2008/3/10

  2008年3月10日(月)
   続々々・富山化学。
   新日鉄がトヨタに勝つ日。
   激増するホットマネー。
   ホットマネーの巨大なインパクト。
   私の強気の相場観。

(一)続々々・富山化学。

(1)TOBが成立するかどうかはまだ不明である。
(2)TOB株価の880円までウリ玉は100万株を割り込む一方、下値には1,000万株以上のカイ玉が這わされている。毎日の出来高も減少一途で、ここから大量の株式を集めることは困難だろう。
(3)富士フイルムがすでに7,300万株を確保していれば問題はない。しかし株価はなぜかじりじりと下値を切り上げて危険水域に接近している。
(4)最終日の3月18日まで1週間余となったが、その間に株価が880円を超えれば次のような波乱が起こる。
 第1に、すでにTOBに応募した株主でも、市場で売った方が有利となる。
 第2に、不成立の観測が高まり、条件改定を期待して応募を取り消す株主が増える。
 第3に、条件改定を期待する新規買いで、株価が880円を大幅に上回る。
(5)TOBが成立した場合でも、3分の1ぎりぎりでは上場廃止に批判が高まる。
(6)私が知る限り、個人株主は上場維持を希望している。筆頭株主の大正製薬はTOBに応じないと明言しており、大衆薬を扱う立場から個人株主の意向を尊重すれば上場が維持されるだろう。
(7)もしTOBが不成立となれば、富士フイルムは新たな買収条件を提示するだろう。
(8)富士フイルム以外の買収候補が現れた場合は、条件闘争となる。
(9)野村證券でTOBに応募した株主でも、3月18日までは市場売却か、応募取り消しかを自由に選択できる。
<質問へのお答え>。日証金が逆日歩を4倍に増額したほど借り株の調達が困難ですから、当面現引きが再開される可能性はないでしょう。信用の建て玉は市場で売却するほかありません。しかし18日に即座に上場廃止となるわけではありません。当面は通常の売買が続くでしょう。

(二)新日鉄がトヨタに勝つ日。

(1)鉄鉱石や石炭が一挙に50%も値上がりした。鉱山会社の寡占化が進み、価格支配力が強くなったからである。このような傾向は非鉄やレアメタルの全域に波及している。
(2)新日鉄等の高炉メーカーは、原料高を鋼材の値上げによってトヨタ等の大手ユーザに転嫁することができず、今期予想を下方修正し、株価が急落した。
(3)しかし私は新日鉄とトヨタの力関係が大逆転する日が近いと思う。高炉メーカーが生産する高級鋼材がLME(ロンドン金属取引所)に上場されるからである。
(4)その結果、新日鉄はLME市場で売却する道が開ける。
(5)トヨタはLME相場を尊重せざるを得なくなる。
(6)世界の高炉メーカーもまた大合併によって寡占状態を実現し、自動車メーカーの社数より少なくなった。高炉製品をめぐる力関係はすでに鉱山>高炉>自動車の順に大逆転しているのである。
(7)ちなみに石油相場の指標はWTIである。WTIはウエスト・テキサス・インターミーディエイトの略で、テキサス産の良質原油を指す。テキサスの産出量は今日ではきわめて微量であるが、その小さな市場の需給関係が世界の石油相場を決定する重みを持っている。それが商品相場の威力であり、魔力である。
(8)中でもLMEの歴史は古く、世界の貴金属や非鉄の価格を支配して来た。今後は鋼材も金や銅と同様にLMEが価格決定権を持つだろう。
(9)株式市場では新日鉄の評価が急落したが、私は新日鉄がトヨタを屈服させる日が近いと思う。

