単位に止まるだろう。ユーザーも官公庁、郵便局等に限られるだろう。
(4)三洋電機は2011年3月までに自動車用電池と太陽光発電に2,900億円を投資すると発表している。設備投資の金額は突出しており、資金調達力と技術力と収益力に十分の成算を持っていると思われる。
(5)パナソニックの三洋電機買収の目標は太陽光発電にあるともいわれる。トヨタは新型プリウスのボディーに京セラ製の太陽光発電を搭載する。住宅用太陽光発電はリチウムイオン電池の充電システムと一体化した時、発電コストが大幅に下がり、本格的な普及期を迎えるだろう。
(6)自動車用リチウムイオン電池の製造コストは現状では1台150万円で、コストダウンのためには大量生産が必要である。この点でも三洋電機の競争力が突出しており、トヨタの価格設定が注目される。

(二)TOB近いパナソニックと三洋電機。

(1)パナソニックはトヨタのプリウスに、三洋電機はホンダのインサイトにニッケル水素電池を供給している。両者を併せた市場シェアが80〜100%に達しているため、独禁法に抵触する恐れがあり、パナソニックは三洋電機買収を延期した。
(2)しかしパナソニックと三洋電機のトップは相次いで7月にTOBを終了する予定だと表明した。日程から逆算して独禁法問題は6月中にも決着する可能性が高い。
(3)パナソニックは独禁法問題の解決を待って直近の開発情報を開示するだろう。株価の人気化も予想される。
(4)三洋電機はその時131円というTOB価格を払拭して、傑出した実力にふさわしい株価水準を模索するだろう。

(三)激増する販売量。

(1)トヨタのプリウスは5月の販売台数でホンダのインサイトを抜き、車種別でもトップに躍り出た。米国では1年半の受注残を抱えている。
(2)海外でもトヨタを追撃するのはホンダで、当面は2社の寡占状況が続くだろう。
(3)欧米、特に米国は国土が広大で長距離走行を必要とするから、プラグインの充電スタンドが普及するまでは、ハイブリッドカーの普及が先行するだろう。
(4)リチウムイオン電池搭載の電気自動車の開発でも、日本は独走態勢を固めている。
(5)米国のビッグ3と欧州の主要メーカーがクリーンエネルギー時代に生き残るためにはトヨタやホンダの技術的支援を必要とするだろう。中でも電池の需要は生産能力から見て三洋電機とパナソニックに集中するだろう。

(四)電池4社の業績と株価。

(1)チャートの4社の生産規模が具体化するにつれて、株価は理想買いから業績買いに移るだろう。
(2)現在の市場シェアと投資金額から競争力を比較すれば、1に三洋電機、2にパナソニック、3、4がなくて5にGSユアサとなる。
(3)自動車用電池と太陽電池はクリーンエネルギー追求の技術革新から生まれたから、景気循環の波とは関係なく、市場の急拡大が続く。電池メーカーは巨額の先行投資に耐えうる資金力が不可欠で、三洋電機とパナソニックの競争力がますます強まるだろう。
(4)GSユアサと古河電池は、合弁か、大手電機メーカーの傘下に入らない限り、自力による大型の設備投資は困難だろう。
(5)自力開発の三洋電気は価格と販売先を決定する上でフリーハンドがある。太陽光発電と併せて、1年後には世界中の機関投資家のポートフォリオに不可欠の銘柄となっているだろう。