2009/2/2

  2009年2月2日(月)

(一)バークレイズ銀行の暴落と暴騰。

チャート1:バークレイズ銀行(英)の日足

(1)1月に世界の株安をリードしたのは銀行株であった。
(2)中でも欧州系銀行には業績悪化の情報が入り乱れてヘッジファンドのウリ目標となった。チャートでバークレイズ銀行の暴落暴騰をご覧頂きたい。
(3)英国政府はバークレイズに資本注入を打診したが、バークレイズは資金繰りに問題はないと断った。
(4)バークレイズの自信ある対応を見て、株価は1日で70%も急騰し、さらに1月23日の最安値から28日の戻り高値まで、立ち会い日数3日間で2.5倍に暴騰した。
(5)値幅制限があり、借り株が禁止された日本では起こりえない暴落暴騰であった。
(6)このような底値波乱は世界1のシティバンクにも起こる可能性がある。

(二)バッドバンク設立とシティバンク。

チャート2:シティグループ(米)日足

(1)オバマ新政権は新たにバッドバンク構想を固めている。バッドバンク設立の狙いは次のごとくだろう。
(2)FRBは資金をジャブジャブに放出しているが、銀行に滞留して産業界に回らない。そこで銀行が抱えているデッドストックを政府が買い上げれば、資金は銀行から産業界にあふれ出す。
(3)銀行のデッドストックとなっているサブプライムローン関連証券は昨年10〜11月にAA格債でさえ80%も大暴落した。銀行はすでに評価損を償却しており、その後は売買がなく、気配値もない。
(4)相場は下げすぎと見て、米政府は将来の値下がり損の補填を保証しているが、さらに踏み込んで買い上げてしまえばサブプライム問題に片が付く。
(5)問題は買い上げ価格である。低ければ銀行は売らない。高ければ政府が批判を受ける。そのためにブッシュ政権は買い上げ構想を棚上げして資本注入に切りかえた。
(6)オバマ新政権のバッドバンク構想が実現すれば、政府の買い上げ価格を下限とするサブプライム関連証券の流動化が期待できる。
(7)世界1のシティバンクは世界1の評価損を計上し、株価は歴史的な底値圏に売り込まれている。バッドバンク設立後の株価に注目したい。

(三)減少した米中古住宅在庫。

(1)12月の中古住宅の流通在庫は6%増加の事前予想をくつがえして12%の大幅減少となった。
(2)過去2回のクラブ9で私は、米国の住宅市場は改善に向かうと予想した。根拠は次の如くであった。
 1. 米国の人口は年率300万人ペースで増加しており、住宅需要が旺盛である。
 2. 昨年、政府は住宅ローン2社を国営化し、次いで年末にFRBが国営2社が保有する住宅ローン債権の買い上げを開始した。
 3. その結果、昨年12月に住宅ローンの金利が史上最低水準に低下した。
 4. 住宅ローンの新規申込件数が急増した。
(3)同時に私は、住宅市場は次の順序で回復に転じると予想した。
 1. 住宅ローンの新規申込件数が増える。
 2. 中古住宅の流通在庫が減少に転じる。
 3. 住宅価格が底入れする。
 4. 最後に、新規着工件数が増える。
(4)住宅市場は予想の第1段階から第2段階に進んだと私は思う。
(5)底が見えないと言われている住宅市場で、政府とFRBのてこ入れ策が機能し始めた点に注目したい。

(四)米国の自動車需要も回復が近い。

(1)米国のビッグ3を含む世界中の自動車メーカーが、米国の今年の新車販売を1,000万台と予想して一斉に大減産に入った。
(2)しかし私は現実を無視した弱気予想だと思う。米国では2億5,000万台の自動車が日常生活のゲタとして使用されている。年間1,000万台しか売れなければ買い換え需要は25年に1度という非現実的な数値になる。
(3)弱気論は重要な事実を見落としている。
 1. GMの金融子会社であるGマックは資金繰りが悪化して昨年の年末にはGMの新車に6%しかローンを提供できなくなっていた。
 2. ローンの金利は年率12%という高率であった。
(4)この問題は住宅ローン2社の国有化と同様に、すでに解決された。
 1. 政府はGマックに資本を注入した。
 2. FRBはGマックに資金を供給すると表明した。
(5)Gマックは自動車ローンの金利を大幅に下げて、潤沢なローンを提供するだろう。その結果、販売が回復すると同時に、在庫整理が急速に進むから、米国の自動車の需給関係は早期に改善するだろう。

(五)相場観。

(1)今週私は、米国の基幹産業である金融、住宅、自動車で改善の指標が点滅していることを指摘した。
(2)減産、人員整理、円高と、産業界を取り巻く情報は悪材料一色である。今3月決算の予想も赤字転落、大幅減額修正が続出している。
(3)しかし株価はこれらの悪材料を折り込みつつある。
(4)不況が深刻な業界ほど生産調整が急で、在庫調整も早くなる。業績悪化が著しい半導体関連でもエルピーダメモリや東京エレクトロン等は下値抵抗力を強めている。
(5)バラ積船の海上運賃は12月の安値2,000ドルから1万8,000ドルに急上昇した。春節明けの中国の財政出動に注目したい。