2008/6/9

  2008年6月9日(月)
  石油相場と株式相場。

(一)急騰した石油相場。


(1)先週末、石油相場が暴騰し、一挙に高値を更新した。
(2)米国FRBのバーナンキ議長と欧州ECBのトルシェ総裁が先週、相次いで「金融不安よりもインフレ対策が必要」と述べたが、インフレ懸念は即座に現実となった。
(3)商品相場は需給関係に支えられているから、金融政策のみで抑制することは困難である。
(4)米国、英国、ECの中央銀行は困難な局面に立たされている。公定歩合を大幅に引き上げれば景気が悪化する。インフレ抑制を重視して過剰流動性を吸収すれば金融不安が再燃する。
(5)金融政策のみで金融不安とインフレ懸念を同時に解決することは至難である。

(二)石油相場と石油メジャー。

(1)原油は精製されてナフサとガソリンと重油に別れる。ナフサはプラスチックや合成繊維の中間原料となるから品質も価格も高い。直近ではそのナフサが原油よりも安かったのだから、石油相場が需給関係を無視した投機人気にさらされていることは明らかである。
(2)ニューヨーク先物市場のWTIは米国テキサス産の上質原油で、現在は生産量がきわめて小さい。しかし現実にはその小さなWTIの先物相場が世界の石油相場の指標となっているから、投機資金が介入しやすい。
(3)そのために取引所は価格操作の疑いありと見て調査に乗り出していた。商品市場は株式市場や債券市場に比べると資金量も取引参加者もケタ違いに少なく、場立ちの相対取引で相場を形成している。そこへアウトサイダーの投機資金が乱入すれば、談合による価格操作が起こりやすい。
(4)1日で10ドルを超える暴騰は投機そのもので、政治的な介入もあり得る。
(5)米国は戦略的に石油備蓄を積み増しているが、一時的な停止、放出もあり得る。
(6)もっともメジャーを初めとするテキサスの石油資本はブッシュ政権を支える財界の中核である。米国はメキシコ湾やアラスカの巨大な石油資源を環境保護という名目で温存する一方、米国の石油メジャーは世界中の油井の権益と掘削に関与して日本1のトヨタの10倍以上の利益を上げている。
(7)米国は石油の埋蔵資源で世界最大である。穀物でも世界最大の生産国である。金の保有高でも世界ダントツである。一次産品の高騰は基本的に米国の利益と一致する。資源の高騰は早晩ドル高を誘発する可能性がある。
(8)バーナンキFRB議長はドル高誘導政策を鮮明にした。ドルが上がれば輸入物価が下がり、インフレが抑制される。しかし週末の株価急落に反応して、利下げ期待が復活している。

(三)急落した米国株。

(1)先週末、石油相場の暴騰を受けてニューヨークダウは急落した。
(2)ナスダックの高値更新に追随してニューヨークダウが上放れるかと期待していた矢先の急落で、独歩高を演じていた日本の株価も短期的な影響を免れないだろう。
(3)ただし、悪材料ばかりでもない。
(4)金融機関の評価損は最悪期を過ぎた。
(5)日米とも空売りが増加し、取り組みが接近している。
(6)商品取引所は投機筋による価格操作の調査に乗り出した。監視も強化する。
(7)米国は石油の戦略的積み増しを停止し、放出する可能性がある。何らかの政治的な介入もあり得る。
(8)石油の暴騰で空前のオイルマネーが積み上がっている。特に中東のオイルマネーは相当部分が必ず株式、債券、不動産等に投資されている。
(9)一つの事実には表裏がある。「動」あれば「反動」がある。状況を冷静に見極めたい。