2008/5/26

  2008年5月26日(月)

(一)最弱から最強に浮上した東京市場。

(1)つい最近まで、エコノミストは東京市場が「なぜ世界で最も値下がりしたか」をめぐって日本経済斜陽論を競い合っていた。
(2)しかし私は、斜陽論は筋違いで短期的な需給関係の悪化に過ぎないから、割安な株価は修正されると主張した。
(3)すなわち東京は先物市場が発達し、ニューヨークに次ぐ高い流動性を持つ市場である。これに対して中国は時価総額で世界第2位に躍進したが、政府が株式の90%を保有しており、流動性から見れば東京とは比較にならない小さな市場である。
(4)それゆえ中国やインドで大量の売り玉が出た時、ファンドマネジャーが一斉に東京にヘッジ売りを仕掛けたのである。
(5)ところが4月以降は株価が急反騰に転じたために、外国人投資家はあわてて日本株を買い戻し、アジア株をアジア市場で売った。その結果、日本株は世界で最も値上がりし、アジア株は世界で最も値下がりした、と私は説明した。
(6)しかし日本の株価はヘッジのための売り買いだけでは説明できないほど強い。もし買い戻しが主力であったとすれば、買い戻し一巡で騰勢は止まるが、現実には信用取引の買い残が激減する一方で売り残が激増しており、東京市場に新たに巨大な買い大手が出現したと考えなければ説明できない。
(7)そこで私は中東のオイルマネーが東京市場に流入しているという仮説を立てた。事実はまだ確認できないが、株価の騰勢は仮説の正しさを証明している。
(8)次項で、オイルマネーのスケールとその行方について私見を補足したい。

(二)一人勝ちしたオイルマネーの行方。

(1)いわく、世界の金融機関が30兆円の損失を計上した。いわく、住宅と不動産が下落した。いわく、インフレが激化した。等々。エコノミストの心配の種は尽きない。景気後退、業績悪化が避けられないときに株価だけが上がるはずがないという弱気論がエコノミストの常識となった。
(2)しかしすべての弱気論は、価格決定の最大の要因である需給関係を無視している。
(3)金融市場を麻雀に例えると、テーブルを囲む4人のうち3人がハコ点になれば、残る1人は必ず勝ち点を独占している。
(4)一人勝ちしたのは産油国である。産油国の石油の原価は昔も今もゼロだから掘削費用を除けばみな利益である。第1次オイルショックで5ドルから15ドルになっただけでも産油国は大もうけしたが、今や130ドルに大暴騰したのだから、90%以上の120ドルが利益となる。エコノミストは負けた方だけを見て景気と企業業績と家計が破綻すると騒いでいるが、一人勝ちしたオイルマネーの行方を見ようとしない。
(5)今もし産油国が大暴落したサブプライム関連証券を買い占めれば30兆円の評価損は消滅する。今もし産油国が暴落した株式や不動産を買い向かえば株価と地価は高値を奪還する。このような強気の仮説を私は妄想とは思わない。
(6)石油の暴騰で大もうけした産油国から見れば、暴落した債券や株式や不動産は千載一遇の買いの好機である。私は第1次オイルショック時に中東へ出張して日本の株式と国債を売り込んだが、彼らは日本国債を大量に買った。高度成長期に突入した日本の円が高騰することを彼らは正確に見抜いていた。
(7)中東の産油国は石油収入の一定比率を国家予算の「次世代のためのファンド」に組み込んで世界の株式、不動産、国債に投資している。世界1の産油国であるサウジアラビアは、新たに財務大臣直轄の「国営ファンド」を設定した。
(8)産油国が一人勝ちで稼いだ利益を現金のまま放置することはありえない。彼らは商品市場で大もうけしたマネーの大部分を必ず金融市場で運用する。
(9)「価格が需給関係で決まる」ことは経済学のイロハである。需給関係が逼迫して暴騰した石油や鉱物や農産物が生み出す巨大なマネーは早晩金融市場に流入し、債券、株式、不動産の需給関係を逆転させると私は思う。

(三)相場観と銘柄観。

(1)相場の上昇に逆行して巨大な空売りが積み上がっている。空売りは潜在的な買い要因であるから、押し目を形成しても短期で小幅だろう。
(2)中期的な本命株には材料の大きさから富士フイルムを上げたい。
(3)日経は先週末、ジャパン・ティッシュが9月までに厚労省に培養軟骨の製造認可の申請を行うと報じ、ストップ高を演じた。再生医療はバイオ関連の最先端分野である。今回はやけどの皮膚再生に続く第2弾で、第3弾の培養網膜の認可申請も近い。富山化学が第2位の大株主である。
(4)ネクストが減益予想で反落したが、ホームページを参照されたい。中期的な成長目標と目標達成までの筋道が明快に示されており、リクルート出身社長の傑出した経営センスが伺われる。
(5)洞爺湖サミットが接近するにつれて、予想通り地球温暖化対策関連銘柄が循環買いの軌道に乗ってきた。