2008/1/15

  2008年1月15日(火)
  新春の夢を占う2銘柄。
  富山化学と住友金属鉱山。 

【 I 】NHKテレビ「感染爆発」と富山化学。
(一)富山化学近況。

チャート1

(1)富山化学に関する私見の詳細は07年12月17付けクラブ9を参照されたい。
(2)チャート1は富山化学の日足で、底値圏脱出の気配が濃厚である。
(3)一般に製薬会社の新薬開発は長期にわたり、巨大な開発資金を投入し、成功する確立が低いというリスクの塊である。それだけに大型新薬発の開発に成功した場合の果実も特大で、中期的には新薬の開発力が業界地図を決定する。
(4)私はクラブ9で長期間、富山化学の四つの大型新薬の開発状況を追跡してきた。そのうちジェニナックは昨年10月に発売を開始した。5年以内に年商2,000億を超える大型抗生物質に育つ可能性がある。他の3新薬もそろってフェーズ1をクリアした。道半ばとはいえ、パーフェクトの進捗状態は奇跡的である。
(5)しかし奇跡的な開発力が株価の上では無視されている。過去数年間、株価はボックス圏内を上下したに過ぎない。
(6)そんな時にNHKが特集番組「感染爆発」を12、13日に集中放送した。
(7)「パンデミック(世界的感染爆発)は起こるか起こらないかではなくいつ起こるかの問題だ」と聞いた人は、みな自分自身が生き残れるか否かの恐怖に慄然としただろう。
(8)それにしても米国の対策の進捗状況を見ると、国家の責任感と民間の結束力に脱帽せざるを得ない。

(二)T-705とタミフル。

(1)富山化学が先週、フェーズ2に入ったと発表した「T-705」は抗インフルエンザ薬であるが、特に新型鳥インフルエンザにも最有望と期待される特効薬である。
(2)現在世界各国が備蓄しているロシュ社のタミフルは市販の薬品で唯一の特効薬であるが、有効性に疑問が高まっている。
(3)三菱UFJ証券は1月8日付レポートで、富山化学はT-705のフェーズ2でタミフルとの非劣勢試験を行い、優位が証明されれば世界の政府備蓄向け薬剤として実用化に近づくと述べている。
(4)タミフルの各国政府の備蓄額は推定6,000億円である。T-705の開発に成功すれば、6,000億円プラス民間需要の巨大市場が期待できる。フェーズ2は4月に終了する予定である。
(5)富山化学はすでに日米両国政府に開発助成金を申請しており。必要性と緊急性からみて認可が下りる可能性が高い。
(6)富山新聞はホームページで「富山化学が新薬工場建設」と報じている。富山第二工場内に、新型インフルエンザに有効なT-705の生産ラインを新設するという。富山化学の財政状況に余裕があるとは思えないから、日米両政府の助成金を前提とした設備投資計画と推定される。 
(7)富山化学は研究開発に特化しており、これまで巨額の先行投資資金をフェーズ1終了段階でライセンスを導出することによってまかなってきた。フェーズ1をクリアすれば成功の可能性が一気に高まるからである。T-705についても富山化学は複数の製薬会社との間でライセンスの導出交渉を進めている。
(8)もちろん新薬の発売までにはフェーズ2、フェーズ3をクリアする必要があり、現時点で成功するとは断定できない。

(三)クラブ9私見。

(1)パンデミック(世界的感染爆発)が現実となれば、日本のGDPは20兆円減少(第一生命経済研究所)し、世界のGDPは440兆円減少(世界銀行)するという試算がある。世界経済は麻痺し、株式市場は大混乱に陥るだろう。
(2)そのとき機関投資家と個人投資家を問わず、大暴落を乗り切るためには富山化学をヘッジ買いする以外の選択肢が考えにくい。
(3)現段階で富山化学がT-705の開発に成功するとは断定できないが、パンデミック(感染爆発)のXデーが近づくにつれて、ポートフォリオに加える投資家が増加するだろう。
(4)富山化学は鳥インフルエンザの特効薬T-705の他にも、超巨大市場と目されるアルツハイマー型認知症治療剤の開発競争で優位に立っている。この点は別の機会に述べたい。
(5)新薬開発にリスクはつきものであるが、富山化学の成功に賭ける夢の大きさは群を抜いていると私は思う。

【 II 】住友金属鉱山。

チャート2

(1)ニューヨーク金は26年ぶりに史上最高値を更新した。ロンドン銅とロンドンニッケルは共に保ち合いを上放れた。
(2)今週14日には3品目がそろって年初来高値を更新した。
(3)非鉄金属相場は米国の景気後退を受けて下落するとの予想が多いが、私は悲観的過ぎると思う。世界人口の過半数を占める新興国群の成長力は輸出中心から内需中心に変わっており、世界の景気は簡単には腰折れしないだろう。
(4)今週は米国の大手金融機関が昨年第4四半期の決算を発表する。私は、前四半期が最悪期になると見ており、金融株が逆行高すれば相場陽転のきっかけとなるだろう。
(5)住友金属鉱山はチャートの3品目を、自山鉱から採掘する日本最大の資源株である。金や非鉄の相場が上昇すれば保有鉱山の含み益が激増する。
(6)貴金属、非鉄金属、レアメタル、鉄鉱石、石炭等の鉱物資源は世界的に見て寡占段階から独占段階に移行しつつある。ロシア、中国等、巨額の外貨を蓄積した新興国が国家戦略として資源株の買収に乗り出す可能性は急速に高まっている。
(7)住友金属鉱山の時価総額1.1兆円は年間利益だけを評価し、埋蔵資源の巨大な含み益を完全に無視している。このままの株価では確実に買収の標的となるだろう。
(8)株価は最高値の6ヶ月期日を迎えて急落したが、それゆえ買いの好機だと思う。相場全体の反騰に先行する指標株として注目したい。