2008/10/27

  2008年10月27日(月)

(一)国際舞台で存在感示した麻生首相。

(1)麻生首相が国際政治の大舞台で存在感を高めている。欧米各国の首脳は麻生首相が提案した「銀行に対して大規模な財政資金を注入する政策」を即座に受け入れて、数十兆円の資本注入を断行した。日本の首相が国際政治で指導力を発揮したのはきわめて異例のケースである。
(2)麻生首相は先週末、1. 保有機構を設立して銀行が保有する株式を買い取る、2. 日銀も銀行が保有する株式を買い取る等、総額10兆円の株価対策を固める一方、乾坤一擲(けんこんいってき)やるべきことは即座にやる、と述べた。その決断力は的確で行動力に直結している。
(3)麻生首相の決断力と行動力は昭和40年の証券不況時における田中角栄をほうふつとさせる。田中角栄は宇佐見総裁を励まして山一証券と大井証券に日銀特融を発動し、日本共同証券と日本証券保有組合を設立して、暴落に買い向かった。山一と大井は倒産を回避し、共同証券と保有組合は短期間に巨額の利益を残して解散した。
(4)マスコミとエコノミストが弱気論を競い、いたずらに金融市場の不安感をあおり立てている時に、麻生首相は欧米の政府に最強の政策を提案し、即座に実行させた。一連の緊急対策も、急所を押さえている。
(5)派閥争いで凋落一途の自民党は、ドタンバで最高の人材を首相に選んだ。麻生首相は金持ち、名門の3代目であるが、金持ち、名門でなければ見えない視点と物怖じしない度胸を備えている。
(6)「景気よりも株価対策」の世論が台頭したのは当然である。私は、麻生首相は今、日本最大の希望だと思う。

(二)不明を恥じる。

(1)今回の世界同時大暴落は状況悪化のスピードとスケールが桁違いに過激である。
(2)一方、世界協調の政治的対応もまた、スピードとスケールが桁違いに大胆である。
(3)問題は先行する株価の大暴落に、政治がいつ、いかにして追いつき、追い越すかである。
(4)今日現在、残念ながら政治は株価の大暴落を阻止できていない。私の強気の期待はまだ実現していないのだから、不明を恥じるほかない。
(5)しかし私は、日本が世界の株価の反騰をリードする条件が鮮明になったと思う。
  第1に、日本は傑出した首相を得た。
  第2に、日本の金融機関の健全性は世界1である。
  第3に、円に対する信頼は世界1である。
  第4に、日本の株式の理論株価は世界で最も割安である。
(6)ちなみに26日付日経ヴェリタスは冒頭の特集「ニッポンの異常価値」で、日本の株価を多角的、具体的に検証し、異常な安値水準に売り込まれたと述べている。ぜひ一読を勧めたい。

(三)世界の常識に逆行する円高悲観論。

(1)私はマスコミの論調には同意できない点が多い。中でも円高悲観論は世界の歴史的な常識に逆行しているので、私見を述べておきたい。
(2)過去数年間にヨーロッパの通貨(ユーロ、ポンド、スイスフラン)が暴騰し、ユーロは世界最強の通貨に浮上した。
(3)ヨーロッパ各国はみな通貨高を歓迎した。第1に、世界のマネーは強い通貨に引き寄せられるから、株式や不動産が値上がりし、国家と国民が金持ちになる。第2に、急増したマネーが企業の設備投資を刺激し、景気が好転する。
(4)しかし水面下ではリスクが急拡大していた。巨額の資金が流入した銀行は、アメリカの投資銀行が組成した高利回りのデリバティブ商品を争って買い付けた。しかしそのデリバティブが崩壊するとヨーロッパの金融危機はアメリカ以上に深刻化した。
(5)一方、ドルは不動の基軸通貨である。ドルは世界貿易の決済通貨であり、新興国はみな外貨をアメリカ国債で蓄積しているから、アメリカは世界経済が拡大発展する限り、ドル紙幣を印刷し、供給し続ける責任がある。
(6)今、デリバティブが破たんして欧米の金融市場は大混乱に陥ったが、ドルはすべての通貨に対して値上がりした。
(7)唯一の例外は日本の円である。欧米の金融機関はみなユダヤ資本の国際シンジケートに組み込まれたが、日本の金融機関だけが旧態依然たる金融システムを維持していたからデリバティブの破たんを殆ど無傷で回避することができた。その結果、円はドルを凌ぐ世界最強の通貨に躍り出たのである。
(8)しかるに不可解にも、日本のマスコミとエコノミストは円高悲観論を大合唱している。歴史的な経験に照らせば、「円高は株高」であることは歴然たる事実である。

(四)円高は株高。

(1)日本の円は1960年代に始まる高度成長時代に1ドル360円から80円台まで一直線に大暴騰したが、その間にソニー、松下、トヨタ、ホンダ、キャノン等の輸出企業がそろって世界を代表する優良企業に急成長した。
(2)現在も日本の製造業の技術開発力とコスト競争力は国際的に傑出している。中でも最大の輸出産業である自動車は、世界各地で現地生産化を進め、競争力が抜群に強い。
(3)企業業績の悪化は世界的な景気後退が原因であって、円高は主たる原因ではない。輸出と輸入の両面を見れば、円高の功罪は均衡している。
(4)円高が続けば株式や不動産の高騰を誘発し、国内景気を刺激することは世界の為替の歴史が証明している。
(5)欧米では通貨高を悲観する意見は皆無に近い。クリントン政権の財務長官に就任したルービンはドル高待望論を政策目標に掲げて見事に不況を克服した。
(6)円高に伴う混乱は短期間に終息するだろう。
(7)世界のマネーは通貨の強い日本とアメリカに集まるから、私は日米が世界の株価の反騰をリードすると思う。

(五)弱気局面は11月前半まで。

(1)円高は本来、日本の株価や不動産を上昇させる要因となるにもかかわらず、現在まで日本株の値下がりは世界のトップクラスである。
(2)マスコミとエコノミストは株価暴落の原因を景気と業績から説明するが、私は需給関係を最も重視する。
(3)需給関係から見れば、直近の日本株の暴落はヘッジファンドの集中売りが最大の原因である。年内に700のヘッジファンドが運用を停止するという情 報もある。
(4)ヘッジファンドの買い手は金融機関で、解約は決算月の45日前までと決められている。ヘッジファンドの決算は11月と12月に集中しているから、遅くとも11月15日までには解約に伴う売りが一巡する。
(5)他に重要な変化が現れない限り、11月中旬に需給関係が転機を迎える可能性が高いと私は思う。