2009/6/1

  2009年6月1日(月)
  I 三洋電機の研究・その4。
  II シティグループとAIG。

 I 三洋電機の研究・その4。
(一)第1の技術革新・蒸気機関の発明。

(1)18世紀初頭に英国のスコットランドでジェームズ・ワットが蒸気機関を発明した。
(2)英国は蒸気機関を用いて大量生産システムを構築し、産業革命を起こした。
(3)当時英国の人口は3,000万人に過ぎなかったが、7つの海を支配する史上最大の植民地帝国に躍進した。植民地の低賃金を用いて生産した綿花や羊毛を輸入し、綿織物や毛織物に加工して、世界中に販売し、繁栄を築いた。
(4)蒸気機関の燃料は石炭であった。

(二)第2の技術革新・T型フォードの開発。

(1)20世紀初頭に米国のヘンリー・フォードがT型フォードを開発し、流れ作業による大量生産の技術を開発し、安価な自動車を世界中に販売した。
(2)T型フォードは1908年から1927年までに、基本的なモデルチェンジなしで1,500万台を生産した。その後にこれを凌いだのはフォルクスワーゲンの2,100万台のみである。
(3)自動車の燃料はガソリンであった。米国のカリフォルニアやテキサスで相次いで油田が発見され、石油成金が輩出した。その中からロックフェラーを始めとする巨大財閥が誕生した。
(4)流れ作業の大量生産方式は他の産業に波及し、米国の圧倒的な競争力となった。2度の世界大戦を経て米国は世界の政治経済の覇者となった。
(5)鉄道と馬車に代わって自動車が普及し、全米で道路網が発達し、自動車修理業、ガソリンスタンド、ドライブ・イン、中古車市場、アフターパーツマーケットなどのニュービジネスが生まれた。
(6)都市から未開地まで、アメリカ人は自動車を不可欠とするライフスタイルを構築した。
(7)しかしT型フォードの開発以来100年にして石油が高騰し、大型車に集中したアメリカの自動車産業は厳しい不況に直面している。

(三)第3の技術革新・ハイブリッドカーの開発。

(1)21世紀の初めにトヨタとホンダが世界に先駆けてハイブリッドカーを開発、発売した。
(2)ハイブリッドカーはニッケル水素電池を用いた電気モーターで稼働し、脱ガソリン時代の幕開けを告げた。しかし現状ではガソリンエンジンを併用している。
(3)来年には第2世代のリチウムイオン電池で稼働する電気自動車が発売される。リチウムイオンの充電効率は2.3倍の向上し、ガソリンスタンドに変わるプラグインの充電スタンド等が普及すれば、ガソリンエンジンが不要となる。
(4)しかし現状ではリチウムイオン電池の生産コストは150万円で、実用化のためには技術革新と大量生産によってコストを大幅に削減する必要がある。
(5)将来、ガソリンエンジンを不要にすれば自動車の部品点数は10分の1近くに激減するという。

(四)太陽光発電とリチウムイオン電池。

(1)ハイブリッドカーに先駆けて住宅にも太陽光発電が普及し始めた。
(2)しかしまだ発電効率が低い。住宅は主として夜間に電力を消費するが、昼間の余剰電力を電力会社に売り、夜間電力を電力会社から買うシステムだから、償却期間が8年以上となる。
(3)もし昼間の電力をリチウムオン電池で蓄電すれば、24時間稼働に近づき、償却期間が大幅に短縮する。
(4)しかしリチウムイオン電池は発熱しやすい欠陥がある。これまで携帯電話で数件の発火事故を起こしたが、ここへ来て通産省は問題点をほぼ克服したと見て、住宅用設置の法律改正を検討している。
(5)自動車も車体に太陽光発電システムを組み込めば連続走行距離が飛躍的に伸びる。
(6)太陽光発電と電気自動車が普及すれば、人類は化石燃料時代を脱出し、本格的なクリーンエネルギーの時代に踏み出す。
(7)その太陽光発電でも三洋電機は最先端の技術を保持している。

