2009/1/26

  2009年1月26日(月)
  日米のピンポイント金融に注目。 

(一)急騰した日本の不動産投信(リート)。

チャート1・日本ビルファンド(日足)



チャート2・ジャパンリアルエステート(日足)

(1)チャートの2銘柄を含めて、不動産投信は先週末の2日間にそろって急騰した。
(2)急騰のきっかけは22日午後2時に発表した日銀の政策決定会合の内容である。コメントの末尾に「銀行が持ちこむ担保適格銘柄に不動産投信が発行する債券を加える」と記載されており、その意外性に不動産投信が鋭く反応したのである。
(3)私は金融政策が総論からピンポイントの各論に踏み込んだことを示す重要な指標だと思った。
(4)第1に、これまでは日銀がいくらジャブジャブに金融を緩和してもマネーは銀行に滞留して産業界に流れなかった。中でも不動産は資金不足のために倒産が集中した最大の不況業種であった。優良物件でも利回りが8〜9%に上昇し、相場が暴落していたから、不動産投信が発行する債券を日銀が担保に取れば、不動産投信は優良物件を買い付けてファンドの魅力を高める好機となる。
(5)第2に、銀行融資を断たれた不動産業界にとって、不動産投信を経由して流入する資金は干天の慈雨となる。不動産の流動化に目途が立てば銀行は融資を再開し、倒産の連鎖が終息するきっかけとなる。
(6)第3に、不動産投信の急騰を評論家は無視したが、投資家は即座に買い上がった。変化の兆しは小さいが、私は日銀の英断と株価の先見性を評価したい。

(二)不動産株と損保株に注目。

(1)不動産業界で倒産が続出したとはいえ、不動産投信や大手不動産会社が保有する不動産は利回りが高く、収益力も安定しており、不況の影響が軽微である。三菱地所は値上げによる来期業績の好転を表明している。
(2)資金繰りに心配がない三菱地所、三井不動産、住友不動産、ダイビル、東京建物、東急不動産等の優良株でも空売りが急増し、極端な株不足となり、逆日歩が点滅している。不動産投信の人気が大手不動産株を刺激する可能性が高い。
(3)ネクスト(2120・マザーズ)は不動産情報検索サイトの新興企業である。不動産を持たず、無借金の成長株で、クラブ9でも推奨したが、不動産関連のビジネスというだけで暴落していた。しかし先週末には2日連続でストップ高を演じた。不動産関連は小型株にも再評価の動きが見える。
(4)24日付日経は、政府が3月までに銀行以外の一般企業にも公的資金を注入すると報じている。生損保も対象となるだろう。
(5)折から、損保業界は大規模な再編成に乗り出した。三菱グループに次いで三井住友グループにも再編の動きがある。資金不足に陥った海外勢に対して日本勢はシェアを伸ばす好機を迎えている。損保株にも注目したい。

(三)米国におけるピンポイントの金融政策。

(1)政府・日銀の金融政策が総論から各論に移った。米国でも昨年末に超巨大市場の住宅と自動車でピンポイント政策が具体化した。
(2)米国には2億5,000万台の自動車が走っている。ビッグ3は再建案で今年の新車販売を1,050万台と予想しているが、自動車を日常生活の必需品とする米国人が25年間も買い換えを我慢できるはずがない。GMの金融子会社であるGマックへの資本注入をきっかけに自動車ローンの融資枠が拡大して、新車販売が急回復するだろう。
(3)世界中の自動車会社が大幅減産と人員整理を競っており、在庫調整が急ピッチで進んでいる。ビッグ3の販売増も夢ではない。
(4)政府が住宅ローン2社を国有化し、FRBはその2社が保有するローン債権の買い上げに踏み切った。住宅ローンの金利が低下し、融資枠が拡大したから、年末には新規申請件数が48%も伸びた。
(5)米国の人口は年率300万人ペースで増加し、住宅需要は年々拡大している。低金利の住宅ローンを潤沢に供給すれば流通在庫が縮小し、住宅価格の底入れが期待できる。
(6)オバマ新政権はビッグ3の救済を急ぎ、住宅に対する大がかりな追加支援策を予定している。さらに金融機関の保有資産の肩代わり、クリーンエネルギーの開発、道路建設等に大規模な予算を計上する。
(7)景況悪化は深刻であるが、財政、金融政策も総論から各論に移った。特定業種に対するピンポイントの支援策に目を向ける時だと私は思う。