2008/6/30

  2008年6月30日(月)

(一)NYダウと日経平均。

(1)ニューヨークダウは3月安値を下回ったが、日経平均は押し幅が浅い。
(2)しかしニューヨークダウは史上最高値から20%弱しか下落していない。それゆえ本格的な下げ相場の始まりと見る弱気論が大勢であるが、年末に景気が底入れするとすれば2番底を模索する過程と見える。
(3)短期的には石油相場に揺さぶられるが、今週はひとまず反発かと私は思う。

(二)シティグループとトール・ブラザーズ。

(1)ポールソン米財務長官は住宅とサブプライム問題は最悪期を過ぎたと述べている。チャートは金融を代表するシティグループと住宅を代表するトール・ブラザーズの週足である。
(2)シティは3月安値にツラ合わせしたが、トール・ブラザーズは1月安値を上回っている。
(3)住宅は回復の指標が点滅しているが、金融は4〜6月期にも赤字が残る。
(4)ゴールドマン・サックスは先週、4〜6月期も1兆円近い赤字と見てシティの格付けを下げた。しかしサブプライム問題自体は最悪期を過ぎており、2度目の資本増強に成功すれば株価は底入れするのではないか。

(三)増加するオイルマネー。

(1)景気や業績が悪くても、株式市場の資金量が増えれば株価は上がる。現在は株式市場の資金が商品に逃避して石油高、株安となっている。
(2)28日付日経は、現状のまま石油相場が推移すれば今年の消費国から産油国への所得移転は200兆円に達すると試算している。またIMFは、政府系ファンドの資金量が年率200兆円ベースで急増していると報じている。
(3)先週、バークレイズは1兆円増資に成功した。政府系ファンドとオイルマネーが出資し、三井住友銀行が参加した。
(4)ゴールドマン・サックスは、欧米の金融機関は30兆円の自己資本増強が必要と述べているが、オイルマネーと政府系ファンドが出資すれば窮地を脱する。
(5)私は野村證券がアメリカの投資銀行に出資することを期待したい。例えば野村證券は東京の先物市場を外国証券に占拠されて手も足も出ない。今こそ資本提携を通して投資銀行のノウハウを取得する好機だと思う。

(四)石油相場の行方。

(1)先週、石油相場が史上最高値を更新し、世界中の株価を暴落させた。今や石油相場を抜きにして株式相場は語れない。
(2)供給面では、サウジアラビア、クエートの他、イラク、イランの大増産説がある。
(3)中でもイラクは元々世界屈指の大産油国である。増産が進めば治安部隊を増強し、治安部隊を増強すればさらに増産が進む。アメリカ軍の名誉ある撤退も可能となる。
(4)需要面では、前年比横ばいであるが、最大のガソリン消費国であるアメリカの需要減少が鮮明となった。GMの大型車に代わって、世界中で省エネ小型車が売り上げを伸ばしている。
(5)資金面では、年金とユダヤ系ヘッジファンドが投機の主役である。米議会には両者を規制する法案が提出されており、社会的な批判も高まっている。
(6)規制がなくても、投機人気は爛熟すれば自壊し、崩壊する。投機資金は流入も速いが逃げ足も速い。
(7)石油相場のピークは150ドル説が多く、反落後の安値は75ドル説が多い。
(8)石油相場は行き過ぎもあるが、逆に反落すれば資金が逆流して株式相場は反騰に転じる。

(五)薬品株の一角が堅調。

(1)電池株人気の陰に隠れて目立たないが、日本新薬、大正製薬、科研製薬等、薬品株の一角が先週も陽線を重ねている。
(2)日本新薬は大型の次世代型ガン新薬の開発が順調だという。外人による実弾買いで信用残はわずか3万株に縮小している。
(3)大正製薬はグラクソから導入した禁煙の貼り薬が好調という。
(4)主役を演じるには重量不足だが、暴落局面でも材料株、好業績株を物色する意欲は健在である。

(六)富山化学(富士フイルム)の近況。

(1)富士フイルムの株価は冴えないが、買収した富山化学の新薬開発は順調である。近況を紹介しておきたい。
(2)鳥インフルエンザ特効薬 T-705 は日米同時にフェーズ2が進行している。検証中の追加データに問題がなければ、米欧への製造販売権の導出が決まる。
(3)富士フイルムは、今後はライセンスを導出しないと言明したが、米欧では国家が T-705 を備蓄する場合に自国生産が条件となるからである。
(4)新型鳥インフルエンザはヒト−ヒトへの進化が進んでおり、パンデミック(世界的大流行)のリスクが日一日と高まっている。
(5)ユタ州立大学は昨年、動物実験で H5N1型に感染したマウスに T-705 を投与したところ、全数が生存したという驚異的なデータを公表して注目された。
(6)これまでの政府備蓄はロシュ社のタミフルに集中しているが有効性に疑問が出ているだけに、 T-705 のライセンス導出が決まれば、後継薬として期待が高まる。ちなみにタミフルの各国政府の備蓄量は7,000億円である。
(7)富山化学はアルツハイマー治療薬 T-817MA でも、日米同時にフェーズ2に入っている。アルツハイマーで「進行を止める薬品」はあるが「治療する薬品」はまだない。富山化学はその治療薬の開発で先行している。
(8)6月30日付日経によれば「富山化学、神戸大学塩沢教授、北里大学広野教授らは開発中のリュウマチ治療薬 T-5224 の動物実験で有効性を確認した。30日付米科学雑誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に掲載される」と報じている。
(9)T-5224 は世界初の画期的リュウマチ治療薬で、スイスのロシュ社にライセンスを導出している。