(五)三洋電機とパナソニック。

(1)三洋電機とパナソニックはハイブリッドカーで圧倒的なシェアを占めている。トヨタのプリウスにはパナソニックが、ホンダのインサイトには三洋電機がニッケル水素電池を供給し、今年の生産台数は10万台を大幅に突破する勢いである。トヨタは他の車種でもハイブリッドカーの発売を表明している。
(2)しかし両社の生産量を合わせると世界シェアが100%に近いため、独禁法問題が浮上し、パナソニックの三洋電機買収に待ったがかかった。これに対してパナソニックの大坪社長は事前折衝によって問題点を解決しつつあり、7月までにTOBを終了できるだろうと述べた。また三洋電機を合併せず、連結子会社として現状のまま上場を維持すると表明している。
(3)次世代技術のリチウムイオン電池でも三洋電機は現在の年産2万台に加えて10万台の新工場の建設に踏み切った。
(4)パナソニックは独禁法問題を抱えて情報開示を控えているが、TOB終了後には直近の開発状況を一挙に開示するだろう。パナソニックの株価にも注目したい。
(5)リチウムイオン電池では、GSユアサがホンダ、三菱自動車と合弁で設備投資に着手したが、生産規模は三洋電機に遠く及ばない。
(6)三洋電機が自力で設備を構築している点が重要である。自社開発だから価格決定権を持ち、世界中の自動車メーカーに自由に販売することができる。将来の収益力と展開力で圧倒的優位に立つだろう。三洋電機にはパナソニックの後ろ盾がある点も重要である。
(7)三洋電機と提携しているフォルクスワーゲンは来年には日本でもハイブリッドカーを販売すると表明している。トヨタは再建後のGMに電気モーターのシステムを供給するという情報がある。

(六)三洋電気の実力と株価。

(1)三洋電機は経営資源を太陽光発電と自動車用電池の絞り込み、質量両面で技術革新の最先端に躍り出た。
(2)27日付日経は、三洋電機が金融機関6行と2,000億円の融資契約を締結したと報じた。しかし私は同時に2011年3月までの設備投資が電池と太陽光発電を中心に2,900億円に達すると報じた点に驚いた。2,000億円の協調融資はパナソニックとトヨタの後押しがあれば可能であるが、未知の分野に対する2,900億円の投資は技術力と収益力でよほどの成算がなければ実行できない。
(3)三洋電機は昨年まで、資金不足と経営不安のために第3社割り当ての優先株を発行し、三井住友銀行から社長を迎え入れてようやく窮地を脱したばかりである。短期間にこれほど変身した企業を私はこれまでに見たことがない。
(4)いかなる優良企業でも景気循環の波を免れることはできない。しかし電気自動車の開発競争は景気か悪くても止まることはない。三洋電機の成長力は景気循環を超えた歴史的な技術革新から生まれた。クリーンエネルギーの開発という世界人類共通の目標にも後押しされている。
(5)昨年、電気自動車時代の到来を先見した理想買いで古河電池やGSユアサが暴騰したが、わずか1年にして理想買いは業績買いに移った。パナソニックの後ろ盾を得た三洋電機は確実に主役の座を固めるだろう。
(6)ハイブリッドカーの周辺から日本電工等の人気銘柄が輩出している。人気銘柄の広がりは当然であるが、株価の騰落は避けられない。私は、1年という射程で見れば三洋電機は多くの機関投資家のポートフォリオに組み込まれて需給関係が好転すると思う。

 II シティグループとAIG。

(1)シティグループは余裕をもってストレステストをクリアした。
(2)自己資本不足を指摘された各銀行はすでに90%以上の資本を自力で調達した。
(3)間もなくバッドバンクによる証券化商品の買い上げが始まる。入札価格はストレステストで精査された銀行の簿価を上回る可能性が高い。
(4)新たな不良債権の発生がなければ、1〜3月期同様に高水準の期間利益がそのまま決算に反映する。
(5)AIGを倒産の瀬戸際に追いつめたCDS指数は急速に沈静化した。
(6)証券化商品やCDSの相場はNYダウや恐怖指数との連動性が高い。NYダウの2段上げが目前となり、恐怖指数はリーマンショック以前の水準に低下した。
(7)シティとAIGの2段上げも近いだろう。