2008/4/28

  2008年4月28日(月)

(一)急騰したコールオプション。

(1)4月7日付けで掲載した4月11日決済、12,500円コールオプションは売り方敗北のうちに決済が終った。今回は5月9日決済の13,000円、コールオプションのチャートをご覧頂きたい。

(2)チャートの通り、2月18日から3月17日までの暴落局面では買い方を恐怖に陥れたが、3月17日から先週末までの暴騰局面では一転して売り方を恐怖に陥れた。
(3)1枚の建て玉が20万円から93万円に大化けしたのだからから、大量に売り上がった弱気筋は致命的な打撃を受けた。
(4)先週私は、ナポレオンの栄光と挫折を紹介したが、同様の大逆転のドラマが株式市場で起こったのである。今週さらに騰勢が続けば、株式相場の底入れは一段と鮮明になる。金融市場で一体何が起こったのだろうか。
(5)私はここ数週間、サブプライムローン破綻者の救済策と、破綻した投資銀行の救済策が軌道に乗る経過をリアルタイムで追跡し、株式相場は金融不安の終息を先見していると主張した。
(6)しかし買い手不在となった株式相場が本格的に底入れするためには、大型の新規資金が流入する必要がある。そこで私はオイルマネー、中でも中東の政府系ファンドが参入したという仮説を立てた。次項でその仮説の実現性を検証したい。

(二)石油資源は練金の壺。

(1)中東産油国はアラビアンナイトの夢、錬金の壺を手に入れた。
(2)第一次オイルショックで石油相場は初めて10ドルを超えた。それから30年間に石油相場は120ドルに大化けした。石油相場がどんなに暴騰しても産油国の原価はタダだから、錬金の壺は昼夜を分かたずキャッシュを噴出し、噴出したキャッシュの量は増勢一途をたどっている。
(3)しかし豊富な埋蔵資源もいつかは枯渇する。中東の産油国は石油が枯渇する日に備えて「次世代のためのファンド」を設立し、その運用を金融庁が担当していた。しかし増勢一途の石油収入を運用するために、新たに「国営ファンド」を設立した。サウジアラビアはいきなり1兆ドル(100兆円)の「国営ファンド」を新設したと推定されている。100兆円といえば、日本が数十年間にわたって営々として積み上げた外貨(米国国債)に匹敵する。
(4)シンガポールやアイルランドのように国民の年金資金を「国営ファンド」として運用している国家もあるが、ここへ来て中国やロシアも急増する外貨の一部で「国営ファンド」を設立した。
(5)「国営ファンド」はすでに500兆円に達し、年率200兆円ペースで増加して5年後に1,500兆円に大膨張すると予想されている。
(6)これまではオイルマネーが世界の株式市場で主役を演じてきたが、「国営ファンド」の参入も時間の問題となっていた。
(7)「国営ファンド」が国家戦略に基づいて企業を買収するのを恐れた欧米では規制論が盛んであったが、UBSやシティバンクやメリルリンチなどが国営ファンドによって救済されるに及んで、白馬の騎士に一変した。
(8)弱気論者は買い手不在で株価が上がるはずがないと論じているが、私は、弱気論者は視野が狭いと論じていた。株価が大暴落した間にも石油相場は急騰一途をたどっていたからである。
(9)30年前の第1次オイルショック時に私は中東に出張した。彼らは円相場の急騰を正確に予測して日本国債を大量に買った。彼らは昔も今もイギリス人やスイス人の優れたスタッフを擁しているから、私は暴落した株式を見過ごすはずがないと思っていた。

(三)急騰の主役は国営ファンドか。

(1)直近の株式相場の騰勢の強さから、私は「国営ファンド」が買い出動したのではないかという仮説を立てた。真偽は不明であるが、徴候は随所に見える。
(2)第1に、これまで先物主導で下落していた相場が先物主導の上昇に変わった。大きな資金が買い出動する時には、先ず先物でポジションを取る場合が多い。
(3)第2に、先週末には、みずほ銀行、新日鉄等の大型株が、決算悪をはね返して急騰したばかりか、戻りの節目を一挙に突破した。買うと決めたからには、売り玉が大きいほど都合がよい。
(4)第3に、直近の外国人買いはヨーロッパ経由が主力である。オイルマネーは伝統的にヨーロッパを経由する。
(5)巨大化したオイルマネーを運用できる市場は株式市場以外に存在しない。彼らにとって世界的な株価の大暴落は千載一遇の買いの好機と見えるだろう。

(四)相場観。

(1)私は商品市場で激増したオイルマネーが株式市場に向かったのではないかと推定している。
(2)しかし日本の金融市場でも資金の流れに大きな変化が現れた。25日には東京市場で国債売り、株式買いの裁定取引が終日、波状的に繰り返された。国債に逃避していた資金が、株式に回帰する徴候である。
(3)新日鉄の決算発表を見るまでもなく、今や決算悪がことごとく株価反騰の分岐点となっている。弱気の日経は連休明けの決算発表を見てからと主張しているが、それでは好機を逸するのではないか。
(4)日経は今週のFOMCでFRBが政策金利の引き下げを見送れば失望売りを誘うと予想しているが、私は反対に株価の急騰を誘うと思う。「FRBが金融不況は最悪期を脱したと見た」と思うからである。
(5)大きな資金が株式市場に参入する場合には先ず大型株でポジションを取るから、特に大型株の出来高に注目したい。

(五)東芝と東芝プラント。

(1)連休明けまで堅調が続けば、株式相場の焦点は総論から各論に移るだろう。
(2)その場合は、洞爺湖サミットに準じてメーンテーマが地球温暖化対策となり、中でも「原子力発電」が最右翼となるだろう。
(3)その場合はウェスティングハウスを買収した東芝が主役に浮上する可能性がある。
(4)先週末にJPモルガン証券が東芝の格付けを引き下げて株価が下落した。25日の引け後に東芝は微減益の決算を発表したが、悪材料は短期間に織り込むだろう。
(5)東芝傘下の東芝プラントにも注目したい。無借金の高収益企業とはいえ、東芝が60%の株式を保有しているのは原子力発電所のメンテナンスで重要な役割を果たしているからだろう。東芝プラントの石井社長は東芝の元原子力企画室長である。東芝が受注する原発プラントの設計、施工、メンテナンスで重要な役割を果たすと思われる。