2009/3/2

  2009年3月2日(月)
  株価対策のインパクト。 

(一)株式市場へのインパクト。

(1)株価対策の資金量は不明である。先週、日経は20兆円と報じていたが、もし20兆円規模となれば日経平均は9,000円を回復するだろう。
(2)これまでの構想では銀行と企業の持ち合い株式を買い上げる予定であったが、今回の構想では市場経由の直接買い付けだから、インパクトはケタ違いに大きい。3月末に日経平均株価が9,000円を回復すれば金融機関の評価損は消滅する。
(3)日本の上場株式の時価総額は240兆円に落ち込んでおり、浮動株は半分の120兆円程度だろう。120兆円市場から20兆円を吸い上げれば、平均株価は30%上昇するだろう。株価対策の金額がもっと小さくなっても、それなりの効果は必ず現れる。
(4)第1に、外国人投資家は大幅売り越しが続いていたが、株価対策が具体化すれば、日本株を持たないリスクが増大する。買い越しに転じる可能性もある。
(5)第2に、最近では公的年金が外国人売りを吸収しているから、需給関係は悪化していない。
(6)第3に、個人投資家は信用取引の売りと買いが拮抗している。政府が株価対策を断行すれば、売り方は買い戻さざるを得ないだろう。
(7)第4に、今3月期決算で市場最大の赤字を計上する企業が続出しているが、株式の評価損と為替差損の赤字が大きい。3月末に日経平均が上昇し、為替が円安に傾けば、赤字幅は縮小する。

(二)日本企業の実力と競争力。

(1)日本企業は巨大な含み益を蓄積しているが、株価収益率による国際比較では、圧倒的な競争力が全く評価されない。
(2)例えばトヨタは12兆円の利益剰余金を蓄積している。1兆円程度の赤字はかすり傷で、赤字を来期に繰り越さないばかりか、来期には節税効果が利益を押し上げる。トヨタの来期の黒字転換と大幅増益は必至だろう。
(3)銀行と企業の株式持ち合いは日本だけの特徴である。日本の企業は巨額の利益剰余金や株式・不動産の含み益を蓄積しており、実体価値が株価を大幅に上回っている。このような企業は海外のハゲタカによる買収、乗っ取りの絶好の目標となる。株式の持ち合いは最大の企業防衛策となる。
(4)日本企業は決算で保有株式のうち評価損のみを計上するから、評価益は年々増加傾向をたどるが、株主権が強い欧米では含み益を配当で還元することを要求するから、含み益が貯まらない。
(5)日本企業は製品や仕掛品の在庫の評価を目一杯下げて償却するが、このような徹底的なリストラは潤沢な内部留保があればこそ可能となる。赤字に陥ると政府支援を求める外国企業とは財務内容に天地の差がある。
(6)売り上げが25%落ちた企業は50%の減産を断行するから、在庫調整を3月末までに完了し、4〜5月には増産に転じる企業が続出するだろう。トヨタと日産はすでに5月増産を表明しており、半導体、電子部品、海上運賃、非鉄市況等に反騰の兆しが見える。

(三)政治へのインパクト。

(1)資本主義社会では、株価の下落は百害あって一利もない。株価の上昇は政治的、経済的、社会的、心理的な閉塞(へいそく)感に大きな風穴を開ける。
(2)株価対策に投入する資金は税金の無駄遣いではない。政府と日銀は過去の株価対策で常に大幅な利益を計上している。
(3)株価の上昇は、企業の担保力を補強し、資金調達に道を開き、国民の消費を刺激するから、産業界はもろ手をあげて歓迎する。
(4)株価が上がれば麻生内閣の人気が上昇し、政局不安が後退するだろう。
(5)景気・業績の悪化と株価の下落は世界中で同時に発生しており、麻生内閣の責任ではない。しかし株価の暴落を阻止することは、政府に課せられた重要な責任である。株価対策で成功すれば、麻生内閣は政権浮揚へ、大きなインパクトとなるだろう。