2008/11/17

  2008年11月17日(月)
  【 I 】大暴落の元凶、ヘッジファンドの研究。
  【 II 】参考銘柄。MAGねっと。  

【 I 】大暴落の元凶・ヘッジファンドの研究。
(一)1,000兆円の資金が500兆円に半減。

(1)ヘッジファンドのピークの資金量を1,000兆円と推定する見方がある。その1,000兆円が年末には半分の500兆円に激減するという推定する見方がある。ヘッジファンドの資金量は流動的で、正確な統計データは取れないが、日本の株式の時価総額が500兆円から300兆円に激減したのだから、さもありなんと思われる。
(2)ヘッジファンドは金融工学が生み出した金融市場の鬼子であり、怪物である。巨大な資金量と最先端の売買手法によって世界の株式市場を支配してきたが、今や怪物は資産の解体、売却を急ぎ、巨体をのたうたせて苦悶している。
(3)例えば、過去3ヶ月間に同時進行した株式と石油の大暴落は、ヘッジファンドの顧客の機関投資家と、無制限に融資していた投資銀行が一斉に資金を引き揚げた結果として発生した。
(4)エコノミストは株価大暴落の原因を景気や業績によって説明しているが、需給関係を重視する私は、ヘッジファンドの資金量の半減こそ、大暴落の元凶だと思う。
(5)以下にヘッジファンドの近況を探り、大暴落の行方を推定したい。

(二)ヘッジファンドはなぜ窮地に追い込まれたか。

(1)ヘッジファンドの最大のスポンサーは投資銀行であった。投資銀行は自らも多くのヘッジファンドを組成し、ノウハウを供与し、投資家から預託された元本の他に2〜5倍の資金を供給していた。
(2)しかし金融不況が深刻化し、投資銀行が組成した金融商品が焦げ付いて流動性を失ったためにリーマン・ブラザーズが倒産した。資金繰りに窮した投資銀行はFRBに支援を求めて商業銀行に変身した。
(3)商業銀行に変身した投資銀行はFRBから直接資金供給を受けて倒産の危機を脱したが、同時にFRBの監督下に置かれて野放図な融資ができなくなった。
(4)そのために傘下のヘッジファンドに自立を強制すると共に、その他のヘッジファンドからも資金を引き揚げた。
(5)ヘッジファンドは一斉に保有資産の売却に走ったから、株式や石油が大暴落し、債券や為替が乱高下したのである。
(6)しかしヘッジファンドの決算は11月と12月に集中しており、解約の受付は45日前までと決まっている。従って年内の玉整理は先週でピークを過ぎたと思われる。需給面から、今週以降は株式相場が反騰に転じる可能性がある。

(三)すべての金融商品が大暴落し、乱高下した。

(1)ヘッジファンドはこれまで、元本の数倍に達する資金を運用して投資効率を高めていたが、投資銀行が商業銀行に変身し、最大のスポンサーを失った。
(2)これまでは買い6,売り4の割合で、売り買いを同時に執行し、小さな値サヤを積み上げて大きな成果を実現していたが、資金量が激減すればヘッジ機能も低下する。
(3)これまではヘッジの対象が株式、債券、石油、金、為替等すべての金融商品に及んでいたが、資金量が激減した結果、石油相場が147ドルから55ドルに大暴落し、世界中の株式が大暴落した。
(4)10月の暴落局面で東証出来高は連日30億株に達していたが、現在は20億株割れに縮小した。ヘッジファンドの手仕舞いが急進したからだろう。
(5)かくしてヘッジファンドの資金量は年末までに半減すると推定される。

