2008/5/7

  2008年5月7日(水)
  【 I 】私の相場観と投資手法。
  【 II 】相場観、銘柄観。

【 I 】私の相場観と投資手法。
(一)クラブ9の投資原則。

  第1条。相場の世界では常に少数意見が勝つ。
  第2条。相場とは少数意見が多数意見に変わる過程である。
(1)上記2カ条のクラブ9投資原則を私は野村證券のY氏から教わった。
(2)相場の世界には無数の格言があるが、みな「人の行く、裏に道あり、花の山」と教えている。クラブ9の投資原則も表現は違うが、意味は同じである。
(3)しかし少数意見は孤立無援である。不安を乗り越えるための知識と、経験と、度胸がいる。私は何度もY氏を尋ねて情熱あふれる相場観を聞いた。
(4)少数意見にはリスクがあるが、リスクのないところには利益がない。リスクに挑戦すればこそ、リスクをヘッジし、リスクを乗り越えるノウハウが生まれる。そう思ったとき、私はサラリーマンと決別した。

(二)私にとっての経済学。

(1)私は出来の悪い学生であったが、現在も2つの経済理論を忘れていない。
 第1に、アダム・スミスを始祖とする古典経済学者は「価格は需要と供給の接点で決まる」という不滅の需給理論を打ち立てた。
 第2に、1935年にケインズが「利子、雇用、貨幣の一般理論」を発表して近代経済学の始祖となった。ケインズは「政府が財政投融資によって需要を創造し、金融緩和によって資金を供給すれば、恐慌は克服できる」と述べた。
(2)ケインズ以後、世界恐慌は消滅し、共産主義は衰退した。
(3)米国は現在、ケインズ経済学を忠実に実践している。すなわち、
 第1に、ブッシュ政権はサブプライムローンの破綻者を救済する一方、大型減税を断行した。
 第2に、FRBは政策金利を引き下げる一方、大規模なマネーの流動性を供給した。
(4)私は経済政策の効果が現れた状況をリアルタイムで追跡してきたが、エコノミストはこの程度では景気後退は防げない、金融機関の赤字は現在の30兆円から2年後に200兆円に拡大し、世界経済は深刻な景気後退に陥ると合唱している。
(5)しかし不況論が高まれば高まるほど政府と中央銀行は経済政策を強化するから、4月には「不景気の株高」が鮮明となった。
(6)米国が需要を増やし、資金量を増やしたのだから、需給関係が改善して「不景気の株高」が出現したのは当然である。さらに私たちは「株高」が企業の設備投資や個人の消費を誘発し、景気を好転させることを経験によって知っている。
(7)しかしエコノミストは「景気や業績が悪いのに株価が上がるはずがない」と主張している。なぜ意見が分かれるのだろう。

(三)株価の先見性とエコノミストの遅効性。

(1)「相場のことは相場に聞け」という格言がある。
(2)ニューヨーク市場では金融不況の直撃を受けた銀行株と住宅株が半年前にすでに反騰に転じていた。ダウ平均株価もまた2ヶ月前に反騰を開始した。
(3)相場のことを相場に聞けば、相場は金融不況が最悪期を脱出しつつあることを先見していると私は思った。
(4)しかしエコノミストは弱気論を捨てない。
(5)思うに、エコノミストは統計データを科学的に分析して景気を予測するが、統計データは過去の事実に過ぎない。
(6)エコノミストは「未来は過去の延長線上にある」と思っているが、投資家は「未来は意外性の中にある」と思っているから、変化の徴候に神経を集中する。
(7)それゆえ私は、相場には先見性があり、エコノミストには遅効性があると思う。

(四)真剣勝負と竹刀(しない)競技。

(1)投資家の相場観は真剣勝負だから間違えば財産を失うが、エコノミストは竹刀(しない)競技だから間違っても痛みを感じない。
(2)元大蔵省高官の某大学教授は2ヶ月前にダウとドルの暴落論をぶちあげてマスコミで人気を博していた。
(3)彼はしばしば相場の天底を間違えるが、職を失うわけではない。おまけにエコノミストはみな同じデータを共有して似たり寄ったりの多数意見を合唱するから、責任を感じることもない。
(4)日経も毎週「連休明けの決算発表を確認してから株を買え」と助言していたが、私は、それでは好機を逸してしまうと批判した。
(5)エコノミストと日経の論理はいわば「後出しジャンケン」の結果論である。投資家は「結果論と相場観は異質の論理である」と考えておくべきだと私は思う。
(6)もちろん私は、自分が正しくてエコノミストが間違っていると主張するつもりはない。相場のトレンドが変わらない局面ではデータ分析が威力を発揮し、相場のトレンドが逆転する局面では先見性が威力を発揮する。
(7)トレンドが変化して行く状況を「クラブ9の投資原則第2条」は「相場とは少数意見が多数意見に変わる過程である」と規定している。多数意見が極まった時、相場の主導権は多数意見から少数意見に移る。しかし今日の少数意見もやがては多数意見に変わるのである。

(五)少数意見の萌芽。

(1)ゴールドマン・サックスは投資銀行の中でただ1社、昨年10〜12月期に増益を確保した。本業である証券化商品に空売りを仕掛けたのである。
(2)ゴールドマンの1〜3月は減益であったが、証券化商品の持ち高を増やした形跡がある。この傾向が続けば重要な変化の徴候となる。
(3)ゴールドマンは金融市場に最先端技術を持ち込んで急成長し、2人の会長がクリントン政権とブッシュ政権の財務大臣にスカウトされた。
(4)私はゴールドマンのドライな豹変ぶりには驚き、あきれるが、同時に少数意見の萌芽を見る。

【 II 】相場観、銘柄観。

(1)ニューヨーク市場で住宅ローン大手ファニーメイが第3四半期連続赤字と増資を同時に発表し、株価は急伸した。私は、株式市場が住宅市場の悪化よりも好転を先見する局面に移ったことを示していると思う。
(2)相場観、銘柄観はこれまでと変わらない。
(3)私の推定では、楽天は借り株の買い戻しが急反騰のインパクトとなっている。新興市場銘柄は業績よりも需給関係の悪化で暴落したから、楽天と同様に借り株の買い戻しで反騰に転じる銘柄が続出する可能性がある。
(4)クラブ9の既報銘柄も軒並みに暴落していたが、リプラス(8936)に続いて、NIF(8458)、ネクスト(2120)、野村マイクロ(6254)、スパークス(8739)等にも復活の気配が見える。