2008/1/28

  2008年1月28日(月)
  アメリカ人は大金持ちである。
  財政、金融政策の効果に注目。

(一)東京市場はセリングクライマックスを形成か。

(1)東京市場は先週セリングクライマックスを形成したと私は思う。
(2)暴落幅と反騰幅の大きさといい、連日30億株近い出来高といい、まれに見る男性的なセリングクライマックスであった。
(3)東京市場の主役が外国人となり、先物主導となったから、今後も男性的な騰落が常態となるだろう。
(4)上海は時価総額で東京を抜いたとはいえ、上場株式の3分の2が政府保有で市場性と流動性が乏しい。巨額の資金を集中的にさばくことができる市場は、現在も1にニューヨーク、2に東京である。
(5)そのために東京市場は暴落課程で外国人投資家のヘッジ売りが集中し、先物と現物の双方で巨大な空売りを飲み込んだ。暴落幅は大きかったが、反騰幅も大きいだろう。

(二)国民の「生命と財産」を守る米国大統領。

(1)ブッシュ大統領の政策を軽視してはいけない。日本の首相とは大違いで、米国の大統領は「国民の生命と財産」を守ることを最大の政治目標に掲げて、必ず実践するからである。
(2)ブッシュ大統領は先に「国民の生命」を守るためにイラクに侵攻した。大多数の国民はブッシュ大統領の決断を支持しており、次期大統領選挙でもイラク問題は大きな争点となっていない。
(3)そのブッシュ大統領が今回は「国民の財産」守るために緊急政策を発動した。アメリカ国民の財産とは1に住宅、2に株式である。緊急予算は即効性の高い小切手による税金還付を中心に16兆円の巨額に達している。
(4)FRBは大統領の決断に先駆けて、3次にわたり合計1.25%の政策金利引き下げを断行した。FRBもまた優柔不断の日銀と違って積極果断に決断する。
(5)ブッシュ大統領とバーナンキ議長は目標達成まで政策の手をゆるめないだろう。

(三)借金の4倍に達するアメリカ人の巨大な財産。

(1)日本にはアメリカ人が借金まみれで消費しているという批判が横行しているが、大きな間違いである。アメリカ人は世界一の大金持ちで、借金の4倍に達する巨大な財産を蓄積している。だからこそ世界一の消費社会を実現したのである。アメリカ人が巨大な財産を築いた秘密は税制にある。
(2)米国では住宅ローンの金利が全額税額控除となる。だから税金を払っているアメリカ人は例外なく住宅ローンを組んで節税を計りながら、住宅で財産を築く。
(3)アメリカ人は昇進して所得が増えれば即座に高額な住宅に引っ越してより大きな財産(住宅)を築く。
(4)税額控除の恩典がない日本人は完済までに25〜30年を要するが、節税効果を活用したアメリカ人は10年程度で償却を終える。
(5)節税は2軒目まで認められるから、住宅ローンを返済したアメリカ人は、次に別荘を買う。
(6)ローンの返済に余力が生じたアメリカ人は一部を消費に回し、一部を株式投信で運用する。住宅も株式もリスク資産であるが、アメリカ経済が長期的に成長する限り、値上がりして財産を増やす。
(7)かくして世界ダントツの財産を築いたアメリカ人が世界一消費するのは当然で、消費主導のアメリカ経済の体質は簡単には変わらない。
(8)日本人の勤倹貯蓄を前提にアメリカ人の消費生活を批判するのは筋違いである。逆にもし日本が米国並みの税制を採用すれば、日本人の消費は急増し、景気は即座に好転するだろう。

(四)最終局面に近づいた金融不安。

(1)金融不安の根元となったサブプライムローンは、税金を払わず、それゆえに節税効果が期待できない不法移民等が、短期の値上がり益を狙って高利のサブプライムローンに手を出した。ところが住宅が値下がりしたために破綻が生じたのである。
(2)しかし政府の救済策が奏功して低金利ローンへの乗り換えが進み、サブプライムローンの破綻者は急減している。
(3)先週末には欧州市場と米国市場で株価が反落した。原因はフランスのソシエテジェネラルと米国のバンクオブアメリカが相次いで1兆円を超える赤字決算を発表したからである。しかし両社とも1兆円規模の資本注入を受けて危機を回避した。
(4)巨額の政府系投資ファンドやオイルマネーが投資機会を狙っており、株式投資の資金は有り余っている。金融機関の連鎖倒産によって金融不安が深刻化する可能性は極めて乏しい。
(5)私は、サブプライムローンの破綻に端を発した金融不安は最終局面に近づいていると思う。

(五)急浮上した弱気論への疑問。

(1)ところがここへ来て新たな弱気論が次々に急浮上した。
(2)第1に、住宅価格暴落説。第2に、消費後退説。第3に、雇用急減説。第4に、マイナス成長への転落説。第5に、新興成長国の景気後退説。等々で、中には銀行カードの崩壊説まである。
(3)しかしいずれも非現実的な仮説である上に、米国政府とFRBの対策が異例のスピードで本格化した事実を無視している。
(4)第1に、FRBは急速かつ大幅に政策金利を引き下げる一方、過剰流動性をたっぷりと供給した。これで住宅ローンの金利が大幅に低下し、破綻者が急減し、新規の住宅投資が回復し、住宅価格が反騰に転じる、と考えるのが常識である。
(5)第2に、政府が16兆円もの現金を国民にプレゼントする。これで即座に消費が増えて景気が好転すると考えるが常識である。
(6)第3に、これらの政策は過去の金融不況の克服で決定的な効果を上げている。
(7)ところが弱気論者は遅すぎた、まだ足りないと、だだっ子のように無理難題をふっかけている。
(8)私はアメリカの財政政策、金融政策の効果を期待して見守りたい。