2009/1/13

  2009年1月13日(火)

(一)フォルクスワーゲン買収の衝撃。

チャート1 フォルクスワーゲンの株価

(1)昨年10月27日、ポルシェ財閥による買収が表面化し、フォルクスワーゲンの株価は2日間で、3.5倍に大暴騰し、瞬間風速で時価総額世界1のエクソンモービルと肩を並べた。
(2)買収した株式は74%で、ニーダーザクセン州の20%を併せると浮動株は6%しかない。
(3)これに対してヘッジファンドの空売りは12%に達していたが、借り株を用いて売り込んでいたから、空売りの実体が見えなかった。
(4)ポルシェ財閥が即座に持ち株を放出したから決済はできたたが、ヘッジファンドの損失は兆円単位で、倒産したファンドもあった。
(5)1月5日、ドイツ第5位の富豪メルクル氏が鉄道に飛び込み自殺した。新聞はフォルクスワーゲンの空売りで1,300億円の損失を出したことが原因と報じている。
(6)フォルクスワーゲンの大暴騰は世界的な株価大暴落に逆行して発生した。ポルシェ財閥による買収説は数年前から話題に上っていたが、ヘッジファンドは空売りで稼いでいたために、油断したのだろう。

(二)日本でも空売りが急増。

チャート2 三菱地所の日足と日証金の貸借


注1。チャートの上段は日足、下段は日証金の貸借。赤が売り、青が買い。

表1 3市場合計の貸借倍率
銘 柄
売 残
買 残
倍率(%)
三菱地所
3856
1157
0.30
三井不動産
3482
755
0.22
東京建物
8222
2095
0.25
東急不動産
8360
3984
0.48
ダイビル
473
99
0.12
GSユアサ
27368
20668
0.75
アドバンテ
4094
844
0.21
東京エレク
1384
492
0.35

注1。表は最近クラブ9で取り上げた銘柄で、特に空売りが増えた銘柄であ
   る。
注2。三菱UFJ、富士フイルム、三洋電機も取り組みが接近している。
注3。表は3市場の合計残高である。週末の集計を翌週の水曜日に発表する。
   単位は万株。
注4。日証金は前日分を毎日発表する。3市場合計の残高より取り組みが鮮明
   に出る。三菱地所のチャートは日証金、表は3市場合計である。

表の銘柄には次のような共通点がある。
(1)売りが買いを大幅に上回っている。
(2)空売りは11月後半から急増し、株価の上昇と平行して進行している。麻生首相が借り株を禁止し、ヘッジファンドが買い戻したことが主たる原因だろう。借り株はまだ残っている。
(3)ヘッジファンドは生保や信託銀行から株式を借りて株価を売り崩していたから、これまでは空売りの実体が見えなかった。フォルクスワーゲンはヘッジファンドが借り株で大量に空売りしていたために、大事件となった。
(4)一般のファンド(投資信託)は買いのみで空売りはしない。
(5)通常は買い方が日歩を払うが、最近では売り方が逆日歩を払う銘柄が急増した。逆日歩は1日5銭で始まるが、50銭に増加した銘柄もある。
(6)空売りの中には現物株のつなぎ売りもある。
(7)最近では、株不足銘柄は悪材料が出ても買い戻しが入り、株価が逆行高する場足がある。合併や買収や新製品の開発などの好材料が突発すれば、フォルクスワーゲンのように株価が急騰する可能性がある。

(三)フォルクスワーゲンとポルシェ。

(1)フォルクスワーゲンは第二次世界大戦中にナチスドイツの委託を受けて名車ビートル(カブトムシ)を開発し、世界市場を席巻するロングセラーとなった。現在はアウディやランボルギーニやベントレーを傘下に持つ巨大自動車メーカーである。
(2)ビートルの開発を担当したポルシェ博士はポルシェ社を設立して名車ポルシェを開発。ついに売上高で10倍以上のフォルクスワーゲンを飲み込んだ。
(3)フォルクスワーゲンは高級車路線に傾斜し過ぎたために収益力が低下し、売上高で8%に満たないポルシェに買収される結果となった。

(四)フォルクスワーゲンと三洋電機。

(1)フォルクスワーゲンと三洋電機はリチウムイオン電池の開発で提携している。そのフォルクスワーゲンがポルシェの傘下に入った。
(2)トヨタはダイハツ、富士重工、ヤマハ発動機や多数の下請け群を傘下に持つ世界最大最強の自動車会社で、リチウムイオン電池の開発でパナソニックと提携している。
(3)2月にパナソニックはTOBで三洋電機を傘下に置き、三洋電機の電池事業に1,000億円の設備投資を行う予定である。
(4)三洋電機はトヨタグループとポルシェグループとパナソニックの後ろ盾を得てリチウムイオン電池を開発する。