(三)激増するホットマネー。

(1)ここで言うホットマネーの内訳は政府系ファンドとオイルマネーである。昨年、政府系ファンドの資金量は300兆円、オイルマネーは200兆円に激増し、合計500兆円に達した。
(2)これまで株式市場で主役を演じてきた200兆円のヘッジファンドは運用成績の悪化もあって影が薄い。
(3)政府系ファンドの中には中近東のオイルマネーや、中国の貿易黒字や、シンガポールの年金資金が混在している。これらのホットマネーは現在も急増し続けており、5年後に1,500兆円に大膨張すると見込まれている。
(4)ホットマネーは昨年、欧米の大手銀行に対する資本注入と商品市場への参入で、大いに存在感を高めた。しかし過半は現金で、今年は新規のホットマネーを加えた700兆円が金融市場で猛威を振るう可能性が高い。
(5)今、世界中のエコノミストが景気後退論を競い合っているが、700兆円のホットマネーの出現を軽視しているから、商品相場と同様に、予想外の株価暴騰が起こりうると私は思う。

(四)ホットマネーの巨大なインパクト。

(1)ホットマネーは昨年、欧米の大手金融機関の第3社割り当て増資を引き受けた。その結果、金融市場の歴史にきわめて重大な変化をもたらした。
(2)すなわち、欧米の大手銀行はサブプライムローンの破綻をきっかけにして1兆円単位の赤字を計上したが、破綻した銀行も、破綻しそうな銀行もない。それどころかみな優良銀行の条件である自己資本比率8%を維持している。及び腰の政府に代わってホットマネーが必要な資本を必要なだけ注入したからである。彼らは今後も必要に応じて引き受けると言明しているから、大手銀行が倒産する可能性は殆どない
(3)歴史上の恐慌や金融危機は例外なく銀行の連鎖倒産から始まったが、今回は金融危機が深刻化する懸念が乏しい。
(4)ホットマネーは商品市場にも向かい、歴史的な相場水準を破壊した。新興国群の台頭を受けてモノの需給関係が逼迫したところへホットマネーが流入し、商品相場を木の葉のように舞い上がらせたのである。
(5)商品相場の暴騰は資源保有国と資源保有企業に巨大な富をもたらす。その結果、ホットマネーがホットマネーを増幅し、再生産する構造が定着した。
(6)エコノミストは弱気論を競っているが、私は商品相場と同様に株式相場が暴騰する時が近いと思う。

(五)私の強気の相場観。

(1)今年は産油量の1位と2位を争うロシアとサウジアラビアが国営ファンドを組成する。2ヶ国の新規資金だけでも100兆円を大幅に超える予想である。石油相場は現在も史上最高値を更新中で、中国やインドの輸出力が衰える気配もないから、ホットマネーは膨張一途で、今年は700兆円に激増するだろう。
(2)700兆円という巨大な新規資金をこなしうる市場は株式市場以外に存在しない。中でも流動性の高さから1,600兆円のニューヨークと500兆円の東京が目標となるだろう。
(3)ホットマネーは文字通り熱い資金で、ファンドの責任者は運用義務を負っているから、株価が底入れしたと見るや雪崩を打って株式市場に殺到するだろう。
(4)エコノミストは昔も今も統計データの分析という古くさい手法で景気や株価を論じており、700兆円という未知の変動要因を評価する手法を持たない。
(5)鎧袖一触(ガイシュウイッショク=ヨロイの袖を一振りするだけで敵がばたばたと倒れる)という言葉がある。現にホットマネーは鎧袖一触、世界の大銀行を救済した。現にホットマネーは鎧袖一触、商品相場を大暴騰させた。その資金量が今年はさらに激増する。巨大なホットマネーの出現を無視したエコノミストの弱気論に洗脳された人には、新しい時代の新しい変化の徴候が見えない。
(6)どんなに弱気のエコノミストでも、米国政府の大幅減税とFRBの金融緩和政策を受けて一時的ながら今夏に景気が回復すると予想している。株式市場の先見性を信頼すれば、4月には中間反騰が期待できる。
(7)その時、ホットマネーが登場して、鎧袖一触、悲観論、弱気論を粉砕する可能性がある。巨大なホットマネーの出現は、夢物語ではなく現実である。