2008/3/3

  2008年3月3日(月)
  住友金属鉱山は資源株。
  富山化学・続報。
  エネサーブの敗者大復活は成るか。

(一)住友金属鉱山は資源株。

チャート1、金、銅、ニッケルの週足。(2/29現在)

金銅ニッケルの週足

(1)チャート1の通り、主力3事業のうち、金は史上最高値を大幅に更新中である。銅も史上最高値に迫り、ニッケルも長い保合を上放れて、3万ドル大台を回復した。
(2)住友金属鉱山(以下、別子という)は金、ニッケルの100%、銅の過半を自社の鉱山から採掘し、精錬している。
(3)原材料を自山鉱から掘るのは、石油を自国の井戸から掘る産油国と同じで、商品相場の高騰が利益率をストレートに押し上げるが、同時に保有鉱山の含み益が激増する点が重要である。
(4)つまり、別子が年間採掘量の20倍の鉱山を保有しているとすれば、含み益は期間利益の20倍のピッチで激増する。別子は日本で唯一の資源株らしい資源株である。
(5)世界の金、銅、アルミ、ニッケル、鉄鉱石、石炭等の鉱山会社は大合併と大買収を繰り返し、寡占段階から独占段階に入りつつある。買収金額もうなぎ登りで、5兆円を軽く超えている。
(6)私は企業の資産価値を重視する立場から、過去2年間に最も高い頻度で別子をとり上げた。2番目は富山化学で新薬の開発力を、3番目は加ト吉で冷凍食品の事業素質を評価した。
(7)加ト吉と富山化学は相次いでTOBの対象となったが、私は終始一貫、別子こそ外国資本による買収の最大の目標になるだろうと述べてきた。その可能性は日に日に高まっている。
(8)特に中国、ロシア等の国営ファンドが戦略的投資に乗り出す場合に、別子は真っ先に標的となるだろう。
(9)別子は時価総額が1.4兆円で、株価を2倍に評価しても2.8兆円に過ぎず、割安が鮮明である。
(10)ただし別子は金鉱株のイメージが強く、金相場と連動しやすい。金相場はドルと逆相関関係にあり、ドルが下がる時には特に高騰しやすい。

(二)富山化学・続報。

(1)残念ながら富山化学のTOBが成立するかどうかを推定する手がかりはない。
(2)大株主上位10名の顔ぶれから推定すると、大正製薬(21.8%)はTOBに応じないと明言している。その他の大株主でTOBに応じそうな顔ぶれを合計しても10%あまりに過ぎない。買収が成立するためには3分の1以上の7,300万株が必要で、簡単に達成できる目標ではない。
(3)富士フイルムの社長は日経で富山化学の新薬開発力を熱く語っているが、その割に買収株価を値切りすぎた。おまけに新薬開発の利益を独り占めするために上場廃止を通告して株主の糧道を断つ作戦に出た。富士フイルムよりも古くから、富山化学をはるかに高く評価してきた株主を、大願成就戦が目前となった時に、閉め出そうとする唯我独尊を厚顔すぎると感じる株主は少なくない。
(4)一般の株主としては、最終日の3月18日まで、白馬の騎士の出現を待望しながら売買を決断するほかない。
(5)信用取引の現引き停止がいつ解除されるかという質問が多い。日証金に確かめたところ、ここへ来て株不足は解消したが、なお現引きのための借り株の調達に努力しているところだと述べている。

(三)エネサーブ(6519)の敗者大復活は成るか。

チャート2、エネサーブの月足。

エネサーブ月足

(1)月足のチャートで見るとおり、エネサーブは5,000円から300円へ、一直線に大暴落した。
(2)エネサーブは重油を燃料とするオンサイト発電で高収益を誇っていたが、石油相場の暴騰で競争力を失い、本業から完全撤退した。そのため前期は176億円の営業赤字を計上し、株価が暴落したのである。
(3)しかし、苦難の撤退を完了した後も150億円の利益剰余金を持ち、無借金の財務体質を堅持している。
(4)2月26日付日経は1面トップで「シャープ・大和ハウス提携、太陽光発電を有効利用」と報じた。
(5)大和ハウスは昨年、創業社長の深尾氏からエネサーブ株式50%を肩代わりして傘下企業とし、大日本印刷と共にリチウムイオン蓄電池の開発に注力していた。そのプロジェクトに太陽光発電大手のシャープが参加してエネサーブの技術の実用化に踏み出したのである。エネサーブが開発したリチウムイオン型蓄電池を用いれば、太陽光発電を夜間にも使用できるため、発電コストを大幅に引き下げることができるという。
(6)大和ハウスとシャープの提携発表当日に、名前が見えなかったエネサーブがストップ高を演じ、その後もみ合っている。底堅さは事情通の買いと見える。
(7)29日付日経は積水ハウスも「燃料電池付きエコ住宅を発売」と報じた。蓄電池は太陽光発電の新たな発展のテコとなる可能性がある。
(8)大和ハウス、シャープ、大日本印刷という強力な後ろ盾を得て、エネサーブの敗者大復活が成るか。期待して注目したい。