2009/2/16

  2009年2月16日(月)

(一)ヘッジファンドの売り圧力。

チャート1・日経平均週足


チャート2・ニューヨークダウ週足

(1)昨年後半に世界中の株価が同時に大暴落したが、ヘッジファンドの売りが最大のインパクトとなった。
(2)ヘッジファンドの1回目の解約の受付は12月末で、解約のための精算業務の期日は45日前の10月15日であった。
(3)ヘッジファンドの巨大な売りを浴びて日経平均は10月末に1番底を形成したが、ニューヨークダウは11月末が1番底となった。
(4)ヘッジファンドの2回目の解約の受付は今年の3月末で、清算の期日は45日前の2月13日であった。
(5)来週以降にヘッジファンドの売り圧迫が解消すれば2番底の期待が生まれる。NYダウと日経平均の行方に注目したい。
(6)ヘッジファンドの解約売りと、株価の底値は必ずしも一致しないが、両社の相関関係はきわめて高いので、その背景を次項で述べたい。

(二)ヘッジファンドの盛衰。

(1)ヘッジファンドは投資銀行が産み落とした鬼子である。金融市場の資金量が投資銀行のデリバティブによって巨大化し、バブル化したように、ヘッジファンドも投資銀行の支援を受けて巨大化し、バブル化した。
(2)投資銀行はヘッジファンドを次々に組成し、資金を無制限に供給し、先端的な運用ノウハウを供与した。
(3)ヘッジファンドは売り買いを同時に執行して株価のサヤを確保するなど、独自の運用手法を開発して高い運用実績をあげたから、年金やオイルマネーが争って投資した。ピークの資金量は1,000兆円と噂されたが、過半は借入金であったと推定される。
(4)昨年6月にはサブプライムローン関連証券が暴落し、その証券を組成、販売していた投資銀行の足下に火がついた。資金繰りに窮した投資銀行は傘下のヘッジファンドに自立を促し、融資した資金の回収を急いだ。
(5)ヘッジファンドは巨額の借入金を返済するために株式の大量売却に踏み切った。投資家からも解約申し込みが殺到した。世界中の株価が同時に暴落した経過は前項のチャートの通りである。
(6)ヘッジファンドの資金量はピークの1,000兆円が年末には4分の1に激減したと見られる。解約よりも借入金返済のための売りが大きかった。
(7)ただしヘッジファンドの大部分は売り、買い両建てだから、その差額だけが株式市場の売り要因となるに過ぎない。
(8)2回目の解約は1回目に比べればはるかに規模が小さいから、売り圧力も小さい。ヘッジファンドが株式の需給関係に与える影響力は、今後はさらに低下するだろう。

(三)投資銀行の破たんと復活。

(1)サブプライムローン関連証券の暴落をきっかけに、投資銀行が組成、販売したデリバティブ(金融派生)商品が次々に暴落し、破たんした。
(2)ついにはリーマンブラザーズが破たんした。その他の投資銀行は生き残りを賭けて大手銀行に救済合併を仰ぎ、或いは自ら銀行に変身してFRBの監督下に入り、FRBの資金供給を受けてようやく窮地を脱した。投資銀行という名の卸売り専業の証券会社はすべて消滅した。
(3)しかし投資銀行が蓄積した人材とノウハウは消えない。三菱UFJ銀行や野村証券は投資銀行の苦境を好機と見て、そのノウハウや人材を取得するために大金を投じた。
(4)瀕死の重傷を受けたと見られたゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、バンクオブアメリカが、早くも政府の資本注入を返上する意向を示している。経営のフリーハンドを奪還するためである。
(5)金融機関の中でも投資銀行は国家に対する忠誠心が希薄で、「飽くなき利益を追求」したあまり、金融市場を破壊し、厳しい社会的批判を浴びた。
(6)しかし、複雑骨折したデリバティブを解きほぐし、金融市場の秩序を再構築するためには彼らの頭脳が不可欠である。いま金融市場に蔓延している弱気論、悲観論、消極論からは、革新的な思想や斬新なノウハウは生まれない。「飽くなき利益追求」こそ、資本主義社会を発展させるエネルギー源である。
(7)投資銀行の頭脳が復活再生する時こそ、金融市場、株式市場が復活再生する時だと私は思う。