2007/12/3

  2007年12月3日(月)
  サブプライム評価損縮小へ。
  富山化学、新薬開発の近況。

( I )富山化学、新薬開発の近況。
(一)新型鳥インフルエンザ H5N1。

(1)Yahoo!JAPANで「鳥インフルエンザ直近情報」を検索すると、連日のように世界各地で鶏、七面鳥、家鴨等が大量に殺処分されている。
(2)最も死亡者が多いインドネシアでは、121人が感染し、91人が死亡した。死亡率は75%に達している。
(3)それでも現在はまだ、鳥からヒトへの感染に過ぎないが、ヒトからヒトへ変移した場合は、一挙にパンデミック(世界的大流行)に発展する。
(4)岡田晴恵氏は著書『H5N1』(ダイヤモンド社)で、その猛威を次のように予想している。死者は日本だけで66万人〜210万人。最短で感染から4日で死亡。感染者の死亡率は60%。等々。
(5)先週はNHKやTBSも特集を組んで対策の緊急性を訴えていた。
(6)しかし最大の問題は H5N1型鳥インフルエンザに有効な特効薬が存在しないところにある。現在までに、各国政府はロッシュ社のタミフル3,000億円を備蓄したが、その後の検証で利かないことが判明した。
(7)タミフルに代わる最有力候補は、富山化学の T-705である。昨年米国のユタ州立大学が動物実験で T-705の劇的効果を証明し、日米で同時に人体臨床のフェーズ1に入った。
(8)日本はすでにフェーズ1を終了し、分析結果の発表が近い。富山化学は、日米ともにフェーズ1で問題があったという報告はないと述べている。
(9)富山化学は複数の国家との間でライセンスの導出交渉を行っている。その進捗状況は次項が参考となる。

(二)ロイターの菅田社長インタビュー。

(1)8月7日付ロイターは、富山化学菅田社長とのインタビューで「富山化、鳥インフルエンザ薬はフェーズ1で権利供与の可能性」と報じている。以下はロイターの要約である。Yahoo!JAPANで「POC 富山化学」と検索して全文を確認されたい。
(2)第1に、富山化学はフェーズ2、フェーズ3の開発資金を調達するためにT-705のライセンス導出を複数社に打診している。
(3)第2に、フェーズ2の初期段階でPOC試験を実施すれば安全性が確認できる。その時点で交渉がまとまるだろう。
(4)第3に、すでに日米政府機関に対してT-705を開発するための補助金支給を申請している。早期に認可が下りればライセンスの導出よりも自社開発を優先したいと述べて、補助金認可の可能性を示唆している。
(5)ロイターは又「T-3811は米社と開発・販売を確認」という見出しで、抗菌剤ジェニナック(米欧の商品名はガレノキサシン)に対する菅田社長の見解を次のように紹介している。
(6)富山化学はT-3811の米欧における販売権を米シェリング・プラウ社に供与している。(ライセンスの金額はおよそ500億円であった。)しかし昨年米国で、今年は欧州で、シェ社が販売申請を取り下げたために、2度、富山化学の株価が急落した。
(7)その後、経口薬の日本では10月に発売を開始した。注射薬の欧米でも、菅田社長は臨床試験の追加など具体的な取り組みを検討しており、発売中止はないと明言している。
(8)ロイターはさらに、「企業価値を高める申し出があればM&Aを拒まない」という菅田社長の見解を紹介している。

(三)投資先Jティッシュの株式上場。

(1)先週、ジャパンティッシュが12月21日にジャスダックNEO(ネオ)上場と報じられて、富山化学の株価がピン付いたので、付言しておきたい。
(2)INAXと富山化学はそれぞれJティッシュ株13%を保有し、2位、3位の大株主である。
(3)ティッシュは皮膚の意である。Jティッシュ社が皮膚や軟骨を再生する医療技術は驚異的で、例えば1平方センチメートルの患者の皮膚を切り取って同社に持ち込めば、2週間で1,000倍の面積の皮膚を培養してくれるという。自分の皮膚だから移植しても免疫拒絶が起こらない。
(4)JティッシュについてはYahoo!JAPANが大量かつ詳細な情報を掲載している。

(四)大型材料が次々に表面化。

(1)抗菌剤ジェニナックが10月に国内で発売を開始した。欧州、米国も3年以内の発売を予想している。三菱UFJはピーク時の年間売上高を2,500億円と予想している。
(2)新型鳥インフルエンザ特効薬T-705、アルツハイマー型認知症治療剤T-817A、経口抗リュウマチ剤T-5224はフェーズ2入りが近い。
(3)このうちT-5224は科学技術振興機構から開発資金を受けており、ロシュ社とも410億円のライセンス導出契約を結んだ。T-705とT-817Aもライセンス導出が近い。金額と製薬会社名が明らかになれば有望性が証明されるだろう。ただし契約金はマイルストン方式で、開発の各段階に分けて取得する。
(4)私はこれらの大材料が結実する可能性が高くなったと思うが、当然紆余曲折も予想される。
(5)そのために強弱感が対立して、再度日証金の株不足が拡大している。仕手相場に発展する可能性が高い。

( II )相場観。
(一)不安解消へ、道筋見えたサブプライム問題。

(1)7月にFRBのバーナンキ議長がサブプライム破綻に関連して金融機関の赤字が10兆円に達する可能性があると述べたのを受けて、株価暴落の第1ラウンドが始まった。
(2)11月には資産担保証券の暴落が優良証券に飛び火し、B格債、C格債は60〜80%、AAA格債でさえ30%も暴落した。株式市場では金融機関の不良債権が20兆円に拡大するという予想が広がり、第2ラウンドの暴落が深刻化した。
(3)株式市場では、来年は資産担保証券がさらに暴落し、金融機関の不良債権は30兆円に達するという悲観論が多い。
(4)しかし私は、不良債権は拡大するよりも縮小する可能性の方が強いと思う。根拠は次の如くである。
(5)第1に、第2ラウンドでは空売りが資産担保証券の暴落を拡大した。空売りは早晩買い戻さなくてはならない。
(6)第2に、この間に金融市場の資金量が500兆円も激増した。主たる内訳はオイルマネー、BRICsの貿易黒字、米欧中央銀行の流動性供給である。500兆円の一部は先週、暴落した資産担保証券や金融機関株の買い付けに向かった。HSBCは傘下企業に2.5兆円を融資して資産担保証券の投げ売りを止めた。アブダビ政府はシティバンクの第3社割り当て増資8,000億円を引き受けた。等。
(7)第3に、FRBは先週末に、政策金利の引き下げと過剰流動性の拡大を機動的に行うと表明した。
(8)第4に、財務省は今週、サブプライムローン破綻者の救済策を発表する。
(9)第5に、FRBと財務省は先週、政府系住宅ローン2社の資金量を大幅に増強した。
(10)これらは資金の流れの大逆転が近いことを示す指標である。

(二)株価は2番底を確認へ。

(1)世界の主要な株式市場は2番底を確認したと思う。
(2)金融市場の過剰流動性が石油、金等の商品市場からついに株式市場に向かい始めた。
(3)サブプライム不安が縮小するという情報が表面化すれば、株価は急騰するだろう。
(4)円の底入れを確認した東京市場は特に反発力が強いだろう。
(5)クラブ9参考銘柄も2番底を入れたと思う。