2008/9/1

  2008年9月1日(月)
  富士フイルムをこう見る。
  最悪期を脱出したアメリカの金融と住宅。

(一)富士フイルムをこう見る。

(1)先週末に今期の予想利益を23%減益と発表し、株価が急落した。
(2)9月中間決算も固まらないうちに来年3月決算の減額修正を発表した経営者の意図が不明である。
(3)財務内容から見た株価は異常な割安圏に下落した。今回の株価急落で時価総額は1.5兆円に縮小し、純資産2兆円を20%以上も割り込んだ。その一方で利益剰余金を2兆円も積み上げている。
(4)今もし2兆円の利益剰余金を担保に敵対的買収を仕掛ければ、巨大優良企業をタダで完全買収した上におつりまで来る。買収して下さいと言わんばかりの株価である。富山化学を買収した経営者が、自社の買収防衛に無関心だとは思えない。
(5)外国人株主は47%に達している。経営の視点から見れば、2兆円の利益剰余金を敵対的買収に利用される前に、自衛のための自社株買いに投入するのは常識だろう。その時期は近いと私は思う。
(6)大材料もある。当社が傘下に入れた富山化学では、新型鳥インフルエンザ特効薬 T-705 を初め、アルツハイマー治療薬 T-817MA 等、超大型新薬のフェーズ2が順調に進行している。それらは当社の業態を一変させるに十分なパワーを秘めている。

(二)最悪期を脱出したアメリカの金融と住宅。

(1)ヨーロッパ人の夏休みは7月。アメリカ人の夏休みは8月が多い。
(2)アメリカ最大の祭日は9月1日のレーバーデイで、その日に大人はもちろん、子供たちの夏休みが終わる。株式市場の夏休みも終わる。
(3)28日には、出来高が減って膠着間が漂っていた世界の株価が突然、一斉に急騰した。週末の29日は3連休を控えたニューヨークが反落したが、ヨーロッパ、アジアは高値引けとなった。
(4)かねてから私は、アメリカの政治と経済にはダイナミズムがあり、世界の株価をリードするのはニューヨーク市場だろうと述べている。アメリカこそ本物の資本主義国で、官民がそれぞれ自己責任で積極的に問題の解決に取り組むからである。
(5)ファニーメイとフレディマックの住宅公社2社は株価の乱高下が収まったとは言えないが、公社の経営自体はポールソン財務長官直轄のてこ入れが鮮明となった。週末のニューヨーク市場では売り込まれていた金融保証大手のアムバックとMBIAの株価が急反騰した。サブプライムローンに次いで、住宅金融、地方債の配当保証という金融の重要な機能が回復する兆しが見える。
(6)今週はチャートを掲載しないが、住宅最大手のトール・ブラザーズは戻りの節目をことごとく突破し、金融最大手のシティグループは下値を固めた。
(7)これらの銘柄の底値脱出は金融市場、住宅市場が最悪期を過ぎたことを先見する指標である。
(8)今後の株式市場の論点はアメリカの景気と業績、中国の経済政策の成否等に移るだろう。その場合にも私はニューヨークダウの指標性に注目したい。マスコミやエコノミストは日々の経済統計に一喜一憂するが、統計データが過去の記録であるのに対して株価は3〜6ヶ月先を先見するからである。
(9)例えば、マスコミはアメリカの住宅販売や住宅価格の急落を競い合って報道しているが、住宅市場を代表するトール・ブラザーズの株価は大幅に上昇した。弱気論の根拠となっている統計データをよく見れば、悪化した地域はサブプライムローンが集中したカリフォルニア、フロリダ、ネバダ3州と自動車ビッグ3の拠点であるデトロイトに集中しているが、その他の地域では改善を示す指標が点滅している。トール・ブラザーズの株価は過去の業績悪よりも将来の業績好転の指標となる受注の増加を評価している。これが株価の先見性である。