2008/8/18

  2008年8月18日(月)
  金融、住宅に変化の指標が点滅。

(一)シティグループとトール・ブラザーズ。

(1)チャートは世界1の銀行 -- シティグループと米国1の住宅 -- トール・ブラザーズの日足である。
(2)8日付けクラブ9にも同じチャートを掲載したが、先週、両銘柄に変化の徴候が出現した。
(3)第1に、15日付日経は「米で証券集団訴訟急増」の大見出しで、シティバンクを含む大手金融機関が仕組み債の不正販売で総額2兆円以上の買い戻しを迫られた等、新たな金融市場の悪材料を報道した。しかし金融株が下落したのは1日だけで、すぐに下げ幅を埋めた。株式市場は日経が報じた大きな悪材料よりも日経が報じなかった「ジョージ・ソロスがリーマンブラザーズの株式1.4%を取得した」という小さな情報を評価したのである。
(4)第2に、15日付日経夕刊は「米住宅差し押さえ55%増。7月27万2,000件、不況進行一段と」と住宅不況の深刻化を大々的に報道したが、トール・ブラザーズの株価は急上昇した。ここでも日経が無視した「アメリカの13州で住宅販売が増加し、主要都市の4分の1で住宅価格が上昇した」「トール・ブラザーズの3〜6月期は大幅減収減益であったが受注が増えた」という小さな好材料に反応したのである。
(5)日経は「金融不況が深刻化する」「住宅価格が下落する」という先入観に捕らわれて紙面を構成しているが、先見性を重視する投資家は大きな悪材料よりも小さな変化の徴候を重視したのである。
(6)周知の悪材料は相場が折り込んでしまっている。相場は小さくても意外性のある好材料に反応する局面を迎えた。

(二)全面安の商品相場。

(1)石油相場は先週の弱基調を引き継いで、高値から23%以上急落した。
(2)しかし急落したのは石油だけではない。今年の最高値に比べると、13日までに金は20%、銅は20%、トウモロコシは36%、小麦に至っては41%も暴落した。
(3)世界中で景気が悪化している。景気が悪化すれば需要が減って商品相場はさらに下落する。
(4)商品相場が下がれば、インフレは沈静する。
(5)インフレが沈静すれば、各国の金融政策はインフレ阻止のための利上げから、景気浮揚のための利下げに転換するだろう。
(6)金融を緩和すれば景気回復を先見して、資金は「商品から株式へ」「国債から株式へ」と逆流する。すなわち「不景気の株高」となる。

(三)ダイナミックな米国の財政、金融政策。

(1)日本やECに比べるとアメリカの財政金融政策は躍動している。
(2)政府系住宅金融公社のフレディマックとファニーメイに対して、米政府は今週にも1兆円規模の資本注入を決断するだろう。実質的な政府丸抱えによって金融市場と住宅市場の最後にして最大の不安要因が一掃される。
(3)米国の景気は年内にも好転するという観測が強い。日本とECも来年前半には米国に追随するだろう。オリンピック後の中国も経済政策を積極化するだろう。
(4)世界景気が好転すれば、物価は上昇に転じる可能性がある。
(5)しかし株価は景気好転を先見して本格的に上昇するだろう。

(四)行き過ぎた金融庁の反社会的企業つぶし。

(1)アーバンコーポレイションが倒産した。負債総額は今年最大の2,500億円であるしかし金融機関はみな十分な担保を取っているから、実害はないという。
(2)この点は他の倒産にも共通しており、倒産件数は多いが、担保は十分で、負債額が小さく、連鎖倒産も少ない。
(3)日本の銀行はカネ余りにもかかわらず貸出先がなくて困っている。それでも資金不足で倒産する企業が出るのは金融庁が行政指導を通して糧道を断っているからである。
(4)金融庁は年初来、不動産や金融関連の反社会的企業の排除に注力している。反社会的企業とはやくざや北朝鮮との関係が深いと見られる企業を指す。しかしやりすぎたために金融不安を増幅し、新興市場の株価が暴落し、景気に悪影響を与えている。
(5)金融庁は竹中大臣の時代にも暴力的な大企業つぶしを断行した。借金が多いというだけで過剰債務、過剰融資と決めつけて大企業と大手銀行を次々に倒産に追い込んだ。しかし2年後には銀行が計上した巨額の不良債券は皆優良債券に逆転して利益が激増し、株価が暴騰した。木村剛につぶせと名指しされた企業の株価もみな暴騰した。竹中大臣が倒産に追い込んだダイエーや日商岩井やUFJ銀行等は馬鹿を見たのである。今回も台風一過で、急騰する銘柄が続出するだろう。
(6)精神異常者が刃物を振り回す事件が続出しているが、金融庁に権力を与えると引くことを知らない。茂木新大臣の冷静な対応を望みたい。