2008/7/14

  2008年7月14日(月)

(一)フレディマックとファニーメイ。

<チャート1>

(1)<チャート1>はファニーメイとフレディマックの日足である。
(2)2銘柄は半官半民の「住宅抵当公社」である。銀行の住宅ローンを買い上げて証券化し、米国債並みのAAAの格付けを取って投資家に売りさばき、資金を流動化している。半官半民とはいえ、政府は株式を持たず、信用の後ろ盾となっている。
(3)AAA格債は米国国債と同格で、日本国債よりも格付けが高い。その両社が倒産の噂で株価が暴落し、世界の株式市場を暴落の連鎖に陥れた。
(4)ポールソン財務長官とバーナンキFRB議長は10日に米議会で「資本も流動性も資産も十分」と証言したが、株価が下げ止まらなかった。

(二)今週にも救済案決定へ。

(1)救済案は 1.政府による債務保証、2.FRBの直接融資、3.国営化説がある。
(2)国営化の場合は株式価値がゼロになる可能性があるとして株価が暴落したが、1.又は 2.で決着するだろう。
(3)政府が救済を躊躇することはあり得ない。政府が国民に持ち家を奨励し、住宅ローンの金利と所得税を相殺する優遇策を推進したから、住宅はアメリカ人の最大の財産となった。
(4)アメリカ人は引退するまで節税ローンを組んで住宅を買い、平均して住宅ローンの3倍の含み益を構築している。
(5)折しも住宅価格の底入れを示す指標が続出している。中古住宅の在庫が減少、住宅価格が上昇、住宅ローンの増加、である。政府が住宅抵当公社の信用に太鼓判を押せば住宅不況は終息するだろう。
(6)FRBは3月にはベアースターンズを救済すると同時に、投資銀行各社との間に直接取引の口座を開設し、30兆円の資金枠を設定して無制限に融資する体制を整えた。30兆円はサブプライムローンの全額に相当する金額だから、投資銀行が倒産する可能性は皆無となった。
(7)にもかかわらず、住宅抵当公社や投資銀行の倒産説が絶えないのは株式市場が異常な弱気心理に支配されているからだろう。
(8)住宅抵当公社のてこ入れ策は、議会の同意を得て今週にはまとまるだろう。金融株は過剰な弱気論を織り込んだ。だめ押しの2番底を形成する可能性が高い。
(9)私は6月22日付クラブ9で、マゼランファンドのファンドマネージャー、ピーターリンチが80年代に暴落したファニーメイを買い向かい、株価20倍の大当たりを取って不動の名声を確立した故事を紹介した。歴史は繰り返すか。

(三)石油相場と穀物相場。

<チャート2>

(1)<チャート2>はシカゴ商品指数、ニューヨーク石油、シカゴトウモロコシ、シカゴ小麦、シカゴ大豆の日足である。
(2)住宅抵当公社は金融市場内部の問題であるが、石油や穀物の暴騰はすべての人類の日常生活を圧迫する社会的な問題である。
(3)中でも石油の暴騰は深刻な社会不安を引き起こしている。
(4)石油相場は過去2週間に3度にわたる急騰、急落、急騰を演じ、その都度10ドル、7%の波乱を繰り返した。
(5)先物取引の担保は5〜2%だから、短期間に7%も上下すれば小口投資家は担保が飛ぶ。先ず売り方が破たんし、次いで買い方が破たんした。
(6)通常ならばこのような乱高下は天井圏で起こり安いが、直後にイランがミサイルを発射し、イスラエル空軍が応酬したために、再度高騰して週末を迎えた。ちなみにイランは核爆弾を開発中であるが、イスラエルが核保有国であることは公然たる秘密である。
(7)7日、8日の急落局面で年金が2兆円の資金を引き揚げた点にも注目したい。その理由は 1. 相場が天井圏に達したと見た、2. 米議会で年金とヘッジファンドの介入を規制する法案の審議が始まった、3. 相場操縦に対する監視が始まった、等だろう。ちなみに商品取引は場立ちによる相対取引で相場操縦が行われやすい。
(8)石油の需給関係は逼迫説が強いが、必ずしも正しくない。1. 大型油田の発見が相次いでおり、温存されている大型油田もある。2. 海底油田の掘削技術が発達して、可採埋蔵量が増えている。3. 50ドル超が続くとオイルサンドが採算に乗る。4. 原子力、太陽光等の設備投資が急増している。5. 電気自動車の開発が急進展している。6. 短期的に見ても、アメリカを初め世界各地でガソリンの消費量が落ち始めた。
(9)年金とヘッジファンドによる投機資金の急増が石油暴騰の真犯人であることは明白である。両者を規制すれば相場は即座に沈静化する。
(10)米議会には投機資金を規正する法案が次々に提出されている。年金自身も石油に投資すればするほど株価暴落の打撃の方が大きくなる。年金に良識と自制を促したい。

(四)ユダヤ人の金融と日本人の金融。

(1)ユダヤ人は3000年間故国を持たない流浪の民であった。キリスト教徒やイスラム教徒が戒律によって禁止していた金貸しを生業とし、それゆえ迫害を受け、国を追われて世界各地に離散した。
(2)第2次世界大戦が終わり、ユダヤ人は3000年ぶりにイスラエル王国の故地にイスラエルを再建したが、同時に欧米各地に離散していたユダヤ人は国境を越えたもう一つの金融王国を建設した。
(3)金融には国境がない。どんなに巨額のマネーでも瞬時にして国境を越える。ユダヤ人は国境を超えて結束し、欧米を横断する金融の一大シンジケートを形成した。
(4)今や、欧米で金融は国家の中枢を占める巨大な基幹産業となった。中でもアメリカのウォール街とイギリスのシティには伝統的な風体を誇示するユダヤ人が我が町とばかりに闊歩している。
(5)しかしユダヤ人のシンジケートは日進月歩のノウハウを積み上げて巨大化したから、一度その一部がほころびると、たちまち欧米の金融市場が同時に混乱に陥り、世界的金融危機に発展する。
(6)欧米の中央銀行と財務省は、ユダヤ人の先端的ノウハウが破たんする度に、ほころびを封じ込めるための新たなノウハウの構築を迫られる。
(7)良いか悪いかは別として、それが欧米の金融市場の現実である。現実である限り、欧米の政府は金融政策と財政政策を動員して破たんを克服するだろう。私は人類の英知を信頼している。
(8)日本の金融機関は、先進国で唯一ユダヤ人の支配を受けていない。日本の基幹産業は金融ではなく製造業である。それゆえ、欧米の金融機関に比べて損失はきわめて軽微で、東京市場の株価も底割れしていない。
(9)石油の暴騰によるインフレの影響は免れがたいが、デフレ基調の日本経済は相対的な打撃が小さい。
(10)日本の金融機関と金融市場は世界に存在感を示す好機を迎えた、と私は思う。