(四)借り株禁止の影響は大きい。

(1)ヘッジファンドは最先端の金融工学を駆使して売りと買いを同時に執行し、現物と先物の時間差を利用し、株式や商品間の値ザヤを確実に稼いだ。
(2)その際、売りは信用取引ではなく現物株を直接借りて売るという手法を開発したから、カラウリの実体が見えない。姿なき巨大な実弾売りを浴びて暴落する銘柄が続出し、ヘッジファンドは売買手法で圧倒的優位に立った。
(3)新興市場でもヘッジファンドは借り株を用いて売り崩したから、突然、根拠不明の暴落が頻発して、新興市場の人気が離散した。
(4)麻生首相は就任早々借り株によるカラウリを禁止した。金融庁は先週、初めて発行株式数の0.25%を超える借り株の明細を開示させた。
(5)借り株によるカラウリの禁止は世界的な趨勢となっている。ヘッジファンドの運用には大きな痛手となるだろう。
(6)ヘッジファンドの創始者であるジョージ・ソロスは先週、米議会の公聴会で証言し、ヘッジファンドの規制に賛成した。
(7)資金量が半減したヘッジファンドは、規制強化を受けてさらに資金を失う可能性がある。
(8)しかし10月以降、大暴落した日本の株式市場で個人投資家が買いの主役に浮上し、毎週3,000億円を買い付けている。次いで日本の公的年金も毎週2,500億円を買い付けており、推定2兆円の買い余力を残している。今後の日本の株式市場の需給関係は必ずしも悲観一色ではない。

(五)ダイワボウが仕手相場に発展する可能性。

(1)今、ダイワボウの信用取引で株不足が急増している。
(2)ヘッジファンドが借り株を用いて実弾で売り崩す手法を開発したから、取り組みと逆日歩攻めをテコとして売り方を締め上げる仕手筋の手法は通用しなくなり、日本の株式市場から仕手相場が消滅した。
(3)しかし金融庁の借り株規制によって、今後は、カラ売りはすべて信用取引の売りとなり、売り買いが公平に開示される。日証金が借り株を調達できない場合には売り方に逆日歩が付く。
(4)かくしてダイワボウは久々に仕手相場に発展する条件を備えた銘柄となった。もちろん、最終的な勝敗が業績と材料によって決することは言うまでもない。
(5)今後は日本の株式市場で古典的な仕手相場が復活する可能性がある。

【 II 】参考銘柄。MAGねっと。

(1)11月11日に08年3月期の中間決算と通期予想を発表した。9月中間期は赤字となったが、通期予想では1株利益218円を据え置いた。
(2)もし目標通りの利益を計上すれば、株価は2,000円を超えるだろう。時価は異常に割安であるが、問題は通期の予想利益が達成できるかどうかである。
(3)決算発表の翌12日にドイツ証券が目標株価を330円から800円に引き上げて、株価はストップ高を演じた。
(4)私は古い株主で、コスト2,000円の持ち株を現在も持続している。クラブ9で推奨したことがあり、暴落を心配した多くの投資家から相談を受けたが、私にはお答えするためのデータも自信もなかった。しかし今回の決算発表から、業態の抜本的改革に伴うゴタゴタが一段落し、経営者が収益力に自信を持ったと感じた。
(5)第1に、10月30日の臨時株主総会でガルガンチアを吸収合併し、親会社であるSFCGの大島会長が子息の大島嘉仁氏をMAGねっとの社長に据えた。大島二世は慶応大出身、三井物産、リーマン・ブラザーズ、SFCGを経て社長に就任した。
(6)第2に、持株会社Qアンドカンパニー(旧ケン・エンタープライズ、大島ファミリーの持株会社)が46%を保有する筆頭株主となった。
(7)第3に、当社は過去1年間、SFCGからの自立を目指して離合集散を繰り返し、その都度株価が暴落したが、SFCGが保有する株式41%の移動が終われば名実ともに独立を果たす。大島会長はその目途をつけたから、嘉仁氏を社長に据えたと思われる。
(8)当社は倒産したリプラスから家賃の賃貸保証部門を取得した。リプラスは家賃の賃貸保証業務で急成長したが、不動産に手を出して資金繰りが悪化し、倒産した。賃貸保証業務は高収益部門である。今回業界2位のMAGねっとが1位のリプラスの同部門を買収したことが、通期の予想利益を据え置く根拠の一つになったと思われる。
(9)3月決算の発表まで持続できる投資家に買いを勧めたい。値下がりのリスクが小さい上に、大化けが期待できる。