2009/3/9

  2009年3月9日(月)

(一)高度成長時代を迎えた中国。

(1)昨年末まで、上海総合は最も厳しい暴落に直面した。
(2)しかし、年初来の上昇幅は世界最大で、2月17日までに30%の大幅高を記録した。
(3)その後2月末まで短期の押し目を入れたが、3月に入ると世界中の株価の急落を尻目に、再度独歩高を演じている。
(4)さもありなん。今年の中国経済は世界の景気後退を尻目に、すでに上昇局面に入った。温首相は先週、全国人民代表者会議で内需主導による8%成長堅持の目標を掲げた。58兆円の財政投融資と15兆円の減税のほか、必要に応じて追加の財政出動をも辞さない構えである。
(5)中国は黒字財政を維持する一方、日本を抜いて世界1の外貨保有国に躍進した。銀行は健全で、巨額の評価損もなければ資産の毀損もない。中国には世界1の12億人の人口と、世界1広大な領土がある。
(6)現在の中国は高度成長期入りした当時の日本と似ている。日本は1940年代に田中角栄が日本列島改造論を掲げて全国に高速道路網と新幹線網を構築する大事業に乗り出した。長期にわたる高度成長によって日本は世界第2位の経済大国に躍進し、世界の経済史上の奇跡と賞賛された。
(7)中国は今、日本の田中角栄時代と同様に高度成長時代に入った。世界1の人口や広大な国土面積等から見て、中国の潜在成長力は最盛期の日本をはるかに上回るだろう。欧米の景気後退で輸出が減少しても、内需主導で8%成長を実現することは十二分に可能である。

(二)21世紀はアジアの世紀。

(1)18〜20世紀は欧米の時代であった。欧米の列強は全世界を植民地化し、植民地を収奪することによって、富と繁栄を築いた。植民地化を免れた日本は欧米以外で唯一の経済大国に躍進した。
(2)日本は第2次世界大戦の敗戦国となったが、アジア諸国は大戦を契機として一斉に独立を果たした。日本の軍事政権が掲げた「大東亜共栄圏」の構想は現実となったのである。アジアに続いて中近東、中南米、アフリカの植民地が次々に独立した。
(3)20世紀後半に中国の政治は激変した。異民族支配の清朝を倒して独立を果たした中国は、内戦を経て共産党が政権を掌握した。21世紀に入ると香港、マカオを奪還して、資本主義経済を導入し、10%成長を軌道に乗せた。
(4)中国共産党の一党独裁を批判する声が高いが、広大な領土、12億人の人口、数え切れない多民族を統率する上で、ある程度の独裁権力は必要悪である。
(5)毛沢東が人民軍を組織して中国大陸の支配権を中国人の手に奪還するまで、2000年以上の永きにわたって漢、唐、元、清等の異民族が中国大陸を支配した。その毛沢東が紅衛兵を組織して数千万人のインテリと上流階級を殺戮した頃に比べれば、現在の共産党政権は自由と民主主義を飛躍的に普及させた。権力の世襲もなく、政権交代はスムースに行われている。一足飛びに欧米並みの自由社会を要求するのは中国の歴史と現実を無視した空論である。
(6)中国の近代化と工業化はアジア全域に波及している。
(7)欧米の金融と景気が破たんした現在も、日本企業のインド進出は加速している。インド経済はこれまでの8〜9%成長から減速するものの6%成長は可能である。人口10億人のインドも内需主導の拡大成長期期に入っている。

(三)欧米は外需、アジアは内需。

(1)先進国の中でも、日本の主要企業は突出して潤沢な内部留保を蓄積している。
(2)破たんした欧米に比べれば、日本の金融機関の財務内容は桁違いに健全である。
(3)円はすべてのアジア通貨に対して大幅高となった。
(4)これらは日本企業がアジア市場に投資するための絶好の条件である。
(5)製造業はもちろん、銀行や保険も欧米企業が破たんの回避に追いまくられている今こそトップシェアを確保する好機である。セブンイレブンや資生堂は中国の消費社会で独自のブランドを確立した。

(四)上海総合の指標性に注目。

(1)欧米は今厳しい金融危機、経済危機に直面しているが、危機を克服するための政府と中央銀行の支援体制も急速に具体化している。欧米の株価はセリングクライマックスの様相を呈しており、小さなきっかけにも反転上昇しやすい状況にある。
(2)しかし欧米経済は成熟期に入った。唯一の成長分野であった金融が破たんした現在では、金融不安を克服した後に新たな繁栄を築くための成長エンジンが見当たらない。
(3)これに対してアジアには世界人口の3分の2を占める30億人が集中し、教育水準が高く、人々は勤勉で、政治も安定している。30億人の超巨大市場は高度成長期の入り口に達したばかりで若々しい。成長の第1エンジンは中国。第2エンジンはインド。成長を支援し、補完するエンジンは日本である。
(4)欧米の経済危機を尻目に、第1エンジンの中国は早くも内需主導による8%成長に自信を示している。中国1国で欧米の総人口を上回る12億人を擁し、内需によって経済を活性化することは十二分に可能である。人口10億人を擁する第2エンジンのインドも所得水準が上昇し、内需が活性化する段階に達した。
(5)30億人市場がもたらす物流は巨大で、工業用原材料市況や海運市況はすでに底入れが鮮明である。自動車の潜在需要一つを見ても、アジア以上の成長市場は存在しない。
(6)日本はアジアの中の1国である。中国はすでにアメリカを抜いて日本最大の貿易相手国となっている。
(7)日本のマスコミは欧米の金融不安と景気後退の報道一色で、投資家は株価の崩壊におびえているが、アジア市場に目を移せば風景が変わる。欧米が受けた打撃の奥深さに比べれば、アジアと日本の打撃はかすり傷に過ぎない。
(8)日本はアジアの中の1国である。日本にとって欧米市場は外需であるが、アジア市場は内需である。上海総合の株価の指標性に注目したい。